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何時、誰が、どんな思いで、この紅を差したのか

願海山 延命寺 大田区矢口2-26-17

東急多摩川線・矢口渡駅から第二京浜(国道1号)を越えたところにある浄土宗のお寺。
境内に入ると正面に本堂、棟続きで明照殿と右手前に多摩川七福神・延命寺寿老人のお堂が建っています。
境内の右手は墓地となっていて、左は木立の奥に客殿?があります。
その木立の中に高さ3mを超える六面塔身の石塔が建っています。
下から四角の台石、その上に四面に銘が刻まれた四角の台石、ハスの花を浮彫した六面の台、そして蓮台、塔身、笠、宝珠となっています。
台石の裏面には「弘化3(1846)年」の文字があります。
全体にバランスのとれた、円光背をもつ姿、形の美しい地蔵像です。端正な顔立ちに、澄んだ心が現れているようです。
像容は左手に持物、右手は印の姿です。
写真上の左から錫杖と受け手、幢幡と施無畏印、錫杖と与願印、如意と施無畏印、人頭杖と受け手、宝珠と施無畏印です。
左端の地蔵の錫杖は幢幡の竿のように捧げ持っています。
写真右上は人頭杖。錫杖は杖の先に音を出す環と小環が付いていますが、人頭杖は杖の先に人の頭が付いています。飾り布は幢幡と同じです。
塔身は高さ95cmあり、面幅は35cmです。その面に像高60cmの円光背を持った地蔵が浮き彫りされています。
幢幡の竿、如意の柄、人頭杖の杖には紅が塗られています。何時、誰が、どんな思いで、この紅をさしたのかを想像することはできませんが、少し異常な雰囲気を漂わせます。(2016.05)

(2025.03:再訪)
台石の銘を読み取ってみようと再び尋ねてみました。逆光、木の陰などで小さな字が読み取り難かったのですが、読めた範囲で報告します。
正面は大きな字で「地蔵名(字)/人・𥹢乃/・・・・/(禮)者(香)善/衣服飲食/奉供養・/千受(妙)(薬)」
左右両面には「世話人連名 三島(屋)・右ヱ門/仕立(屋文)蔵 小俣昌三郎/・・・・」や「世話人連名 念佛講中」に始まり、世話人、関係者の名前が小さな文字でびっしり刻まれています。
中には「今井村 小(佑)次」「国分寺 八太郎」「古市場村」「尾張町」「四谷大木戸」などの地名も見えます。
*)「 Wikipedia 」によれば
「今井村」は神奈川県川崎市(旧橘樹郡)に存在した村。
「古市場村」は神奈川県川崎市幸区の大字・町名。神奈川県川崎市幸区の北東部に位置し、川を挟んで東京都大田区矢口と接している。
「尾張町」は東京府東京市京橋区に1930年まで存在した町名。
なのだそうです。
裏面は右側に「發願主/當所/森・・/観(生」童子/世話人/森四郎右ヱ門/原・・・衛/森主馬蔵/為浄財施主(所志)先祖代々諸霊・・・二世安楽・」とあり、中央は空いていて、
左端には12人の戒名と2人の名前が刻まれ、その後に「旹弘化三年歳次丙午冬十/一月二十四日現住見・(謹)(識)」で終わっていました。


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