(15.2.16記)
もう騙されない、もう裏切られない。ついに本当にネコ足が戻ってきました。新しいフランス車が出ると、世の自動車評論家の多くが、取りあえず「先代はドイツ車のようだった足回りが、新型ではフランス車らしいネコ足が復活した」と書くテンプレートを使用し、何度も何度も騙されてきて、またドイツ車寄りの設定で、スピード上げないとフランス車らしさ出ないんでしょ?と思っていたら、運転して最初の角を曲がっただけで顔がにやけるフランス車らしい乗り心地。今度は全く騙されていません。試乗して、購入して裏切られることはありません(笑)。細かな段差などで若干タイヤの硬さを感じる場面もありますけれど、これはミシュラン履いてる仕様みたいなモノなので、昔のプジョーでもありましたね。
外観スタイル。新型308のコンセプトはダウンサイジング。307、先代308は、どちらかというとスペース優先で小山のようなハッチバックでしたが、新型は全高を大きく下げ、一般常識的なプロポーションのハッチバックに戻りました。また同じく2代に渡り、デザイン優先でフロントオーバーハングが無駄に長かったのも切りつめられ、全長、鼻先が短くなり取り回しの良さも向上しています。しかもこれらのサイズダウンが、ホイールベースだけは先代比で延長されているため、室内空間にあまり影響を与えていないのも素晴らしい点です。ただ結果、なんだかゴルフに似てしまったというのが微妙な点かも。先代までの方が独自性はあって「周りとは違う」フランス車らしいクセはあったかも知れません。どちらがキレイかと言われれば新型なんですけど(笑)。
内装質感。どちらかというと欧州車の中ではフランス三社の内装質感は必要にして充分レベルでした。VWのようにチリにまで拘る必要は、個人的には不用だと思うのですが、ルノーを見ても解るように、最近のフランス車の質感向上レベルは素晴らしいです。特にソフトパッド、ハードプラ、メッキパーツの組み合わせが上手くなっていて、国産の同クラスと比べると、むしろフランス車の方が高品質に感じます。デザイン自体は独自性を出そうと208に続いて、小径楕円ハンドルとメーターパネルをハンドル上から見る独特な仕様。さらにタコメーターもスピードメーターとは逆回転。タコメーター以外は慣れそうですけど、このレイアウトの優位性みたいなモノはあまり感じません。
動力性能。ダウンサイジングは、採用されているエンジンでも明かで、先代のBMWとの共同開発1.6L4気筒/ターボエンジンから、自社開発1.2L3気筒ターボエンジンとなりました。1.6L4気筒も、2.0Lが主流だったこのクラスで考えればダウンサイジングでしたが、日本の税制では税金が変わりません。でも今回の1.2Lなら日本でもダウンサイジングが実感できます。このサイズに1.2Lで大丈夫なの?と国産車に乗り続けている人なら、不安に思うかも知れませんが、車体重量も大幅に軽量化されているため、全く不足なく十分に活発な走りが楽しめます。
ただATのセッティングか、踏み始め最初の一呼吸に不感帯があって、すっと出ない印象です。右折時に譲ってもらった時などにちょっと怖いです。またギミックで、ATをスポーツモードにするとメーターパネルが赤くなるのはよいとして、エンジン音も大きく猛々しくなります。と言ってもセールスさんの話によると、これは録音されたモノをスピーカーから出しているだけのお遊び。なので車外には迷惑掛かってないのが救いですが、昔三菱GTOで散々叩かれたようなことを、いまさらやられても?と言うのが日本のユーザーの感覚ではないでしょうか?
結論。同じ話の繰り返しになりますが、多くの人が雑誌記事などを読んで頭に思い描くフランス車らしいプジョーらしい、しなやかかつふんわりした乗り心地が戻ってきたのが嬉しいです。これでもう少し値段が安ければと思います。日本国内で売れる台数が圧倒的に違うので仕方ないかも知れませんが、安全装備で優位なゴルフと比べるとちょっと不利に思えますね。