04年上半期の新車チェック評

過去の新車チェックのポイントはあくまでも発売当時のポイントなので、今現在の国産車デザイン通信簿のポイントとは一致しません。

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1-貰っても乗らない。2-格好悪いです。3-普通。4-知り合いが乗ってたら嬉しい。5-今すぐ欲しい。

ブーン(04.6.27記)

 トヨタと共同開発したストーリアの後継車。

 ストーリアって良い車でした。良い意味でのダイハツらしい飛び抜けた感じで。車としての出来云々より、デザインだけでちょっと欲しくなるような国産車には数少ない魅力的な存在でした。で、その後継車がこのヴィッツの失敗作みたいな車なんですよね・・・形を見て想像がつくように、この車もヴィッツの兄弟車です。もう数え切れませんね。マツダがバブル期に同じように兄弟車乱発して大失敗しましたが、トヨタは見事に売り切っていきます。今回もいい加減減価償却の終わったヴィッツの最後の出涸らしで(実は最後じゃ無いらしいんですが)、軽自動車並の価格のリッターカーをこしらえました。スキマというスキマにねじ込むようにして車を売っていく姿勢には本当うんざりします。

 この車も色々工夫してありますし、何しろ安いですから結構売れるでしょう。収納スペースもバカみたいに有りますし、女性の視点で考えましたと、便利なのかどうか微妙なアイデアも満載です(例、前席シート間にトレーを置いてバッグ置き場としているんですけど、これはオプションで良いのでは無いでしょうか?スペース自体が有ればバックは置けるわけですし、わざわざトレーを作りつけてもホコリが溜まって目立つだけかと。トレーよりケースというか薄手のBOX形状にした方が便利でしょう?)。でも相変わらずインパネ質感は呆れるほど安っぽいです。ダイハツとしては軽自動車の卒業組、トヨタとしては軽自動車に乗っている人をターゲットユーザーとしているのに、軽自動車より仕上げの悪いインパネってどうなんでしょ?何度も言うように、結局インパネ質感が最後までヴィッツシリーズの弱点でした。カローラではあそこまで質感の高いインパネを作れる会社が、どうしてこのクラスでは、クラス最下位なのか?理解に苦しみます。またキレイにに畳むためか後席の薄っぺらさも最近では珍しく、大人が長時間座るのは遠慮したいレベルです(絶対的スペースは確保してるんですけど)。

 そして何よりこの車の一番駄目な点は、外装デザインでしょう。売りきってきたモノの、さすがに兄弟車乱発の影響か、なんとも切れ味の悪いデザインです。ヴィッツの初期デザイン候補の中から脱落したモノを再利用してるのでは?と思うほどです。冒頭の話に戻りますが、このやる気無い全く練られていないデザインの車が、ストーリアの後継車なんですよ。共同開発なんて言ってますけど、実質トヨタで作ったモノを押しつけられているだけでしょう。共同開発と言うぐらいなら、トヨタはヴィッツのシャーシを提供して、デザイン、コンセプトはダイハツがやると言う風にして欲しかった。アプローズを切られ、シャレード→ストーリアを切られ、ダイハツは名実共に軽専門メーカーにさせられたと言う事です(YRVも売れてないから危ないでしょう)。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)2

エリシオン(04.5.24記)

 オデッセイが劇的なコンセプトチェンジで実質ワゴンとなってしまった為、それまでのオデッセイの客層と数少ないラグレイトの客層を合わせてカバーするのが、このエリシオンである。オデッセイのコンセプトチェンジでも解るように、ホンダは事実上ミニバンブームは近いうちに終了すると睨んでいるようで、このエリシオンからも絶滅寸前の巨大恐竜のような雰囲気が漂ってくる。

 ホンダは中上級ミニバンを全てこれでカバーするわけである。トヨタのイプサム〜エスティマ〜アルファード、日産のプレサージュ〜エルグランド辺りがライバル車となるわけだ(価格的にはオデッセイの守備範囲となるモノでも、ミニバンらしいミニバンを求めている層はオデッセイには行かなかろう?)。そう言う意味で、アメリカ直輸入だったラグレイトほど大きくは無いモノの、エリシオンもかなりのサイズに仕上がっている。大型ミニバン市場で最初に鉱脈を掘り当てたエルグランドや、未だに根強いファンを持つシボレーアストロを見ても解るように、基本的に大型ミニバンは「押し出し命」で有る。グランビアの失敗に懲りたトヨタが臆面もなくアルファードでバカグリル付けてきたのを見てもそれは明かだろう。だがホンダは最近には珍しく独自のへそ曲がり魂を出して、何ともおちょぼ口のグリルでエリシオンを出してきた。率直な感想としては、この顔は失敗だと思う。いや、バカグリルを付けてこなかったこと自体はおおいに評価したい。だがあまりにも車体とのバランスが取れていないのでは無いだろうか?途中までバカグリル付きのデザインで進められていて、最後になって急遽バカグリルを取りやめたようなバランスの悪さを感じてしまう。車の顔は色々なモノや動物に例えられる事が多いが、筆者にはこの顔はウルトラマンの怪獣ザラブ星人に見えて仕方がない。

 では全体のデザインはどうだろう?どうだろうと言っても、所詮ミニバンである。顔以外は箱にいかにディティール追加出来るか否かなので、それほど代わり映えがするものではない。目新しい所としては後部上部に赤い鉢巻きが付いた程度だろうか?総じてホンダのデザインに言える事だが、ホンダのデザインはプレスラインを曖昧にしすぎていると思う。線の一本一本に自信が無いのか、結構良いラインが入っていても、それがあまり目に飛び込んでこないのである。かと言ってふくよかな面構成でデザインを見せているのとも違う。何とも思い切りの悪いデザインに見えるのだ。このエリシオンにしても、ガラス面下部からフロントグリル上に綺麗なラインが入っているのである。だがこの綺麗なラインは何とも自信なさげに引かれている。白い車では飛んでしまって簡単に消えてしまうようなラインなのだ。バカグリルをやめたのなら、こう言う一本の線で情感を表現していかなければならないはずだ。実車を見れば誰でも気づくだろう。だが多くの消費者は雑誌やCMで新型車の情報を得る訳で、その写真においてせっかくのラインが消えてしまっていては意味が無かろう?ホンダはもっと一本一本の線に神経を注ぐべきで、それが出来ないのならオデッセイのように解りやすいえぐい造形とするべきでは無いだろうか?本当にホンダのデザインというモノはいつまでたってもあか抜けない。

 内装デザインは、最近のホンダクオリティで良くできている。メーターの照明のSF感はちょっと刺さる人多いのではないだろうか?そしてティアナ登場以来始めてフォロワーが出てきた。材質こそ変えたモノのこの寿司屋のカウンター風デザインは明らかに影響を受けていよう?

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)3

タント(04.1.22記)

 箱。

 もう箱は良いよ・・・。軽自動車は寸法上の制約が有るので、スペースを生み出す為にはある程度箱にならざるを得ないのは理解できる。でもスズキがワゴンRと言う魔法を使ってから、世の中の軽自動車はほとんどハイトワゴンスタイルになってしまった。売れるわけだし、実用本意でおちゃらけているわけではないのだから、本来全く文句なんぞ言う筋合いではないのだが、こうまで箱箱ハイトワゴンハイトワゴンでは正直ゲップが出て呆れてしまう。

 「バンベースのアトレーとは違い、FF乗用車ベースで最大限の室内空間を生み出した」言ってる事は間違ってません。デザインもモビリオという先輩が居るモノの、グラスエリアの広いスタイルは悪くありません。でもね、ダイハツに一体何台のハイトワゴンが有りますか?ムーブ、ミラ、ネイキッド、MAX、アトレー、テリオスキッド。この上にタントですよ。これメーカーとしては棲み分け出来てるつもりなんでしょうかね?どう考えても食い合っていると思います。なのにまっとうなセダンは1台も無いわけです。旧モデルのミラジーノがあるだけ(モーターショー出品車のあれが出るらしいですけど)。何なんでしょう?この状態は・・・なんか間違っていると思います。2種類、いや負けに負けて3種類もあればやっていけるでしょう?次から次へと同じような車を出すと言う事は、それだけそれまでに出した車に自信が無いと言っているようなモノだと思うんです。何より直前に同じような車を買ったユーザーに悪いと思わないんでしょうか?

 ダイハツはコペンと言う、軽唯一のスポーティーカーを売っているわけです。やれば出来るわけです。形が気に入らないわけではないですけど、その会社としての姿勢に疑問符をつける意味で、↓この評価です。これが素ムーブのモデルチェンジとかだったら文句言いませんよ。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)3(嫌)

R2(04.1.19記)

 スバルの新型軽自動車の名前はR2である。30代以上の人なら記憶に残っているだろうが、スバル360の後継車がR-2であった。360が独特な可愛さを持っていただけに、R-2の至極常識的な形は、子供心にパッとしないなぁという印象を持っていた(今見るとこれはこれで味があるのだが)。ところが21世紀に現れた新型R2は実に素晴らしいデザインをまとって登場する事となった。パッとしまくりである。

 スバルと言うとどうしても質実剛健と言うか、バカ真面目と言うか、とにかくデザイン面での冒険が少ないメーカーと言う印象がある。そりゃ、真面目に作ってたのに出来たら、とんでもないモノだったと言う初代アルシオーネや、その反省でジュジアーロの言うがままに作ったSVX等というインパクトの有るモノもある。でも遠く360の時代からスバルのデザインというモノは、デザイン本位と言うよりは実用本位。実用を突き詰めたら結果として素晴らしいデザインになったモノもいくつか有るが、最初からデザイン重視で作られた車は殆ど無かったのではないだろうか?

 しかし、ザパティナス氏が初めて陣頭指揮を執ったモデルと言われるこのR2は、どう見てもデザイン本位の車である。枠一杯の箱と言う、救いようの無い軽自動車の常識をなんとか変えようとする意欲が車全体から漂っている。はっきり言ってしまえば後席は広くない、と言うか前席もこと幅に関しては必要最小限と言う印象すら有る。これら全てデザイン代(しろ)に取られた結果なのだが、筆者はこれで問題ないと考える。どうしても日本人、特に軽自動車を求めようとする人達は貧乏性過ぎると思う。一体軽自動車で4人フル乗車、フル積載で、長距離ドライブをする人がどれだけ居るだろうか?また居たとしても、その機会は年に何回有るだろうか?なのに日本の軽自動車は規格一杯一杯に広げた箱ばかりである。

 いや、人それぞれ使う用途があるのだから、箱な軽も存在するべきだと思う。ワゴンR、ekワゴン(箱にしては絶品のデザインだが)などは、そのまま箱で居ても良いと思う。だけど箱ではあまりに愛想が無いとばかりに、前後デザインだけいじくった箱の軽のなんと多いことか・・・ああ言う軽自動車を見ると、化粧や髪型にばかり気を使っているのに、体は三段腹の人を連想させてがっくりである。そんな中登場したこのR2は見事に、顔も髪型もプロポーションも気にしたおしゃれさんである。顔はくっきりフェイスでちょっと日本人には濃すぎる?と言う声も聞くが、これからスバルの顔はこういう方向性になって行くわけだから、次第に見慣れていくだろう。何よりマツダや三菱の統一フェイスより遥かに特徴的なのが良いと思う。フェンダー周りの造形はこれまた実に見事で、限られた軽の幅でよくぞここまでボリューム感を出せたモノだと思う。さらに良いのが色で有る。CMで用いられているメタリックピンクは陽光下、照明下それぞれで微妙な色合いの変化を見せ、デザイン共々この車を軽自動車であると言う事を忘れさす。他にも数多くの魅力的な色が揃っているので、是非この車を購入しようと思っている人は、銀や白、黒などの無彩色でなく、華やかな色合いを選んで欲しい。

 この車にはそこそこ売れて貰わないと困る。筆者としては是非この方向性でのインプレッサやレガシィが見たいのである。ともかく、これからのスバルが大いに期待できる一台だと思う。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)4(好)。

クラウン(04.1.13記)

 シーマ(しかも先代)。

 と言うわけで、いつも通りクラウンはキッチリ4年でフルモデルチェンジがなされた。ただし今回のフルモデルチェンジはロイヤルシリーズと、ボディを共有するアスリートの2車種のみである。近く新設されるレクサス店に、看板車種セルシオを奪われるトヨタ店をなだめる為か、新型マジェスタはさらに高級車になって(一説によるとかなりの部品をセルシオと共有するらしい)、ロイヤルとは別のイメージで売るらしい。またステージアの健闘で、上級ワゴンにもマーケットが有ると睨んで出されたエステートは思った以上に売れずに、しばらく現行型が売り続けられるようだ。

 全く変わらないことが是とされてきたクラウンなのだが、ラクシュアリーはマジェスタに任せたという訳なのか、今回のクラウンのデザインは明らかにスポーティーである。いやスポーティーというか、どちらかと言うと中古50万円にアルミエアロで100万円掛けちゃいました的世界観、下品なヤン車のイメージに近いだろうか?代々のクラウンから漂ってきていた、「和」の空気が今回のクラウンからは殆ど感じ取れない。確かに今までのクラウンも上品とは言い難かったかも知れない。でも現在日本の成功したおっさん達が満足する、独特の「和」のデザインがクラウンにはあったわけだ。そんなモノを今回のクラウンは捨て去ってしまったように感じる。

 そんな印象を簡単に表すと、冒頭の一言になるわけである。

 日産が一番悪戦苦闘していた時代の最高級車シーマ(3代目)。考えに考えてクラウンがたどりついた位置が、シーマだったなんて全くお笑いである。スラントしたノーズ、なだらかなCピラー、セルシオ似のリアテール。今回のクラウンは見れば見るほど不思議なデザインである。先々代クラウンで、筆者はそれまでのクラウン嫌いを改めた。クラウンにはクラウンの、日本車としての変わらない魅力が溢れている。そう感じたからである。先々代クラウンの華奢で均整の取れたプロポーションは、日本女性の美しさであるとすら思っていた。その女性が先代では筋肉増強剤を覚え、今回はヤンキーな彼氏が出来てしまった。変わらない事が魅力であったクラウンが、何故こんなにも変わろうとしたのか?それが筆者には全く理解できない。台数はキチンと売れるだろうが、だからといって良いデザインだとは言えないと思う。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)3(嫌)

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