(07.5.16記)
HPのトップには現在もデカデカとエテルナシグマ様がいらっしゃいますが、実はメインカーは既にプジョー406に交代しています。エテルナの車検を取るか取らないかで悩んでいる頃に、エテルナの車検を取らなかった場合を考えて次の車を探し始めていた訳です。いつものように数限りなく有る「乗らなくては行けない車リスト」の中からあーでも無いこーでも無いと。取りあえず今回の筆頭はいつものルノールーテシア。対抗としてプジョー306、406。共にモデルチェンジを終え、値段的にはかなりこなれてきた感じです。
そんな中ヤフオクに406の出物を発見しました。場所は車で30分圏内の近場。以前から筆者好みの品揃えと価格で割合気になっていたお店です。現車確認に伺うと、試乗も快くさせて頂き対応も丁寧でなかなか好感触。車自体の状態も、結構綺麗な上に走行距離少なく、記録簿完備、部品交換多数、車検残1年半で文句の付けようが有りません。思わずその場で即決してしまいそうになりましたが、この時点ではエテルナの処遇が決まっておらず保留としました。結局エテルナは車検を取った上で1年保管と言う選択をし、その間の1年は406に乗ると言う事にしました。もちろん税金は倍になるし、車検代も掛かるのですが、エテルナの程度の良さを考えると、とても二束三文でどこかに拾われて行くと言うのは避けたかったのです。
さて、と言うわけで我が家にプジョー406がやって来ました。色は銀、形はセダン。グレードは一番下のST、マニュアルエアコンのアルミ無しの質素な車です。ですが、この鉄チンホイールに付いているホイールカバーがなかなか秀作で、一見するとアルミのように見える巧みなデザインで貧乏くささを感じさせません。タイヤサイズ的には、フランス車はローグレードほど乗り心地が良いとも言われるので、STグレードで全く不満が有りません。
外観デザインは皆さんご存じのあの形です。406はピニンファリーナではなく、社内デザインと言われてますが、そのルーツはピニンファリーナデザインの405に有るのは一目瞭然で、現在の行き過ぎた吊り目デザインと比べると、実に飽きの来ない良いデザインだと思います。既に発表から10年が経過してますが、未だにセダンとして素直に格好良いと思える形です。505も405もプジョーのミドルサイズのデザインは長持ちしますが、この406もピニンファリーナデザインでは無いとは言え、長持ちするデザインと言えるのではないでしょうか?
内装は、まぁ可もなく不可もなくと言う感じです。質感は当時のフランス車としては頑張っている方。グローブBOXの開く側に木目調パネルが付いていたりして、木目「調」なのが丸解りだったりしますが、シボの具合もスイッチ類の動作感もXantiaよりは遙かにしっかりしてる感じです。イスに関して言えば、常々言い続けている「ルノー>シトロエン>プジョー」、この印象に今回もかわりは無く、シトロエンの中では出来が悪くなったと言われるC5よりもやはり一段落ちる感じです。
特にうちの初期型406のシートは、シートの材質を真ん中とヘリで替えてあるのがあまり芳しくなく、尻や背中が不自然に吸い込まれていきます。筆者が良く言う「良いイスは尻が吸い込まれていく」と言うのとはまた別の感覚で、特に背中は猫背を強調されるような姿勢になり、慣れるまでかなり背中が痛くなりました。この仕様は世界的に不評だったようで、後期型の406からは通常の平板でありながら体を受け止めるデザインのモノに変わりました。
こんなフランス車としてはいまいちなイスに座っての乗り心地ですが、これはもう絶品です。406は出た当時に各種自動車雑誌で「ハンドリングと乗り心地の最高の妥協点」「FF車最上の乗り味」等と絶賛されていて、それが筆者の「乗らなくては行けない車リスト」入りの理由だったのですが、いや、本当にその通りだと思いました。新車発表時の記事はいわゆる提灯記事で、美辞麗句、常套句の羅列となりがちですが、この406に関しては、なるほどこれがネコ足なのだと肯かされる素晴らしい乗り味です。
俗にプジョーはネコ足ネコ足と言われていますが、過去試乗した車ではあまりそれを感じる事が出来ませんでした。友人の持っている306はS16でその為か市街地では結構固く、乗り心地が良いとはお世辞にも思いませんでした。新車発表時の206は足回りからゴトゴト安っぽい音がして、これもさほど感銘を受けませんでした。405の中古は結構良かったような気もするのですが、こちらの個体は程度が良い車では無かったので、乗り心地に感動するほどでは有りませんでした。
しかしこの406に乗って、ようやくネコ足というモノが少し解ってきた気がします。確かに足が良く動いているように感じます。路面の動きを運転者に忠実に伝えつつ、ショックなどは柔らかくいなす。まさに想像していたネコ足のイメージ通りです。また拙い運転レベルですが「限りなくニュートラルに近いステア特性」と言うのも感じられような気がします。この辺りは、同じフランス車、同じ会社でありながらシトロエンとは全く違う乗り味で面白く感じました。
そのハイドロシトロエンのC5と比べると、低速での段差のいなし方は断然406。サス周りからゴトゴト安っぽい音がしないのも、シトロエンとの大きな差です。反面フラット感はC5でしょうか。406は段差の越え方など上記したように、路面を忠実にトレースする感じでこれはこれで不快ではないのですが、ハイドロシトロエンの路面を舗装し直したかのようなフラット感が好きな筆者には、406の乗り心地は最近の国産車っぽくも感じます(と言うか406をお手本に国産車が、味付けを真似たのでしょうが)。
乗っていて楽しいのは406ですね。C5はやはり町中などで運転すると若干「よっこいしょ」な部分が有り、得意分野は「高速ツアラー」だと言わざるを得ません。406は町中低速でも、空いた一般道でも、高速でもC5の安定感には負けますが、実に乗っていて喜びを感じれる楽しい車です。
そんな満足度の高い406にも欠点は有ります。まずATが壊滅的におバカさん。シフトショックが酷くないのは救いですし、70キロにならないと4速に入らないのも慣れてるから気になりません。ただいちいち1速に落ちる設定には本当にうんざりです。町中を走っていたり渋滞の中に居る時、徐行状態なのに1速に落ちてしまうのです。この406はATのセッティングのせいか、低速トルクが薄く感じ、実際信号スタートで周りの流れに乗ろうとすると、エンジン回転を3000回転近くまで上げないといけません。個人的にはATはあまり引っ張らずに、スッスッと上がっていってくれるのが好みなので、このブン回りグセの有るセッティングは嬉しくありません。なのに徐行の度にこの嬉しくないセッティングにつき合わされるわけです。これは結構ストレスが溜まります。
おまけにゲート式ATは、シフトダウンやそのポジションを維持するのには役立ちますが、積極的に上のギアを使うというような状況では、コンピーターの基本プログラムが優先されているので、全く役に立ちません(ちなみにC5のシーケンシャルタイプでは、本来のポイントより早く上のギアを指示しても、ちゃんと変速してくれるのでこのイライラは有りません)。そんなATセッティングのせいで、市街地での燃費もあまりよろしくありません。油断しているとすぐに6キロ台になってしまいます。幸い高速では、クルーズコントロールが付いている事も有り、ぶっ飛ばしても12キロ台をキープしてくれるのですが。
もう一つ大きな不満として、ブレーキがスムーズに利かないと言う事でしょうか?ブレーキの踏み方と、効き方が一定で無いんです。同じ力で踏み続けても、有るポイントで(停止寸前)急に効き方が強くなるのです。これが実にカックンブレーキのようになってしまい、同乗者が居ると運転が下手に思われそうで嬉しくありません。話によるとこれは右ハンドルモデルのみの症状で、「ぶれーきのますたーしりんだーがひだりがわにあるままで、そこからろっどがのびているからでるしょうじょうだ」と言う事です(笑)。
と言う事は・・・そうです。406スポーツですよね。左ハンドル、MT、低速トルクに溢れた2.2Lエンジン。406はあのモデルが一番出来が良いと言われるのも、さすがのAT派の筆者も納得せざるを得ません。
てな訳で406。総合的には実に良い車です。確かに自動車評論家べた褒めなのも解ります。特に長年シトロエンの低速でのゴトゴトが不満だったので、低速でのいなし方の巧みさは非常に嬉しいです。ハンドル切ったら切っただけ普通に曲がると言うのも、安定志向のダラダラ車に多く乗ってきた身としては、ちょっとした移動をドライブに変えてくれる感じがして実に楽しいです。残念ながらエテルナ様が居るので、エテルナ様が高額で売れない限り406との生活は期間限定なのですが、取りあえず1年、楽しんで乗っていこうと思っています。
使用期間中の平均燃費(市街地9:高速1)7.5km/l