02年上半期の新車チェック評

過去の新車チェックのポイントはあくまでも発売当時のポイントなので、今現在の国産車デザイン通信簿のポイントとは一致しません。

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1-貰っても乗らない。2-格好悪いです。3-普通。4-知り合いが乗ってたら嬉しい。5-今すぐ欲しい。

フォレスター(02.5.29記)

 レガシィベースのインプレッサベースと手持ちのコマをフルに駆使して開発された先代フォレスターは、ニッチを巧みについたコンセプトで意外なほど売れた車となった。乗用車ベースの何て事はないトラック風デザインが、なぜここまでの支持を受けたのか未だによく解らないが、とにもかくにもスバルはキープコンセプトで2代目を出してきた。

 さて外観の印象は素直に格好良い。先代はいかにもスバルらしい垢抜け無さ加減が有ったが、今回のモデルはキープコンセプトのデザインで確実にフォレスターに見せながらも、フェンダーのラインやリアハッチ等で新しく格好良く見せている。これで2.0L4WDが178万円(受注生産)からなのだから、スバルの思惑通り割安感が際立つと思う。さらに新型は内装でも頑張っている。今までのスバル車では考えられなかった、灰皿など各種のフタにダンパー機構がおごられているのだ。これはちょっとした高級感の演出に繋がり、低めの価格と結びつく事によって、やはり割安感が出てくると思う。

 とまぁここまでは良い点ばかりあげて見た。だがこのモデルが先代同様モデル末期まで売れ続けるかというと、ちょっと疑問符がつくと思う。まずデザインが「今」過ぎる点。先代はどことなく垢抜けない感じが、結局「良い味」として最後まで認知され続けていた。だが見ようによっては最新のチェロキーに見えなくもない現行型は、ちと格好良すぎるのではないだろうか?まぁフェンダー上のプレスライン以外の「デザイン」されている部分は、全て(リアハッチ、リアバンパー、ドアサイドプロテクター)マイチェンで替えられそうなパーツなので、後から野暮ったく(無理矢理野暮ったくする必要も無いが)出来なくもないが、あまりにもデザインに走った車というのは、往々にして一般大衆には受けないモノである。長く売ることを考えるとその辺がちょっと気になりはする。

 次に内装。確かにダンパーなどをおごって高級感の演出には抜かりが無いと思う。思うけどやっぱりデザインにはセンスが無いと思う。なんと言っても頑張ってセンターコンソール全部をメタル風の塗装にしちゃったのが、逆に貧乏くさい。それとインパネ中段やドア上部には新しいデザインのシボを使ってプラスチック臭さを消しているのに、インパネ上面は未だに「皮風」のシボでなんだかちぐはぐな感じ。さらにイスも値段なりのイスで、相変わらずランバーサポートが変な風に張り出していて良いポジションを見つけにくい(特に後席)。レガシィではあれほど良いイスを作れるのだから、値段なりとは言え、もう少し頑張ってくれると嬉しい。

 取り敢えず今現在は格好良いので、インプレッサのように売れないと言う事は無いと思う。これも外したらスバルはちとやばい事になる所だっだけに、販売店も一安心なのでは無いだろうか。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)3。

アテンザ(02.5.24記)-試乗済み-

 マツダのこの欄、トリビュートを無視したせいで実に3年ぶりの更新となった。世の中は去年一年マツダ車の新車が無かったことを問題視しているが、その前に出た車がトリビュートなのであるから、乗用車に限ると丸々3年間何も出ていないと言う事になる。本当にマツダ社員は(販売員)よく頑張ったよ。さてそんな全国マツダディーラーが待ちに待っていた新型車がアテンザである。これをもって、今度こそ本当に伝統有るカペラの名は消滅するようで、その後継車の位置づけになる。

 デザイン自体はかなり前から公表されていた。マツダにしてみれば次から次へと他社が新車を出す中、何とか興味を引きつけておきたいという思いもあったのだろう。ただこのデザインに対して、このティーザーキャンペーン気味な戦略はどうであろうか?よくトヨタが使う手で、あまりにも斬新すぎるデザインの車を出す時は、事前にデザインを公表しておいてユーザーの教育を済ませておく。そして奇抜なデザインでも受け入れられやすくすると言う手がある。だがこのアテンザは綺麗にまとまったデザインだが、そんなに新しくも奇抜でも無い。こういうデザインの車をこうも早くから公表していては、逆に早く飽きられてしまうのではないだろうか?個人的にはユーノス500の正統的後継車と言う感じで嫌いではないのだが、ユーノス500が出た当時程のインパクトは、残念ながらこの車からは感じられない。

 さて実際にディーラーで見た印象はと言うと、これが結構良いのである。サイズ的にはプリメーラほど有るはずなのだがそんなには大きく見えない。また顔はいわゆるマツダ顔なので、そんなにたいした事は無いのだが、セダンのリア。特にトランク上面のラインが実に美しい。マツダとしては今回スポーツと名付けた5ドアを積極的に売りたいのだろうが、ウェッジシェイプが強調されていて「スポーティー」をあざとく演出している5ドアより、どちらかという水平基調気味のセダンの方がクリーンなイメージで良いと思う。

 内装もマツダ頑張りましたよ。一気に三菱も抜き去って日産レベルぐらいまでたどり着きました。ただ残念というか卑怯というか、カタログでユーザーのハートをグッと掴む、ベージュ内装やブラックアウトメーターは、最上級車のさらにオプション(ラグジュアリーパッケージ)で注文しないと付いてこないのである。セダンのカタログなんか殆どこのラグジュアリーパッケージの写真なので、ちょっと酷いなぁ・・・と言う感じではある。またインパネチタン調パネルは、全面一体型デザインで贅沢な感じがして良いのだが、全く社外品オーディオを受けつけないデザインになっている。最近欧州車でよく見られる手法だが(うちのC5 もそうだ)、付いているオーディオに自信が有るのならともかく、大したオーディオつけていないのなら絶対に止めて欲しい部分である。オートバックスなどで後付けしないで、ディーラーオプションから選べと言う事なんだろうけど、ちょっとずるい気がする。

 で、まぁいつもならここまでで終了なんだけど、今回は試乗までしてみた(やっぱりマツダやる気だよ(笑))。うん。かなり良い。と言ってもこれまた試乗車は最上級グレード2.3Lにラグジュアリーパッケージなので、ベーシックグレードがどうかは解らないのだけど。まずエンジンとアクセルの関係が実に自然。踏んだら踏んだ分だけ車が動く。自分の頭で想像している通りの動きが出来る。こんな当たり前の事が出来ていない車が最近結構多くて、ATのセッティングでアクセル最初の一踏みめだけぐいっと力が出るようにして、トルクが有るように見せかけているモノが多い。ただこうするとアクセルの微妙な力加減の調節がしにくくて、どんなに丁寧に運転しても、下品なオヤジの運転みたいに、同乗者の頭を揺さぶる運転になってしまうわけだ。アテンザはそう言う小細工はしていない。新開発のエンジン自体に相当自信が有るのだろう。本当に自分の右足で車を操ることが出来る。

 次に足周り。これまたじっくりとしつけられている。単純に言えば固い部類の足周りなのだと思うけど、とにかく路面に対して嫌な反応をしない。大きめな段差でもドン→コト。と実に素直に衝撃が吸収されるのだ。固いのだけどしなやか。そんな感じで乗っていて全然嫌じゃない。国産車でレガシィB4、スカイラインに続いてお勧めの足周りだと思う。レガシィもそうだけど、結局どれだけ時間を掛けられたか?で車の出来は決まってくるのかも知れない。最初に書いたようにマツダは全然新型車を出せないでいた。トヨタが次から次へとお手軽に車を出している間も、じっーと我慢してこのアテンザの開発をやっていた訳だ。そのじっくりと煮詰めた足周り、エンジン、ATは、やっつけ仕事で作った(時間を金で買った)トヨタの車とは雲泥の差である。レガシィもやはり一球入魂で、毎回毎回丁寧に作られている車である。騙されたと思ってちょとアテンザやレガシィB4に試乗して欲しい。ある程度車の運転をしてきた人なら時間を掛けて作られた車の良さが解るはずである。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)3(好) 。

ist(02.5.11記)

 いったい何種類出るのだ?のヴィッツベースの新型コンパクトカー。この後にも新型Willが控えているし、同クラスにこんなに車種を揃えて大丈夫なのかと心配になってくる。

 ヴィッツは出た当初クラスで抜きん出た車であった。だがそのヴィッツを研究してきたフィット、マーチの登場により、そのアドバンテージは殆ど無くなってしまった。むしろ割り切ったコストダウンの影響で、内装デザインなどには明らかに見劣りする状況になってしまっている。その辺りのマイナスポイントを補う意味でトヨタが投入してきたのが、このistだと思う。「リッタカークラスの車にも高品質感を」と言うテーマでもその辺りが伺える。

 で、実際に見た印象はどうかと言うと・・・それ程のモノでもないな?と言う感じである。個人的にだが、まだフィットの方が高品質感が有るように見えるし、マーチの方が色彩、シボデザイン共にセンス良く感じる。あくまでもヴィッツと比べると高品質。その程度のレベルに見えてしまうのだ。そもそも「若者向けは黒い内装」と言う単純なセンスがどうかと思うし、過剰に使っているメタル調部分も塗装丸出しであまり出来が良くない。ヴィッツと同じエアコン吹き出し口も、安物感に繋がっていると思うし、どうせ高品質感を強調したいので有れば、せめてカローラクラスからの部品の共用化に出来なかったモノだろうか?と思う。イルミネーションボックスなどまるで子供だましだし、総じて値段なりの内装だなと言う仕上がりである。高品質感をうたうのであるならば、カローラぐらいの気合いで仕上げて欲しかったと思う。

 と言うわけで、目玉である「高品質感」は全然たいしたことが無かったのだが、むしろこの車はクロスオーバーカーとしての魅力が有ると思う。コンパクトカーでありながらRVのようにもワゴンのようにも見える独特のデザイン。やや大きめのタイヤを履き、それを強調するようなフェンダーデザインはそれなりの存在感を示していると思う。外観デザインではそれなりの高品質感が達成できているのではないだろうか?タイヤの踏ん張り感はニューミニにも通じる面白いデザインだと思う。まぁトヨタ的に言えば「プチハリアー」と言う感じだろうか?ただ好きか嫌いかと言われたらあまり好きなデザインでは無い。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)2

マーチ(02.3.5記)-試乗済み-

 約10年の歳月をかけてマーチが3代目にモデルチェンジされた。初代は安さだけで無理矢理10年作り続けたが、2代目はキューブと言う派生車種の頑張りも有ったが、見事10年走りきって見せて発表当初の目標を達成することが出来た。また欧州でも高い評価を受けたマーチは、陽の当たらなかったリッターカー市場(もはやリッターカーとは言い切れないが)が、充分商売になるクラスだと言う事を、天下に知らしめた先駆者的存在だったと思う。

 さて10年前とは違い、強烈なライバルヴィッツとフィットがいる中での新型マーチの出来はどうであろうか?まず特徴的な、何にも似ていない外観デザイン(しいて言えばストーリア、大きくさかのぼればスバル360辺りか?)。この一見拒否反応すら出そうなデザインを、数を売らなければいけないこのクラスに提案してきたのは大英断だったと思う。だがそこはルノー傘下の新生日産である。去年のモーターショーや雑誌のスクープ記事などで、あらかじめ外観デザインをユーザーに見せておいて、視覚を慣らすことに成功している。以前の日産はこういうユーザーの教育を怠ってきていた。それが斬新なデザインが出た時のユーザーの拒否反応に繋がり、モデルチェンジの失敗となっていたわけである。その、ユーザーの目に散々触れられて新鮮味を失いかけていたデザインだが、実車を目にするとまた新しい発見がある。つまりそれだけ濃度情報量の濃いデザインだと言えるだろう。

 具体的にどこが良いかと言うと、まずウェストラインが高すぎない。最近の車は殆どが車高の高さに引きづられてウェストラインが高くなり、ガラス面積の比率が低くなり視界が悪くなる傾向がある。これをフェンダーから繋がるサイドキャラクターラインを旨く使って、ウェストラインを低くする事に成功し視界が確保できている。合わせてこのキャラクターラインは他の車と違い、あくまで水平基調で後ろに伸びていく、これもまた後方視界確保に大きな役割を果たしていると言えよう。このようにデザインと実用性のバランスが取れている所が、新型マーチの素晴らしい点なのである。他にも意外な程高い位置に配置され、独特のファニーフェイスを生み出しているフロントライトとフェンダーマーカー。これは当然運転席からの車輌感覚の把握に役立っている(余談だがこのフロントライトとフェンダーマーカーの配置は、新車情報で三本氏がさんざんメーカー側に訴えていた手法である)わけである。

 また全体の印象として、とにかく昨今のリッターカーにありがちな「マスのでかさ」を感じない。リッターカーなりの軽快感が全体から溢れていると思うのだ。ヴィッツや特にフィットは室内空間の広さにこだわり過ぎたせいで、とにかく前から来た時の印象などが「デカイ」。新型マーチからはそう言ううっとうしさを感じさせないのも人に好かれるデザインとして、良い点なのではないだろうか?

 内装は近年の日産車で最高の出来だと言える。配色の良さもさることながら、質感、デザインにおいても、一度抜かれたかに思われたホンダの内装に匹敵する仕上がりだと言える。この分野では、プラスチック丸出しの先発ヴィッツは完全に置いて行かれたと言えよう。各部の作りもしっかりしていて、他社の「デザインだけ良いけど使ってみると壊れそう」感が無いのも素晴らしい。色に対するこだわりは本当に徹底していて、ウィンカーレバーにまで色分けがなされている。ここまでこだわっていてあの価格で大丈夫なのか?と心配になるほどである。室内空間はフィットのように呆れるほど広いわけではない。だが円弧を描いているルーフラインにも関わらず必要にして充分、デザインと合わせて心地よい空間になっていると思う。家族全員が170センチオーバーで常に4人で乗るわけでは無いのだから、このデザインとのバランスは絶妙だと思う。

 そうじて新型マーチは良く出来ている。デザインでヴィッツと好勝負(フィット脱落)、質感でフィットと好勝負(ヴィッツ脱落)。後は乗り心地等の車本来の出来である。この分野ではヴィッツとフィットだと圧倒的にヴィッツである。そのヴィッツに迫るぐらいの出来の良さなら、マーチはほぼ完璧な車だと言えよう。ルノーと提携して、ルノーのイスの良さや足周りの良さ。その影響を受けていることを切に願う。

 余談。こんなにベタ褒めなマーチだが、埼玉の日産は車両価格に8万円もオプション乗っけて「店頭渡現金価格」としている。こんな10年前のトヨタみたいな売り方はどうなのだろうか?日産本体は変わろうとしているが、枝葉のディーラーの意識までは、まだまだ変わっていないと思われる。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)4。

ザッツ(02.2.9記)

 これまたモーターショーで発表済みだった軽自動車、That'sが発売された。ホンダはこれに併せてミッドシップレイアウト4WDと言う特異な形態のZを販売中止した。と言う事はZのモデルチェンジなのか?と考えてしまうが、あまりに突飛な発想でユーザーに全く受け入れて貰えなかったZとは違って、That'sはライフベースの似たようなミニミニバンで、モデルチェンジと考えるのはちと強引すぎるであろう。

 デザインはスズキアルトラパンと同じく、角張ったフォルムの角を丸くして馴染ませやすくしたモノだ。全体の印象は色のせいでそうは見えないモノの、トヨタのbBと似ていると言って良いだろう。(でもそのbBはそもそもホンダのモーターショー出品車「不夜城」やS-MXに似ている)。最近流行っている昔風の家電のようなデザインで、抵抗感無く多くの人に受け入れられるだろうが、ラパンと同じく残念なのが色の選択である。この車はバンパー替えツートン車も含めると14色も色が選べるのだが、そのどれもがメタリック系の曖昧な色なのだ。もっとはっきりとした鮮やかな色使いには出来なかったのだろうか?ホンダにはロゴの最終型にとても綺麗な緑や紺があったので(まぁあれもパールだからメタリックと言えなくも無いが)、ああ言う鮮やかな色をこの車にも採用して欲しかった。どちらかと言うとまだ、ツートンバンパー用に使われている色の方が鮮やかで良いと思う。

 内装に関しては本当に最近のホンダは手慣れてきた。軽自動車のコストの枠の中で作っているのでモビリオ程の品質感は無いが、それでもシボのデザインやパーツの形状などで安っぽく見えることを防いでいる。シート生地もなんだかキラキラ光って見える、不思議な感じのジャージ風生地で新しい感じがして良い。ただ、イスの出来自体は典型的ホンダイスで、前席は結局心地よい角度が見つからないし、後席も最近ホンダがよく採用しているパイプフレーム式のあんこの薄いイスだ。さらにこのイスの座面長が全然足りなく、およ成人男性が満足して座っていられるモノではない。長距離の移動は本当にご遠慮したい拙いレベルである。内装の質感などは明らかにホンダに軍配が上がるが、実際に乗り物として考えるとスズキのラパンやMRワゴンの方が、はるかに人間の事を考えた車だと言えよう。

 それにしてもホンダは今この時期にこの車を出す必要が有ったのだろうか?全く売れなかったモノの、Zはホンダの他の車と食い合いをするような心配はなかった。だがこの車は価格帯から見ても、使い勝手から見ても、明らかに自社製品のライフと競合すると思う。軽専門メーカーが、色々なタマを持つというのはまだ理解できるが、果たしてホンダがこんなに似通ったカテゴリーの軽自動車を複数持っている意味があるのだろうか?相変わらず販売台数好調のホンダだが、今のホンダが出す車は、確実に自分の所の車を喰ってしまうモノばかりである。オデッセイがマークIIやパジェロユーザーを喰って、お客を連れてきた時とはあまりにも状況が違いすぎる。他からお客を取ってくるのなら問題は無いが、自分の所の車を喰ってしまっては、先は見えてくる。ミニバン専門メーカーになりつつあるホンダの未来はそう明るくないかも知れない。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)3

マークIIブリット(02.2.2記)

 マークIIワゴン。今まではFFのカムリグラシアベースであったが、ライバルステージアがFRレイアウトでこのクラスを独走しているのがどうにも許せなかったらしく、わずか4年で(通常ワゴンボディは減価償却に時間が掛かりモデルチェンジサイクルが長い)FRレイアウトのマークIIワゴンを発売することとなった。

 だがそのデザインは率直に言って格好悪い。デザイン自体は既に東京モーターショーで発表されていたので(実車も)、その時から「これは酷い」と思っていた。実際に近くで見てみてもその思いは全く変わらない。ライバル車ステージアや、さらにワゴンブームの大元ボルボが、角張った押し出し感の強い顔をしているのを考慮に入れたのか、ブリットは全くマークIIセダンとは違う顔をしている。また後ろ周りもDピラーが立ち気味のこれまたボルボ風のデザインに仕上げられている(しかも一世代前のボルボ)。対してサイドドアパネルはマークIIセダンの流用を義務づけられているのだから、およそバランスの良いデザインにはなるわけがない。マークIIセダンは背高デザインでありながら、なかなか流麗なデザインである。そのデザインにいささか無骨な顔周りとリア周りをくっつけているのだ。一つの車の中でデザインが喧嘩をしている印象である。

 また垂直気味に立ったDピラーに対して、セダン以上に倒れ込んで感じられるCピラーである。ここのデザインの違和感も実に気持ちが悪い。さらにこの倒れ込んだCピラーは乗降性や室内の閉塞感にも悪影響を及ぼしていて、どうしてリアドアのガラスを専用に出来るのなら、Cピラーを起こす方に考えなかったのか?実に不思議である。内装はまんまマークIIセダンのまま、若干布地の柄が趣味の悪いモノに変わっている程度。ただしステージア対策か、リアトノカバーなどにもメッキが奢られていて、バカ日本人がクラクラ来そうな仕上げにはなっている。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)2

アルトラパン(02.2.2記)

 これまたモーターショーに出品されていたコンセプトカーの実車化。ただしあまりにもフォードのコンセプトカーの臭いがプンプンしていたショーモデルとは違い、幾分落ち着きのあるデザインでの登場となった。

 ただしこの落ち着き分、素直に車の魅力も薄くなったように思える。コンセプトカーのラパンは緑色とホワイトの実に斬新(だからそれがフォードのパクリなんだけど)なカラーでおよそ自動車を感じさせない車だった。どちらかというとポップな家電製品に近い感覚で、このカラーで登場したらさぞかし町の雰囲気は変わるだろうと期待したモノだ。だが実際に発売された車はツートーン自体は継続されているモノの、その色合いは中途半端なメタリックで、なんら今までの車のイメージと変わらないモノだった。

 色の問題はともかくとしてデザインはどうだろう?これまたフロントグリルは一般的なモノへと変わり、ドアハンドルも普通のデザインとなっている。総じてスズキの考えではコンセプトカーは「やりすぎ」だと考えていたようで、当たり障りのないデザインとなっている。それでも内装はスズキにしては頑張った方で、ボディカラーに合わせた?インパネなど、グレー一色の軽自動車の内装に比べれば格段に気持ちの良い空間になっている。ただ、このインパネ一見金属に見えるが実はぺらぺらのプラスチックで、このインパネについている引き出し共々、およそ耐久性と言うモノは考えていないように思える(簡単に傷つきそう)。ちゃちいと言えば前席の収納式カップホルダーの強度も実に不安で、助手席に移動する際に踏んづけて破壊する人間が必ず居るだろうと思う。

 MRワゴンと同じシャーシを(と言う事はワゴンRとも一緒)使っているようだが、後席の空間は完全にMRワゴンに負けている。頭上空間こそなかなかだが、後席足下空間は、通常の軽セダンとさして差は感じられないレベルである。また前席足下空間も中央にコンソールボックスが無い分広そうに感じるが、実はフロントドアの張り出しが以外と大きく、成人男性はいささか窮屈な姿勢で運転せねばならない。この面でもMRワゴンには完璧に負けており、同じデザイン勝負の車でありながら、「空間」に使ったか「遊び」に使ったかの差が大きく出ていると思う。コンセプトカーそのままで出れば、4あるいは5の評価も有ったかも知れないが、この程度ではこんな↓点数でしょ?

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)3

MRワゴン(02.1.12記)

 以前モーターショーに出品されていた、ミッドシップレイアウト「軽自動車のエスティマ」MRワゴンが発売された。と言っても発売された車はワゴンRベースのFF車で、共通点はデザインと名前のみと言う車である。だったら何の為の「MR」だ?と言う気がしなくもないが、当然メーカー側はなんだかこじつけた説明をして旨く誤魔化している。

 エスティマが新型でFFに変わっても、その卵形のデザインが変わらなかったように、MRワゴンもFF可に伴うデザインの変更はほとんど無い。いわゆる箱系ミニバンの多い軽自動車の中では、珍しくデザインのある綺麗な形をしていると思う。しかもこれだけデザイン側に振られているにも関わらず、室内側に一切影響を及ぼしていないのだから、今までのスペース効率優先の箱形デザインは何だったのだ?と言う感じだ(まぁ箱形は箱形で機能優先風に見えて良いんだろうけど)

 ぱっと座ってみて問題点は、雑誌で言われているようにAピラーが視界を妨げるという点のみ。あと内装色が2色あるのだけど、ベージュ系は配色の良さでプラスチックの安っぽさが隠されているのに対して、グレー系は今までのスズキ品質の安っぽさが丸出しと言う点ぐらいかな?せっかくイスをブルーにして華やかにしているのだから、プラスチック部分にもブルーを生かせばいいのに・・・あっ忘れてました。この車は全高1550ミリじゃないので立体駐車場だと断られる所も有るかもしれませんが、やっぱり他の1550サイズ車と同じく、テールゲートを上げた時に175センチ以上の人間は確実に頭ぶつけます。ご注意を。

 個人的にはモーターショーに出ていた、近々発売予定の日産版の方の顔が好みかな。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)3(やや4寄り)

プレミオ/アリオン(02.1.7記)

 今まで長い歴史を誇ったコロナとカリーナが、今回のモデルチェンジでプレミオとアリオンという名に変わった。

 トヨタの変わらなくては!と言う思いはそこまで強いと言うことだろうが、名前を変えても出てきたモノはコロナとカリーナとしか思えない、何の新しさも無い車であった。一部ドアパネルなど以外は違うパネルを使っているにも関わらず全体の印象が変わらないのも、コロナ/カリーナとあまり変わらない。プレミオがおっさん臭くて、アリオンがちょっと(本当にほんのちょっと)スポーティーと言うキャラクター付けも全く変わらない。トヨタとしては、コロナ/カリーナのオーナーの年齢が高すぎる為、先細りの不安を感じて、名前を変えたりして若者にアピールしようとしたのだろうけど、こんな程度の車で今の若者は騙されないと思う。むしろ名前を変えてややこしくなり旧来のユーザーを失うよりは、サニーのようにおっさん車として旧来のユーザーと一緒に消滅していくぐらいの覚悟の方が良かったのではないだろうか?

 肝心の車の出来はどうかというと、これまた旧来のトヨタ的ヒエラルキーに振り回されている悲しい車なのである。カローラよりはちょっと高級で、ビスタよりは安い。とほほである。それは内装の出来を見ても丸解りで、先発のビスタが当時としては斬新な発想で作られていたこともあり未だに古くなっていない事や、カローラがあの価格とは思えない高級感で郡を抜いた仕上がりとなっていたこともあって、間に挟まれたプレミオ/アリオンは特別な売りが何にも無い凡庸な出来となってしまっているのだ。つまり、安くて高級感が欲しければカローラを素直に買うべきだし、広い室内と斬新な発想が欲しければビスタを買うべきなのである。どっちつかずのプレミオ/アリオンは実に格好悪い。

 質感もトヨタにしては思ったより高くなくがっかりな内容だ。インパネコンソールの蓋はダンパーが効いていない(別に効いていなくて良いのだけど、効いてないと納得しないユーザーを育てたのはトヨタ自身だ)し、銀色部分はスプレー吹きつけの安い塗装仕上げ、室内ドアハンドルのメッキ部分も、プラスチックのバリが隠しきれてない(何度も言うが別に隠さなくても良いと思う。思うけど隠さなくては納得しないユーザーを育てたのはトヨタである)。さらにミニバン、ワゴンを意識した後席のたたみ方と、それに伴う後部トレーの変形は、実に複雑だが旨く言っているとは言い難い。何よりどこの誰があんなにふんぞり帰った姿勢でイスに座るというのだ?いや実際にあの姿勢で乗る人間が居たとしても、背もたれ部分だけ倒れて、両サイドのサポート部分が倒れないのでは、くつろぐ事など100%出来る訳がない。

 この車は、ここに来てトヨタのセダン作りもおかしくなってきた混迷の一作だと思う。出すセダン出すセダンあんまり売れないんじゃ、悩むのも解るけどね・・・ガッチリとした安定感のあるデザインと、サイドモールの分怠く感じさせないサイドパネルで、若干プレミオの方がましかな?

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)3(やや2寄り)

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