トヨタ クラウン アスリート   

(03.2.28記)
 有る事情で我が家にしばらく居る事となったクラウンです。当サイトは発足当時「トヨタ車好きの人には頭に来る内容が有るかも知れません」との断りがあるようなサイトだったのですが、そんなトヨタの代表格、看板クラウンの試乗記を取り上げる日が来るとは思いませんでした。

 と言っても上記但し書きが無くなったと言う事は、今はトヨタに対する抵抗感はそんなにありません。相変わらず田舎ディーラーではバカ殿様商売をやっていて頭に来ますが、少なくともメーカーとしては一時の70点主義からは脱却し、日本最大、世界の3本の指に入る大メーカーとして恥ずかしくない車作りをやっているように感じます。クラウンについても同様の意見です。元々筆者はクラウンと言う車は大嫌いでした。特に5代目から8代目辺りまでは全く評価をしていなく、乗っている人間=恥知らずとまで思っていたほどです。グリルばかりが目立って魅力薄のデザイン、絶壁で派手派手なインパネ、ゴムで遮断したような味気ない乗り味。そして一部オーナーの下品な乗り方。とにかく何一つ評価する点の無い、絶対に辿り着いてはいけない車、それがクラウンの印象だったのです。でもそんなクラウンが変わりだしたのはセルシオの登場以降でしょうか?トヨタオーナーカーナンバー1の座から降りた途端、肩の力が良い具合に抜けだした気がするのです。

 確かにいまだにグリルはバカみたいに大きいですし、インパネもどーんと迫ってきます。でもそれらも全て、ナンバー2に落ちた今は、没落貴族の(ちょっと意味が違いますか?)余裕みたいに感じられるのです。「こういう生き方しか出来ないんだから仕方ないでしょ」そんな風に感じられるわけです。他社で上げれば10年ぐらい前のキャデラックやジャガーと近いでしょうか?元々昔の高級車というモノは、乗り方にある程度の癖があったらしいです。しっかりとその車に慣れていないと上手に運転することが出来ない。フランスの高級車シトロエンDSやCXはその最たるモノでしょうし、ジャガーも上手に転がすにはそれなりの慣れが必要だと聞きました。アメ車の代表格キャデラックも運転自体は安楽でも、そのフワフワの足周り特性を理解しないと、やはり上手くは走らせられないそうです。

 クラウンにも同様な雰囲気を感じました。初めてクラウンに乗る人は多少面食らう、でも長年クラウンを乗り継いだ人には「これこれ」と感じる操作系、乗り味。実に独特な車です。まず何より全ての操作系がスローな点。アクセルはとても大排気量の(と言っても試乗車は2.5Lですが)車とは思えないほど重たく、発進時鈍く感じられます。強く踏み込めばドーンと飛び出していくのですが渋滞時などには、本当に右足に神経を使います。高級車の理想像「そっとアクセルに足を置いただけでスムーズに車が進んでいく」そんなモノとは全く正反対です。またハンドルも切った後の返りがとてもスローで、ハンドルから手を放しただけでは元の位置まで戻ってくれません。自分で適切な位置まで戻す必要が有るのです。これも実に独特です。他にも独特なシートポジションは結局筆者には最後まで適切な位置が見つかりませんでしたし、ATセレクターもアスリートなのでゲート式なのですが、メルセデスなどとは逆のパターンで使いづらく感じました。また3→2に落とす時も肘置きと干渉して上手く落とすことが出来ませんし、リバースに入れる時も必ずニュートラルで引っかかってしまって1発でD→Rにする事が出来ませんでした。

 とにかく全てに「慣れ」を必要とするのがクラウンなんだと思います。そして一度その世界観に浸ってしまうと、逆に他の車は怖くて乗れないでしょう。乗り心地もそうです。アスリートですからクラウン本来の乗り味よりは不快な程固く感じましたが、50キロぐらいでだらーっと流している間のゆらゆら感は実に特別です。逆に100キロを越えてしまうとアスリートなんだからもうちょっとびしーっと路面をとらえて欲しいのですが、それはかないません。正直このアスリートという選択はクラウンの世界観からは「無し」だと感じます。基本がゆらゆらの車に無理矢理スポーツな味付けをしてもバランスが崩れるだけです。クラウンには確固としたクラウンの世界が有るのですから、ロイヤル1本でその道を極めて欲しいと感じます。

 クラウンという車は有る意味「上がり」だと思います。色々と車に乗ってきた人が「もう車はいいや」そう思った時に辿り着くのがクラウンなのではないでしょうか?整備などで煩わしい事は何もなく、世間様からもあれこれ言われない。日本国内で使える限界的サイズ。クラウンに乗ってしまえば「車」と言うモノを考えなくてすむようになります。後はただクラウンを代替えしていけば良いわけです。リセールバリューの安定も老後の安心に繋がるでしょう。


次へ

車ばかのばか車へ