テレビプロレス観戦記(1/10記)
新日1.4東京ドーム。
新年1.4の新日東京ドーム観戦は筆者にとって大晦日の紅白歌合戦のようなモノである。面白そうとかつまらなそうとか、そう言う話は別で半ば義務的に1年間のプロレスを総括する意味での観戦と言える。2004年プロレスがどのようになり、新日がどのようになったか?それがもっとも解りやすい形で見れるのが1.4東京ドーム大会なのだ。
テレビを見ていた人には解る通り、04年で新日はより一層駄目になっている。それはもう酷いもので、プロレスファンにも一般ファンにも全く支持されていないのが観客数で解る。公式入場者数は4万6千人だが、どう見ても3万人は行っていない。プロ野球のサバ読みでももう少しましだろう?アリーナ席は最初からこぢんまりとまとめられ、端で三角ベースが出来そうなほどだし、1階席も外野は完全閉鎖(これはいつも通り)、内野もいわゆるポール際は完全閉鎖、さらに内野自由席の新聞屋タダ席は1列ごとに客を入れてスカスカ感を誤魔化し、2階席は上段はパラパラと言う状態だった。その不入りぶりは事前に予想されていたようで、通常ならドームと駅を繋ぐ歩道橋に弁当屋が出ているのだがこれが出ず。さらに駅前ではマックも寿司屋も露店を出していないと言う閑散ぶり。全く興行として期待されていないと言う事が解る。
こんな体たらくになる事は新日側も予測していたようで(そりゃ前売りの売れ行き見れば解る)、オーロラビジョンは通常の東京ドームに有るもののみ。去年は大々的に使っていた選手名を表示するネオン?タワーも無し、ゲートもひょっとしたらただカーテン開くだけ?と言う簡素さ、そして極めつけは、1発も火薬を使わず全くびびらない入退場・・・チケットが売れないならとにかく節約節約。そんな悲しい事情が垣間見える、とても新年のおめでたい興行とは思えない事態となっていた。
試合内容はテレビ通りである。一言で言って「プロレスラー誰一人得をした選手が居ない」そんな感じだろうか?前半戦は今更感有り有りなカードがてんこ盛り、かって見たあの戦いが鮮度を落としてダラダラと展開される。後半戦は全力でメインを潰しに行っているのか?と思う程、メインの中邑対棚橋戦への興味をそぐ、だれた酷い試合の連発。全く意味不明のアルティメットバトルロイヤル。ただトーナメントを一つのリングで2試合ずつやる貧乏臭い演出、真剣勝負総合格闘技風なのに、何故か一緒にやっている片方の試合が終わると、間もなくもう一方の試合が終わる不思議さ。パワーボム一発で失神KOの成瀬(笑)。セミの巴戦も「連勝しないと終わらないって事は半永久に続くんじゃ?」なんて不安を感じさせる間もなく蝶野連勝で淡々と終了。
先輩達がメインに向けて全く客を暖めてくれず、むしろ白々とした空気を作ってくれた中で始まったのがメインの中邑対棚橋戦である。確かに二人は持てる力を出し切ったと思う。武道館クラスなら名勝負になっていたかも知れない。だが結局場内の弛緩しきった雰囲気を挽回する事は最後まで出来なかったように思う。広すぎる会場、全く一体感の無い観客、そんな中で若手レスラーがどんなに頑張っても駄目なモノは駄目なのである。試合後、帰宅する観客の顔は曖昧な表情のままだった。東京ドーム興行と言えばプロレス興行の華である。そんな興行を見た後の顔は、普通みんなキラキラと輝いているモノでは無いだろうか?
新日はフロント、選手、テレ朝、全てが何かを間違えている。マッチメーク一つ取っても最初から失敗するのは見えていた。どうして誰もそれを指摘出来ないのだ?現状の新日ではもはやどうにもならない。個人的にはいっその事潰れてくれとも思うが、逆に言えばこれだけ解りやすい形で満天下に「駄目だ」と言う事を露呈してしまったのは有る意味良かったのではないだろうか?「ストロングスタイル=真剣勝負」と言う幻想を捨てない限り、より真剣勝負に近いと思われる総合格闘技やK-1が有る現在、新日の生き残る道は無いと思う。新日はストロングスタイル=真剣勝負で無くても良いと言う事に気づくべきである。その思いは1.8ノア武道館を見て確信に変わった。
テレビプロレス観戦記(1/20記)
ノア1.8武道館。前回の1.4新日東京ドーム編で「レスラー誰一人得をしていない」と書いたが、このノアの武道館興行はその真逆だった。「レスラー誰一人損をしていない」それがこの興行を見終わった後の満足と感共に残った感想だ。
ノアの武道館興行は、全日の武道館興行の伝統をキチンと受け継いでいる。スムーズな進行、大きな会場に適した夢のあるカード、そしてレスラーと観客の一体感。ファンは武道館興行に期待し、レスラーはそれに応えようとする、そしてファンはさらにそのレスラーに熱い声援を送る。レスラーとファンの相乗効果により、なんとも熱気溢れる心地よい空間がそこには生み出されているのだ。
新日欠場中の柴田は1.8ノア武道館を観戦したのだと言う。この興行を生で見て何も感じなかったはずがない。いかに今の新日が駄目で会社として終わっているかは、1.4と1.8を両方見れば誰にでも解る。いや、柴田は一レスラーだから試合内容で負けてるとは思いたくないだろう(つーか新日は会社のせいで選手のモチベーションが下がっているので試合内容が低いわけだが)。だか少なくともその流れるような運営、そしてファンとレスラーの一体感には悔しい思いをしたのではないか?
思えば新日は常にファンと戦ってきた、それは創世記の選手層が薄い時期には試合内容で、そしてブーム時には仕掛けで、ファンと戦って戦って勝とうとしてきたのが新日だったのではないだろうか?それがストロングスタイル=真剣勝負という幻想を生み出したのだと思う。だがプロレスファンが多様化した今、新日は全くファンと向き合って戦えていない。今まではファンの怒りを買いつつも、それが次の戦いへのステップだった。だから新日ファンは騙されても騙されても会場に足を運んでいたわけだ。だがさすがの新日ファンも気づきだしたのだろう?この団体はプロ野球で言えば「巨人」だと。業界ナンバー1の地位にあぐらをかき、試合さえしていればバカなファンは黙ってついてくると。その奢りが1.4の客の入りである。新日はファンとの戦いに不戦敗したわけだ。
対してノアはどうだろう?全日時代からノア勢はファンと共に歩んできた。決してファンとは戦っていない。常に同じ方向を向いて目指すべき理想のプロレスを共に築こうとしてきた。それがプロレスファンの強い支持を受けたわけだ。確かに知ってる選手と必殺技だけを追っかけるようなバカファンには解りづらいかも知れない。一般的知名度のあるスターも居ない。だけど試合さえ始まってしまえば、いや興行さえ始まってしまえばそんな不安は杞憂に終わる。ノアのプロレスは始めてプロレス見た人でも充分に面白い。そして誰にでもその楽しさ凄さは伝わるようになっている。
問題はノアのプロレスが素晴らしすぎるから、初心者にはチケットが取りづらいって事だ。新日のチケットなら当日でもいくらでも買えるんだがねぇ・・・始めて見に行ったプロレスが新日で、ドームで、プロレスはこんなモンだと思われるのがプロレス業界としても一番痛いんじゃ無いだろうか?そんな責任感すら新日には有るとは思えないが。
テレビプロレス観戦記(3/10記)
新日全日四冠王者決定戦、小島対天山。
去年あたりから決定的に全く駄目な団体になってしまった新日。その新日の興行を新日時代は駄目なレスラー筆頭だった小島が、こういう形で救う日が来るとは・・・ありふれた言葉だがプロレスとは解らないものだと思う。新日時代の小島は本当に駄目なレスラーだったと思う。いわゆる長州バカラリアットプロレスのプリンスとして、口先だけで表舞台に立っていたレスラーと言う印象だ。日本一のラリアッターなんてフレーズはおよそ、井の中の蛙でなければ吐けない言葉だと思うし、新弟子時代からだぶついた体つきはおよそ新日本の練習をこなしているレスラーとは思えなかった。むしろ対戦相手の天山の方が、しっかりとツボを押さえたプロレスをキチンとやっている印象があったモノだ。
それが新日を離脱して、弱小団体になりかけていた全日に入団して変わってきた。今まで客の入り、客の反応なんてたいして気にしていなかったサラリーマンレスラーが、地方のドサ周りで何かを感じ、掴んだのだろう。体つきを見ても小島の中で何かが変わったのが伺える。相変わらずジャストミートしないラリアットに頼る傾向は見受けられる。でも今の小島のプロレス脳は見事に機能している。毎週放送されるテレビの為に、キチンと一興行一興行で、出来事を起こさなければ行けない。それらが繋がって大きな団体としての流れとなる。それが今の小島は本当によく解っている。
それは試合後のIWGPベルト投げ捨てで最大限に表現されている。天山の脱水症状という全く恥ずかしいアクシデントによって、ベルトは小島の元に全て集まってしまった。確かに四冠制覇はおめでたい。おめでたいがファンとしてはなんつーか「あれあれ?」的雰囲気が立ってしまい満足感に欠ける結末と言えよう。それがあのベルト放り投げで、新日勢に火がついて、一気に場内の緊張感が高まったわけだ。それ以上に、今後の継続した戦いに、ファンの注目を引きつけたのが本当に素晴らしい。「あれあれ?」が「どうなるんだ?これから」に一瞬で切り替わったわけだ。団体の興行的にも実においしい完璧な行動だったと思う。
対して天山、新日はどうだろう?そもそも序盤のゆっくりとしたスタート、30分経過→45分経過で、多くのファンが時間切れ引き分けを頭に描いただろう。別に今のプロレスファンは勝ち負けにはそれほど拘らない。試合内容が良ければ、両選手を、そしてその興行を素直に讃えるファンが圧倒的に多いだろう。だから二人にとって大事なのは、いかに観客を60分納得させるプロレスが出来るか?そこに焦点が行っていたわけだ。だが、結果は天山脱水症状によるKOと言うアクシデントに終わってしまう。全くもってふがいない。新日と言えば昔から練習量はプロレス団体で一番多く厳しいと言われてきた団体である。その団体のトップレスラーが、しかも年齢的にも一番脂の乗り切っているレスラーが60分フルタイム戦えないと言う体たらくである。
本当に今の新日本は駄目な団体である。確かに今でも練習量は日本一なのかもしれない。だが練習を日本一やっていても、試合は「ファンは必殺技を見れれば良いんだろ?」と言う、旧長州政権下のバカプロレスを続けているわけである。10分15分の疲れないプロレスばかりをやっていれば、こんな日が来るのも当然である。練習は所詮練習なのだ。試合でキチンと相手の技を受けて受けられてを地方でも手を抜かずにやっていれば、こんな大恥はかかなくてすんだだろう?新日と全日に別れた天山と小島。一見同じように両団体の若きトップレスラーの地位を得たように見えても、小島が言ったように、その為の努力には雲泥の差があったと思う。
全日には昔からハードにフルタイム戦う伝統が有った。その流れはノアに受け継がれているが、全日の中にもその名残、ノウハウは生き残っていたのだろう。小島は見事にそのノウハウを引き継ぎ、四冠戦で見せて見せた。川田が全日を離脱するのも肯ける。小島が言ったように、現在の小島は元新日の小島では無いわけだ。全日本の小島。川田一人に託されてきた全日の伝統。それが小島にも受け継がれたのが感じられる四冠戦とその結末だった。
テレビプロレス観戦記(4/22記)
ぼんやりしていたらテレ東の全日中継終わっちゃいましたよ。んで後番組がガオガイガーって・・・もっともテレビ放送を上手く利用していた全日だけに、正直この決定は痛いかも。つーか橋本ポシャってゼロワン中継も無くなったし、テレ東のプロレス班の人が閑職に追い込まれでもしたのか?教えて詳しい人。
天山アクシデント以降、面白い展開になるはずだった四冠ベルトを巡る戦い。全く駄目駄目でしたね。せっかく小島がおいしい餌を巻いたのに、新日フロントが全くその餌の美味さに気づきませんでしたよ。とほほ。挑戦者決定トーナメントもメンツも含めてどうなのよ?って思ってたけど、それすっ飛ばして中邑が挑戦ってのはさらに倍どうなのよ?挙げ句フルタイムドローって・・・テレ朝の編集の駄目っぷりと合わせて、ますますプロレスファンの足が新日から遠ざかります。
んで、中邑抜きでやったトーナメントが、これまたなんともたるんだ体の人のオンパレード。天山は明らかに体にハリが無いし、蝶野は相変わらず。何より脇に徹しすぎてすっかりサボっちゃったのか、中西の腹回りに肉のベルトが付いていたのは衝撃でした。何かもう・・・「駄目だな」としか言いようが無いですよ新日。
ノアも力皇時代になったのは充分許容範囲なんですけど、最初の挑戦者が斉藤って・・・いや最初の挑戦者は、これぐらいのレベルで良いとは思うんですよ。でも斉藤は違うだろ?まだどうにかストーリー展開上手く持っていっての、雅央とかの方が客も付いてくると思うが?つーか銭湯にもスポーツジムにも通えない体の人が、メジャー団体のタイトルマッチやっちゃいかんですよ。
と言うわけで、この1ヶ月更新しない間、あんまりプロレス界は面白くなかったんですが、唯一のヒットは東京ガスのセキュリティの宣伝での嵐抜擢。アレは良い演技だった。さすが元関取全く違和感無い(それを言うなら元プロ野球選手の矢作があんなに馴染んではいかんだろ?)。
テレビプロレス観戦記(7/20記)
全く更新されなかったここですが、ようやく書く気になる興行が行われました。そうノア東京ドーム大会ですよ。あまりの前売りの好調さに日テレが急遽当日特番2時間半!この辺りがテレ朝詐欺師とは違うところで、プロレスへの愛情が感じられます。つーわけで、当日現地でも観戦したので両方(生とテレビ)の印象を混ぜつつ書いていきます。
まず第一試合から第三試合まではいつものノア興行ペース。無駄なセレモニー等無くするっと始まってサクサク進みながら、観客がどんどん試合に引き込まれる良い展開。そもそも試合開始直前で既に8〜9割観客席が埋まっている、近年プロレス興行に無いハイテンションさも選手には追い風。ただムシキング辺りで一気にテンポがだれてくる。この先どれぐらいムシキングやらされるのか知らないが、鼓太郎ちょっと可哀想(同マルビンくん)。
GHCジュニアは遂にケンタ時代到来。人気、ルックス考えれば当然なれど、試合を面白くしたのはやっぱり金丸の技量。相手の技を喰らってすっ飛ぶ様は実に素晴らしい。GHCタッグは誰がどう考えても、橋がどれだけ耐えて耐えて爆発できるかに掛かっている試合。ただ入場時から明らかに橋の顔はテンパリ大将。おまけに大流血戦になる頭もいつまで経っても割れて来ない。「丈夫な体ですいません」って感じ。挙げ句ニュートラルコーナーから秋山にタッチを求める伝説をうち立てるテレ朝な橋。結局この試合でも橋は一皮剥けきれなかった印象。日テレの編集ではそこそこ善戦していたように見えるけどね。
GHCヘビー、力皇対棚橋。あんまり噛み合わず・・・両者とも「受け」から試合を組み立てる事の出来る希有なレスラーなんだけど、お互いに相手の技を待ってて間が悪い。特に力皇は小さな棚橋に対して、どれだけ攻めて良いのか最後まで力量計れずおっかなびっくりで勿体ない。相変わらず指先だけ当てる不思議な張り手の連発。力皇が手の腹をぶち当てる奴が出てきた時こそ、本当の戦いが始まる。小川対テンルー。まぁあんなもんでしょ?どうでも良い感じ。
小橋対健介。個人的には小さなヘビー大嫌いなので、健介が何の障害も無くいきなりノアトップの小橋とマッチメイクされたのはかなり嫌な感じ。でも試合内容は抜群。力皇と棚橋が噛み合わなかったのとは正反対で、肌を合わせた途端に、お互いどこまでやっても大丈夫なのかが解る超一流同士の戦い。1万円の席で見ていたのだけど、この試合に8千円、三沢川田に2千円な気分。取り立てて東京ドームだからとか、大きな試合だからと言うバカ技は炸裂しなかったモノの、5分間のチョップ合戦を筆頭に、とにかくお互いの技の「当たり」が良い。特にラリアットがジャストミートしない事では定評のある健介が、ああまで一つ一つの技を的確にぶち当てていたのは正直驚き。WJ潰れてフリーになって、試合数絞れてるのが体調管理面でも良い感じ。でもまぁ結局小橋は小橋で、東京ドーム入りする映像を見ていても解るが、健介はまだ一般人と同じような動きが出来るが、小橋は既にプロレスラーと言う別の生き物。プロレスに特化した体つき、体の機能。一般人が勝てるわけが無い。
メイン三沢対川田。試合始まる前は、正直恒例の今更感。三沢は明らかにピークを下り始めているし、川田にしても「本当に強い相手」とそれほどまともに試合をこなしてない5年間なので、90年代のあの感動の再現は難しいだろうと思っていた。話はちょいと変わるが、今回の東京ドーム興行、日テレの設定なのかノアの音響係りの判断なのかマット上の音をあまり場内に伝えない。新日だとガンガンマットの音や、エルボー、チョップの音が聞こえるのだけど、今回はボディスラムで体全体がマットに触れた時ぐらいしか音が響かない。これは選手にとって実に損で、技の迫力が半減してしまった感じだった。上に書いたように、生観戦後の感想では三沢川田戦には2千円程度の評価だったのだが、家でテレビを見てびっくり、意外なほど打撃系の技がクリーンヒットしているではないか。これなら3千5百円分ぐらいの価値は有ったかも知れない。
試合序盤にタイガードライバーを場外で放った以外は、メインと同じく「対東京ドーム用」のバカ技は炸裂せず(タイガードライバー91も汗で滑り不発)、純粋に打撃系の技で勝敗を決めあった印象。ノア興行、三沢退場時のセレモニーを差し引いても、やはり川田は負けてもしょうがないかな?川田が勝つための説得力は最後まで感じられなかった。対して三沢は、諦めなければ結局は勝つんでしょ?的ふてぶてしさは健在。下り坂でもまだまだ三沢もメインイベンターであった。
ムシキング以降の試合は正直、通常のノアの試合レベルで考えると、どうにか合格点程度の試合が続いた。東京ドーム、6万2千人の期待感を考えると少し物足りない。通常の武道館興行の完成度が高いだけに実に惜しい。ただ、セミ、メインで充分に観客満足させるのはさすが。国立競技場でやっても満員になりそうな予感。
テレビプロレス観戦記(8/22記)
新日G1クライマックス。ダメになったダメになったと言われる新日でも、年間唯一選手達が本気になり、数多くの名勝負を生み出してきたG1クライマックスシリーズ。今年も参加レスラーは非常にバラエティに富んでいて、いくらでも名勝負好勝負が生まれそうな予感がシリーズ前から漂っていた。何せ外様レスラーが、川田、藤田、鈴木である。さらに新日内でも曲者な後藤、矢野、吉江等がエントリー、ワクワクするなと言うのが無理な話だろう?
これにテレ朝も応えて見せた。レギュラー枠では30分でリーグ戦を一気にまとめて見せる暴挙に出たモノの、日曜深夜にはぶち抜き150分対応で、ノーカット放送を企画。ノアドーム日テレ級の対応と言えよう。昨今の新日と言うソフトに対してのテレ朝の冷遇振りにはめまいがするほどだが、ことG1に関してはテレ朝の期待値もかなり高いと言うことが理解できる。
さて、当然選手達、新日は試合内容でテレ朝の期待に応えてみせるべきだが、正直それが果たせたとは思えない。実に残念な今年のG1シリーズだと言えよう。いや、興行的には実によくまとまっていたと思う。数々の曲者レスラーをかわして、亡き橋本の為にG1を制覇して見せた蝶野。爆勝宣言が場内に響いた現場では、それなりの充実感がファンの間にも漂ったと思う。
だかそれと試合内容は全くの別物だ。残念ながらリーグ戦は上記したようにダイジェストだったのでいまいち感じが掴めないが、決勝トーナメントは明らかに蝶野の体調を優先しての試合運び。ノアドーム級の試合を期待して150分も枠を取ったテレ朝に赤っ恥をかかす、全部まとめても30分強の試合時間は正直驚きでもある。別に試合時間の長さが試合の良さと比例しているとは思えないが、リアルビーストを蝶野が10分で倒すには、それなりの説得力が必要なわけで・・・少なくともあの試合、藤田がうっかりにしろ負ける要素は全く感じられなかった。明らかに橋本の為に蝶野を優勝させる。その予定調和の為の藤田の敗戦。そうとしか取れないわけだ。別に予定調和で藤田が負けても良い、蝶野が勝って、ファンと共に爆勝宣言を聞く。その流れがプロレスファンにとって嬉しくないわけはない。だがその感動を皆で共感し合うには、蝶野のコンディションが、いや、レスラーとしての力があまりにも衰えすぎていたと思う。
ただ問題は蝶野だけの話では無い。ノア勢と戦った時の蝶野は充分にスイングして見せていた、それは蝶野のコンディションを解ったノア勢が、蝶野に合わせたプロレスを展開して見せたからだとも言えよう。対してリアルビースト、最後のストロングスタイルとも言われる藤田には、そこまでのプロレスラーとしての度量が無かったのだと思う。負けを受け入れたので有れば、どうすればファンが納得する負けを導いてみせるか?それもプロレスラーとしての大切な技量なはずである。それが出来ない藤田が、プロレスと総合格闘技の狭間でウロウロしているのも仕方のない事か。
また新日は期待に応えられなかった。年に一度、このシリーズだけは外れ無し。そう言われているG1クライマックスでさえもこんな始末である。何度も言うが興行的には合格点だと思う。だがG1と言う冠に対する、ファンやテレ朝側の期待値はこんな程度ではないのだ。橋本を上手く使って手堅くまとめたつもりだろうが、こんな程度の成功で満足しているようでは、新日のこの先が明るいとはとても思えない。
テレビプロレス観戦記(11/15記)
3ヶ月ぶりの更新です。この間テレ朝がほとんど試合を中継しないバカ番組に成り下がってたりしてましたが、一応頑張って見続けてました。会場も武道館、東京ドームとやっつけていたので、新日東京ドームの体たらくとか書いても良かったんですが負のエネルギーとしても大したパワーで無く、書く気力の源とはなりえませんでした。
では何故久々に更新する気になったのか?それはやはりノア、そして田上いやノアファンでした(笑)。中継自体は30分でタイトルマッチ2本入れると言う(先週見てないので先週も何らかの動きが有ったらすまぬ)日テレにしては暴挙とも言える対応。試合内容も、ダイジェスト編集になっている放送分だけを見ても、田上がヘロヘロになってとても説得力が有るとは言えない結末。プロレスに置いて何より「説得力」を一番に考える筆者としては、とても及第点を与えられる試合では有りませんでした。
そもそもこのタイトルマッチの引き金となった、武道館タッグマッチでの田上火山爆発は現地で見ていました。最初から最後まで全くバテないで動き回る田上の凄さには鳥肌が立ちました。場内が大田上コールになるのも肯ける本当に凄い田上だったわけです。対してこの試合の田上はどう考えてもスタミナ切れしています。フィニッシュも秩父セメントに行けずに、泣きの俺は田上だで、どうにか予定調和のピンフォール。通常なら凡戦と表しても良い試合です。
けれどもそれをノアファンが救いました。チャンピオン力皇はノアでは珍しい「天然ヒール」です。ガチでやれば強いんだろうし、一発一発の技の迫力は素晴らしいモノが有るのに、試合展開が拙く何とも観客が乗っていけない、プロレスラーとしてはどうなの?と言う微妙な選手です。それに対して田上は正当派全日系レスラーで、練習して無さそうな感じも、足下がおぼつかない感じも善戦マンな所も、全てが全日ファンに感情移入させるに充分なキャラクターなわけです。
試合開始前から、ノアファンは、いや古くからの旧全日ファンは田上にベルトを取らせたくて仕方が無い訳です。試合内容が芳しくないなんて事も田上が一杯一杯なのも、プロレス偏差値の高い旧全日ファンにはお見通しです。でも田上にベルトを取らせたい。その思いが武道館中に充満して充満して、それが田上の後押しをした。そう言う意味で素晴らしい試合だったと思うんです。
プロレスを見に行って何が一番楽しいかというと、それはレスラーとファンが一体になれると言う事でしょう。この日の試合は例え田上が多少不甲斐なくても、来場したファン殆どが望んだ結果に見事なったわけです。試合後にあんなに嬉しそうにリングに駆け寄ってくるバカプロレスファン(誉め言葉)の映像なんて、近年そうそう有るものじゃありません。本当ノアは良い興行をして良いファンを育ててきていると思います。この試合を見て帰るファンは、それぞれが家に着くまでプロレスの事を考えていた。きっとそうだと思います。