日産 ブルーバード SSS   

(01.8.30記)(02.5.20補記)
 レパードの12ヶ月点検と他諸々の作業中の代車として、日産が貸し出してくれたのは、多分最後のブルーバードになるであろうU14ブルーバード1.8SSSでした。我が家は過去に二度ほど(910とU12)ブルーバードを所有したこともあり、ブルーバードという車にはそれなりに思い入れも有るので、興味を持って観察試乗することになりました。

 この代の一つ前のブルーバードで日産は大失敗をしました。いわゆるアメリカ主導の丸い尻下がりのデザインにして、日本のおじさん連中に全く理解されなかったわけです。過去のブルーバードの成功車はほぼ、直線基調の四角いデザインです。日産としてもそれは解っていたらしく、失敗作のU13ブルーバードの後継車は四角い新鮮味の少ないデザインで出てきました。そんな日産としては手堅くまとめたブルーバードですが、このクラスのマーケット自体が縮小していると言う事とも併せて(みんなミニバンに流れちゃってるわけね、ファミリーカー購入層は)、ヒット作とはなり得ませんでした。2代続けてモデルチェンジに失敗した車に未来は有りません。結果兄弟車だったプリメーラとの住み分けの為に、プリメーラは2.0〜2.5Lサイズの新型車に、ブルーバードは欧州向けパルサーベースで1.5〜2.0Lのブルーバードシルフィとなってしまうわけです。考えてみればプリメーラの先祖を辿っていくと、オースター/スタンザです。さらにそれを辿るとバイオレットとなります。つまり20年近い時間を経て、ブルーバードは車格の下だったバイオレットに抜かれてしまったわけですから、時間の流れというモノは残酷ですら有ります。

 そんな色々センチメンタルな事情のきっかけとなってしまったこのU14ブルーバードですが、やっぱりバブル崩壊後の車です。色々な面で厳しく、売れなかったのもうなずける車だと思います。まず皆さんの想像通りに内装のレベルがそれ以前より明らかにワンランク落ちています。まぁこの時代の国産車は横並びでこんな感じでしたから、他社と比較すると対してアラも目立ちませんが、乗り換えとなると厳しかったと思います。バブル期に開発された車とバブル崩壊後の車。お金のかけ方自体に差が有りすぎます。インパネを覆っているソフトパッドは指が沈みづらい硬質のモノになっていますし、木目調パネルもプラスチックに印刷したの丸出しで、クリヤーすら吹いてありません。こんなモノを使うぐらいなら木目調パネルなど止めればいいのにと思いますが、カタログやCM映えを考えると、またコロナを横目で見ていると止められなかったのでしょう。エアコンのダイヤルの節度感の無さにはイライラさせられますし、とにかくそこかしこにコストダウンの影響がはっきりと見える車です。

 でもまぁ上記した通りこの時代の車は全てこんなモノですから、内装レベルはあきらめもつきます。またそう言う部分でコストダウンをして、車本来の大事な部分にお金が掛かっているのだったら我慢も出来ます。でも残念ながらそんな骨太な思想は当時の日産には無かったようです。最初乗り出した時は曇天で雨が降っていなかったので、そんなに気にならなかったのですが、この車「音」関係にも全くお金がかけられていません。一度雨が降り出すと、ホイールアーチからのタイヤがはじき出した雨の音が、また後部座席下(多分ガソリンタンク?)辺りからも路面からはじかれた雨音が、さらにちょっと強い雨足になると天井からも「ザーーーゴーー」と言う、まるで自転車置き場のトタン屋根の下で雨宿りをしているような音が始終しっぱなしなのです。オーディオのボリュームは確実に大きくしなければなりません。

 さらにコストダウンは音だけでもありません。足周りのチューニングにもあまりお金が賭けられていないのか、70キロぐらいで走っているだけなのに、ちょっとした段差、わだちですっ飛んでいきそうです。常に小径のハンドルをしっかりと握っていなければいけません。SSSの為か多少足が固められているのでしょうが、とてもFF車とは思えない安定感の無さです。かといってハンドルを切って頭がクイっと内側に入り込んで来るわけでも無く、何の為にファミリーカーブルーバードの乗り心地を犠牲にしているのか?と言う感じです。さらにSSS系的演出としては、ATのセッティング、ブレーキのセッティングがおバカ仕様です。ATは踏み始め、ちょっとアクセルに足を乗っけただけで下品にグイっと出ていく仕様ですし、ブレーキもこれまた踏み初めだけ急激に効く、何とも落ち着いた丁寧な運転のしにくいセッティングなのです。

 そんなわけで全く誉める所が見つからない、このU14ブルーバードですけど(代替えに格下でもしっかりと作ってあるシルフィが売れるのも解る・・・)、駄目押しとして、特別仕様のサイドサポート革張りシートのデザインの酷さと出来の悪さも付け足しておきます(いやデザイン本当に酷いんだから・・・70年代のカーマットみたいな柄が、クッション部とドアパネルに張り付けてある。とほほ)。この車の走行距離は4万5千キロでした。たぶん下取り車として入ってきて、そのまま代車になったと思われます(えっじゃあ、あの柄選んだのか・・・)。5万キロにも達していないのに、このやれっぷりでは買い換えたくなるのもうなづけますよ。


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