08年上半期の新車チェック評

過去の新車チェックのポイントはあくまでも発売当時のポイントなので、今現在の国産車デザイン通信簿のポイントとは一致しません。

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1-貰っても乗らない。2-格好悪いです。3-普通。4-知り合いが乗ってたら嬉しい。5-今すぐ欲しい。

ティアナ(08.6.17記)

 先代は「FF高級車」と言う現在の日本市場では成立しそうで成立しない、難しいジャンルで唯一成功したモデルでした。以前はウィンダムやディアマンテ等が有名だったこのジャンルも、現在では他にカムリ、インスパイアが有るのみ。マークXあたりと販売台数を比べると惨敗なイメージが有りますが、アジア市場での人気ぶりと合わせて、充分に成功作と言えるモデルだったと言えます。

 先代には出るなりその内装デザインにノックアウトされたのですが、特に紺のシート地のモデルには、その配色の絶妙さで木目の安っぽさが見事にカバーされていて感心した覚えが有ります。そんな訳で今回のモデルも基本、肝は内装。先代で寿司屋のカウンターと陰口を叩かれた、木目調パネルの配し方はかなり遠慮気味になりました。そりゃ目に触れる部分が大きければ大きい程、粗は目立ちやすくなる訳ですから今回のデザインの方が上手いデザインだとは言えるでしょう。ただその為、先代の何物にも似ていないインパクトは無くなってしまいました。

 相変わらず半艶消しの木目調パネルの出来はいまいちですが(この半艶消しの木目調パネルは、トヨタですら使いこなせているとは言えないですから、難しい題材だとは思います)、その木目パネルの上に浮いているようなパッドが、今回のデザインのテーマのようで、フロント、肘掛け周り等に反復して用いられています。これはなかなか面白いデザインで、ほんわりと柔らかさを感じさせ、メーカーの言う「おもてなし」を表現出来ていると思います。ただ、正直ベージュ内装の場合は、ドアの取っ手部分に採用されている事もあって、汚れが非常に目立ってしまう事が想像出来ます。

 イスの形状も先代ではデザイン優先過ぎると叩かれた部分ですが、今回はその反省か割合常識的なデザイン。ただ、前席と後席では座り心地が大きく変えてあるのが特徴です。後席は今時珍しいぐらいソフトな座り心地で、この座り心地で腰が痛くならないのなら、日産はルノーからその辺りのノウハウを学んだと言えるでしょう。ショールームでちょっと座って、ノックアウトされる人も多いのでは無いでしょうか?

 外装デザインはスカイラインに続き、実際は下がってはいないけれど、キャラクターラインで尻が下がっているように見えるデザインです。個人的には尻下がりデザインには全く抵抗はないのですが、日産は何度もこの「尻下がり」で失敗しているので心配では有ります(笑)。ダブルサンルーフのモデルは開口部は期待する程大きく無いのですが、屋根全体が黒塗りになり、ツートーンカラーのような見た目で良いアクセントになっていると思います。

 全体の印象は正直ベンツのCLSに似ていると思います。ベンツ程とろけている感は有りませんが、グリルなんかもマイチェン前のモデルとは似ているので、パクリと言われても仕方は無いかもしれません。アジアで台数売るつもりなので、あえてそれ風のデザインにしているのかもしれませんが・・・

 初代のインパクトが大きかったですから、それに比べるとキープコンセプトの今回はそれほどのヒットにはならないと思います。合わせて日本人の車寿命が延びていますから、新型が出たからと言って僅か5年程度で乗り換えるとユーザーがそれほど居るとは思えません。かと言ってダウンサイジングが言われてる昨今、他から乗り換えるようなモデルでもないので、正直今回は日本国内は目をつぶってアジア頼みなモデルチェンジと言えるのでは無いでしょうか?

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)3(好)

フリード(08.6.7記)

 フィットベースの最大8人乗りミニバン。フィットベースのミニバンと言えば、先代にはモビリオが有って、個人的には路面電車をモチーフにしたと言うデザインが大いに気に入っていたのですが、一般的は不評でそれほど売れた車では有りませんでした。そこで心機一転、新たに1.5Lクラスで8人乗りと言う点を売りに登場したのがこのフリードです。

 フィットベースの8人乗れるミニバンと言う事で、客足は大変順調で、発売週の週末にはカタログが在庫切れになり、今買っても納車は8月だったりとモビリオの不調を考えると、ホンダとしてはほくほくな感じです。ただ、個人的にはこの車に対する印象はあまり良く有りませんでした。

 まず値段が高いんですよ。フィットベースの1.5Lの車なのに、セールスが勧める売れ筋グレードが200万越え。価格帯で考えても先代(まだ売ってるみたいですが)のモビリオが150万〜200万弱だったのが160万〜220万強と、一気に10万以上の値上げです。おまけにセールスが言うには「このクラスの車にストリームの前席、ステップワゴンの後席をおごってます」との話。でもそれって逆に開発費が掛からなくてコスト削減出来てお安く出来るのでは?

 これだったらストリームや、値引き幅の大きい二クラス上のステップワゴンの売れ筋グレードとかと、価格的に競合する可能性すら出て来ます。ただそこはホンダとしても重々承知なようで、ガソリン高から来る世の中の景気動向なんかも加味し、ディーラーで客に積極的にダウンサイジングの勧めをしているようです。

 だったら先週までストリームやステップワゴンを買っていた人達や、今後ステップワゴンがモデルチェンジした時にどうするんだ?と言う気もしますが、今のところお客さんは順調に騙されているので(笑)、ホンダとしては上手い商売の仕方です。ただ新車効果が薄れた頃には、この値段の高さは徐々に響いてくると思うので、その辺りでお買い得仕様車とかが出てくるのを待つのが正解だと思います。

 と言う訳で、たいして高く無い商品に随分利益を乗っけて売っていると言う所が、まず気に入らない点だったのですが、他にも外装デザインがあまりにもベンツのAクラスそっくりで、とても中国メーカーの事言えないよって言うのもかなり気に入らない点。

 元々ホンダはデザイン的には落ちるメーカーだと思うのですが、そこに欧米風味のふりかけをして、上手く誤摩化し独自の雰囲気を出して来たわけです。なので多少のパクリなんかは良い意味でバタ臭さが出て好意的に見ているのですが、この車はちょっと酷くて言い訳のしようが無い感じですね。

 内装も値段の割にはあんまりお金が掛かってなくて、フィットベースと言う事がよく解ります。フィットの価格帯ではこれで良くても、200万弱の車としては残念な出来映えでしょう。インパネ周りは棚のようなデザインを採用しているのですが、何故だか中央のATセレクター周辺にしかトレイが無いんです。しかもすぐ上にモニターがひさしの用に張り出していて実に使いづらいです。

 いや、インパネ上に物を置いていると、急ブレーキ時にすっ飛んでくるので危険だと言う考え方が有るので、助手席前等にはトレイが無いのかもしれませんが、だったらそもそもこんな棚のようなデザインにしなければ良い話ですし、むしろ棚として削った分を収納スペースにする方が、こう言うタイプの車として正解でしょう。

 肝心の8人乗りに関しては、展示車が無くて不明。少なくとも前後スペースは3列目でもそこそこ乗れる感じでしたが、あの幅に3人は厳しいのではないでしょうか?(その証拠にカタログでは8人乗っているショットは1枚も有りません)あとやはりと言うか、3列目は体育座り系の姿勢を要求されます。

 結論として、価格、デザイン、質感、どれを取っても欲しいと言う気にさせる車では有りませんでした。有りモノで上手くまとめた車だとは思いますが、それにしては値段が高すぎます。なんともホンダの腹黒さが鼻につく一台と言う感じです。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)2

クラウン(08.2.29記)

 クラウンがフルモデルチェンジされました。と言っても今回のフルモデルチェンジは、一つのプラットフォームを2世代に渡って使う古くからのトヨタ車の慣習通りで、実際にはスキンチェンジと言える程度のモノです。クラウンの形が見事に2世代ごとに大きく変わっているのはそのような事情からで、特に車に詳しくない人でもクラウンだけを買い続けていれば、自然と気づくのではないでしょうか?

 そのような事情ですので、今回のモデルチェンジは見事にキープコンセプト(と言うか、クラウンの歴史自体が偉大なるキープコンセプトですが)。先代からスポーティーにふりはじめたデザインテイストを今回も半歩進めた感じです。クラウンのデザインで大事なのは、この「半歩」進めた感で有るのは有名な話で、日本全国津々浦々の人々に買って貰うには、先代と比べて大きく新しくなってはいけなく、首都圏のユーザーが少し期待はずれに思うぐらいが丁度良い訳です。

 今回も先代に比べて、少し吊り目、少しグリルを小さく鋭角に、少しCピラーを寝かせてと、遠目で見るとフルモデルチェンジしたようには思えないけれど、近くで見ると確実に新しく見える絶妙のさじ加減のデザインだと思います。ただ正直、レクサスブランドの立ち上げによるセルシオの消滅。それに伴いトヨタのフラッグシップにマジェスタがなる事が明らかな今、「いつかはクラウン」はもはや過去の言葉だなと思わされます。当然トヨタとしては意図的にやっているのでしょうが、なんだかこの普通のクラウンが以前で言うマーク2のようなポジションに感じられて仕方がありません。そうやって考えるとデザインも最終型マーク2のワゴン、ブリット顔にも見えてきます。

 スターレットやカローラから順次ステップアップして、ようやくクラウンが買えると。定年退職だから最後にクラウンを買うんだと。地道な人生を歩んできたお父さんのささやかな勲章のような存在だったクラウンが、このクラウン、この存在感では、60面クリアしたのにまだ裏面60面有りますと言われているような、残念な到達感に思われるんじゃないでしょうか?(笑)昔のクラウンは幸せでした。マジェスタなど無い時代、上級のクラウンと並のクラウンでは、排気量や多少のサイズの違いはあっても、見た目は同じ形だったわけですから。例え2.0Lの一番安いクラウンを買っても「ああオレは遂にクラウンに辿り着いた」と世のお父さんを満足させていたのですから。

 でもこのスポーティーなマーク2なクラウンではその喜びは有りません。これだったらベンツのCクラスを買って「ああオレは遂にベンツに辿り着いた」の方が人生幸せに終われるかも知れません。トヨタとしてはフォーマルな高級車はマジェスタに任せて、クラウンはユーザーの年齢層を若返らせる意味でこのような方向性にしてるんでしょうけど、個人的には普通のクラウンの進むべき道は、実はプログレのポジションなんじゃないかと思うんです。そう、小さな高級車。取り回しに苦労しない程度のサイズで、高品質でゆとりのある車。ただのFFハッチバック、カローラベースに、デカイエンジン積んで小さな高級車なんてやってる場合では無いですよ。そんなモノを作るんだったら、それをクラウンでやれと。

 残念なマーク2感はドアを開けて室内に入っても感じます。今回からランクルなどと同じく木目調パネルをつや消しにしてきました。確かに世界的な流行を見ても、時代はつや消しな木目パネルに移行しつつあるのですが、これが何とも一見して安っぽく感じてしまうのです。トヨタのテラテラした木目調パネルは、ある種の到達点に達していましたから非常に出来が良かったですが、それに対してこのつや消しパネルは他社と横並び程度にしか見えません。あえて木目感を出す為にプラッチック表面にランダムな傷を入れているのですが、これも成功しているとは言い難く、6.3.3で12年な学習机みたいな出来映えです。

 木目を使っている部位のデザインにも工夫をして欲しい感じで、樹脂成形だから出来るような部位にどうして使ってしまうのでしょう?具体的に言うと、助手席グローブボックスの上部分等ですが、この部分途中でねじれが入っていて、実際に木で作るとなると結構な手間が掛かりそうなデザインです。ロールスロイスやマイバッハならともかく、ただの大量生産の3.0Lクラスの車にそんなコストがさけるわけが無いのですから、これだけで「偽物」だと悟らせてしまうわけです。例え木目調でも使ってる部位使い方によっていくらでも高級に見える訳ですから「樹脂成形だからこの形に出来る」ではなく「実際に木で作ったらどうなるか」を考えてデザインして欲しい感じです。

 別に今回のクラウンのデザインが、嫌いだとか駄目だとか言うつもりは有りません。クラウンとして、今までの流れで考えても絶妙なさじ加減で「普通」に出来ていると思います。ただ問題なのは「クラウン」の扱い方。せっかく築いてきた「トヨタのクラウン」なのですから、もう少し大事にして欲しいものだと思います。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)3

アテンザ(08.2.7記)

 最近のマツダの新型車の話を書く際に避けて通れないのが、マツダは欧米で好調だという話。日本国内ではアテンザもアクセラも、売れてないという程でもないけれど、少なくともヒットしているとは言い切れないぐらいの印象ですが、世界的にこの2車は充分にヒットしていて、マツダ本体の経営を安定させているわけです。そんなわけで、今回フルモデルチェンジされたアテンザもどちらかと言うと日本国内を見て作ったというより、世界市場を見て作られたモデルと言えるでしょう。

 アテンザの前身はカペラですから、本来はプレミオやブルーバードと同じクラスだったわけです。ですがホンダと同じく、売れない日本国内市場は見限り、欧米の基準で作られたボディサイズは、幅は当然、長さでも5ナンバーサイズを超えてしまっています。ディーラーに置いてある車もどーんと見事な存在感と言うか、どちらかと言う小さな店舗の多いマツダディーラーでは、圧迫感さえ感じてしまうサイズです。

 デザインは先代アテンザの延長線上に有りながら、欧米で好まれる為にか、よりアグレッシブなスタイルになっています。写真だとつり目が涼やかな印象に見えるかもしれませんが、実車だと昨今のプジョー車のように顔がばーんと迫ってくる大変攻撃的な顔です。ライトユニットの造形やメッキモールの配し方等には、高品質感を感じさせ、本来のプレミオクラスでは無く、マークX等のアッパーミドルとして闘って行くんだというような気概すら感じます。反面リアスタイルは、セダンもワゴンも上品な印象で日本人らしい繊細な感性を感じさせます。特にセダンのトランク上面のC面の出し方なんかはかなり綺麗なデザインです。

 現行V36スカイラインがインフィニティブランドで売れた為、 V35時代と比べて、内外装に大きくコストをかける事が出来たのと同じく、このアテンザも世界中で売れた為、新型には十分なコストがかけられているように感じます。とくに顕著なのは内装の質感で、そこには今までのどこかチープなマツダ車の印象は有りません。その要因として単純なウォールナット風の木目調パネルを採用しなかったのが良かったのだと思います。人は数多く見慣れてる物ほど、その物の善し悪しを判断する能力が高くなっているわけですから、腐る程使われ、世の中にピンキリがあふれている木目調パネルより、あまり見慣れない質感の華飾パネルを使ったのは大成功と言えるでしょう。

 ただ、相変わらず残念なのが塗装品質。ディーラーの蛍光灯の下で見ると柚子肌なのが丸わかりです。どうしてこれがいつまでも改善されないのか不思議でなりません。マツダにとっては改善ポイントでは無いのでしょうか?

 全体的な印象としては、値段の割に良く出来ている車だと思います。拡大したサイズなりの品質は有りながら、価格帯は拡大前の値段にとどめる事に成功しています。この価格の上に、タイミングが合えばマツダお得意の大幅値引きも有るでしょう。そうなると実に満足感の高い一台だとも言えます。後の問題はサイズ面でしょう。この価格帯の車を買おうとしている人が果たしてこのサイズを期待しているのか?またこのサイズの車を欲しいと思っている人が、アテンザを、と言うかマツダ車を欲しがるのか?その辺りが日本での売れ行きを左右すると思います。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)3

パレット(08.2.3記)

 と言う訳で、前記したタントに続き同じ日にスズキのパレットも見て来ました。タントの予想外の好調で、珍しくスズキ側が後追いでライバル車を発売する事となったわけですが、ダイハツが過去にムーブ等後追い車をマッハで開発して出して来たのに比べて、仕事が丁寧と言うか、遅いと言うか、本家がフルモデルチェンジをするタイミングで、ようやく後追いモデルを発売する事となりました。

 初代ムーブなんかは、いかにも急遽でっち上げました的車でしたので、後追い車でもしっかりと開発時間を取ったスズキは、ちゃんとしていると言えばちゃんとしているのですが、熾烈な販売競争を繰り広げているディーラーサイドからすれば、もう少しどうにかして欲しいなと思っているのでは無いでしょうか?只でさえスズキはモデルチェンジの間隔がダイハツより長いのですから、新規車種の投入が出来るのであれば、もっと迅速にやって欲しいのが現場の率直な感想だと思います。

 そんなわけでパレットは、初代タントを研究し尽くして出来ているはずです。そしてスズキが導きだした答えは「後席両側スライドドア」。初代タントが通常の横開き式ドア4枚だったので、後発ならのアドバンテージを築くのならと導入したんでしょうけど・・・個人的には全く評価しません。むしろ正解なのは、新型タントの「歩道側スライドドア、車道側横開きドア」でしょう。

 ステップワゴンやセレナ等の、子供が小さいファミリーが購入するミニバンで何度も話題に上っている、この後席ドアの開き方ですが、やはり車道側のドアは、子供の飛び出しの可能性が高いので、開かないか、開いても後続車からドアが開いていると言う事が解る、通常の横開き式が正解だと思います。

 ただステップワゴンやセレナは車幅が5ナンバーサイズ一杯一杯ですから、駐車場に止めた時に両隣の車に子供がドアパンチしないか心配、と言う声も充分に理解出来ます。だったら旧ステップワゴンの「歩道側のみのスライドドア」か、今回タントが取った「歩道側スライドドア、車道側横開きドア」がもっとも安全かつ便利な仕様でしょう。これで車道側後席にチャイルドロックを効かせていれば完璧です。

 しかもパレットは軽自動車なのです。ステップワゴンやセレナに比べれば、駐車場内での余裕は明らかなわけですから、両側をスライドドアににする必要はあまり感じられません。そんな事より何より、車道側後席がスライドドアになっていて、後続車にドアが開いている事が解らないリスクの方が遥かに高いと思います。

 と言うわけで、せっかくのアドバンテージは全然アドバンテージにならなかったわけですが、その他の部分はどうでしょうか?外板デザインは全体のプロポーションが似るのは仕方無いですが、十分スズキらしい顔に仕上がっていると思います。ワゴンRスティングレーみたいな、どこの車か解らない感は無く、遠くから見てもちゃんとスズキの車に見えるよい顔だと思います。

 内装もここの所の、トヨタ遺伝子を組み込んだダイハツの質感圧勝状態にようやく一矢報いたという感じで、スズキにしてはかなり高い質感にまとまっていると思います。特にダイハツがミラでミソつけた「ピアノ調パネル」の質感が非常に良く、これなら木目調パネルなんかより遥かに高品質に見えます。

 イスの出来はいつものスズキ流。平板でちょっと固めな良く言えばドイツ車風の物。実際に長く乗っていないので、ダイハツのしっとりとした座り心地のイスとどちらが良いか解りませんが、好みとしてはダイハツですかね。

 タントの項にも書きましたけど、個人的にはこういう無駄に背の高い軽自動車を買おうとは思わないので、あまり興味が湧かないのですが、パレットには上記致命的問題点(パレットだけの問題点では無いですけど)があるので、タントの方が良い印象を抱きましたね。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)3

タント(08.1.28記)

 以前ミニバンをディーラーに見に行くのが嫌だという話を書きましたが、ミニバンと同じぐらい見に行くのが苦手なのが軽自動車なんですよ。

 ミニバンは見るからに「駄目な人、独り者」な風体のおいらが、幸せ家族モノの道具を売ろうとしているセールスに「買う気ねーだろ?」と見抜かれるから嫌なわけなんですが、軽自動車は軽自動車で、現在所有している車がプジョー406とシトロエンC5と言う、外車スカシ野郎な臭いがプンプンする組み合わせで、どちらに乗ってディーラーに行ってもやはり「買う気ねーだろ?」と思われるわけで。

 言い訳をするなら、406は中古で30数万円で購入。C5も6年乗って多分今の価値からするとエッセ程度の価値しか無い車両なんですけど。軽自動車売ってるセールスからすると、はなからテンション下がる客である事は確かです。そんな事情で、今までタントの実車を見る機会を先延ばしにしていたのですが、スズキからライバル車パレットが出てしまったので、まとめて見る事としました。ま、その方が見比べる事も出来ますしね。

 タント。ムーブベースの背高ワゴン。つーかムーブでも十分背高だし、室内空間だけ取ったらアトレーって言うサイズギリギリのも有るわけで。軽自動車ブームの今だからこそ存在出来る車だと思いますね。でも先代は世のお母様達に好意的に迎えられ大ヒット。今回もキープコンセプトで、ほとんど印象を変えないモデルチェンジとなりました。ちゃんちゃん。

 って、それだけじゃフルモデルチェンジとして寂しいだろうと言う事で、eKワゴンが飛び道具「軽初の電動スライドドア」を準備していたように、タントも「軽初のピラーレススライドドア」を目玉に持って来ました。ダイハツとしてもほぼ同時期に、スズキがライバル車をぶつけて来る事は解っていたでしょうから、それに対抗する意味でもこの「軽初のピラーレススライドドア」ってのは重要なアイテムだったわけです。

 この辺りは、親会社としてトヨタが居るって言う強みが出ていると思いますね。車体の剛性とか安全性を考えれば、軽自動車のサイズでピラーレスのスライドドアを導入するってのは、そうそう簡単に出来る話では無いと思いますが、そこはそれ、トヨタには既に同様なピラーレススライドドアを持った車が何台か有る訳ですから、そのデータをベースに開発が進んだのであろうという事は、簡単に想像出来る話です。

 でも、個人的にはこのピラーレスのメリットってあんまり感じませんね。いや確かに全開にするともの凄く広々しているんですけど・・・実際に必要なことって、この車所有している間に1度か2度有るか無いかってところですよね。タンス買って持って帰るか引っ越しするか?いやむしろ、車に積んだり下ろしたりって面倒だし疲れるので、だったら業者に頼むか?ってのが30半ば過ぎの正直な考えだと思うんですけど。

 だとしたら結局、最初に書いたように商品価値を上げる為の「目玉」なだけなんですよ。CMで、ショールームで目を引く事が出来る。所詮、飽和状態、進化の限界まで来てしまっている軽自動車ですから、他と差別化するには車の性能と関係ない所でアピールしないといけない。その為の「ピラーレススライドドア」なんですね。

 ちなみにこの「ピラーレススライドドア」にお金かけたせいか、内装質感なんかはダイハツの内装としては、ちゃちい方に属してると思います。あ、でもイスはちょっと座った感じでは結構印象良かったです。軽自動車だから平板なイスってのとは次元が違う感じ。

 どっちにしろ絶対に買う事は無い車なので(ダイハツで買うなら、ミラかソニカだし)、結論なんか出ないんですけど、「ピラーレススライドドア」に疑問を感じないのなら有りなんじゃないですかね?

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)3。

インスパイア(08.1.9記)

 ホンダのアコード以上のセダンというのは、北米市場のモデルと合わせて考えると非常にややこしくて、先代のインスパイアは北米では只のアコードで、日本で言うアコードは北米では高級ブランドアキュラのTSXになりと、どっちが格上なんだかよく解らない状態になっています。そんな中登場した新型インスパイアも、先代と同じく北米では只のアコードなのですが、排気量が3.5Lに拡大された上に、ボディサイズもどーんと大きくなってしまい、これまた北米高級ブランドアキュラの最上級車RL、と言うか日本名レジェンドを凌ぐサイズとなってしまいました。

 北米ホンダではアコードが最上級車ですから、いくらデカくなろうが問題無いのでしょうが、日本ではアキュラモデルもホンダモデルも同じホンダカーズで売ってる訳ですから、なんとも微妙な事態になっていると言えるでしょう。しかもホンダの最上級車レジェンドのデザインが、なんとも高級感に欠けると言うか、存在感の無いデザインだっただけに、この新型インスパイアとの棲み分けが本当に出来るのか心配になってしまいます。

 ただレジェンドを抜きにして考えると、このインスパイア、なかなか高級感、存在感の有る悪く無いデザインだと思います。パッと見の印象は昨今のBMWのパクリのようなデザインですが、元々ホンダのデザインは欧米から適度に頂いてくるのが得意技で、それが独自のバタ臭さに良い意味で繋がっていた訳ですから、個人的にはそれほど悪い印象は持ちませんでした。

 内装に関しても、トヨタとも違う独特のテラっとした輝きを持つ木目の配し方等は、それなりの高級感を演出出来てますし、図体がバカでかいだけ有って室内空間も不満の無い広さを確保しています。対価格で考えるとトヨタのどのモデルより、サイズ、排気量でお得。さらにエンジンサイズ自体はデカいものの、6気筒のうち3気筒までは休止させて燃費に貢献する技術も持ち合わせているとなると、実は結構お買い得なビッグセダンと言えるかもしれません。

 ただ返す返すも問題は、そのポジショニング。レジェンドと同じ排気量でレジェンドよりデカい。さらに言うと、下のクラスのアコードは、これより遥かに小さなサイズで2.4L上限。間が空き過ぎなのは誰の目にも明らかです。シビックが昔で言うアコードサイズまで大きくなっているので、次のアコードのモデルチェンジで、アコードが2.5L〜3.0Lサイズまで大きくなるのか、その辺りも注目したいところです。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)3(好)

フォレスター(08.1.3記)

 インプレッサベースのワゴン風SUVとして初代はインプレッサ共々、巧みにニッチをついた戦略が当たり、スバル3本目の柱となる孝行息子。ところが2代目はインプレッサの不振と合わせるように、変わり映えしないキープコンセプトのモデルチェンジが失敗し、存在理由が一気に怪しくなってしまったモデルと言えよう。

 半年ほど前インプレッサの項で、スバルは「特別なメーカーになる事に失敗した」と記したけれども、このフォレスターも特別な存在の車になる事に失敗したモデルだろう。初代のワゴン風SUVと言うコンセプトは、当時のRVブームに辟易していた日本には丁度良い、肩の力の抜けたニッチコンセプトモデルだったわけだが、それから10年ほど経った現在、まさかミニバンの次のブームが、またSUV(RV)に戻るとは誰も想像してなかったのでは無いだろうか?そうして他社が本格的SUVで確実に台数を稼ぐようになると、フォレスターもニッチな存在で居る事は敵わず、結局「特別な存在」を諦め、他社と同じ土俵に上がることを選択することとなる。

 そんな訳でサイズも見た目も3代目フォレスターは大きく変わる。ライト周りのデザインが、インプレッサから始まった新しいスバルの顔らしいが、正直なところこの顔にスバルらしさはあまり感じられない。新しいフォレスターを町中で見ても、多くの人がスバルの車と感じる事は不可能だろう。スズキエスクードの新型か、はたまた韓国現代の車に見えてしまうのでは無いだろうか?全体のデザインとしては、破綻無くキレイにまとまっているように思えるが、それにしてもこの特徴の無さは「特別な存在」を諦めたとは言え、ライバルに埋没する迷いの有るデザインだと思う。しいて特徴を挙げるとすれば、フェンダーアーチを2重にしたような処理だろうが、これは逆に煩わしく感じてしまい成功しているとは言い難い。

 内装はベース車のインプレッサとほぼ同じデザイン。木目調パネルなどを奢っているが、その配色には疑問を感じる。薄いグレーと黒内装の中に突如赤みの強い木目調パネルが存在すると言うのは、バランス的にどうなのだろうか?素人目にはこの配色はとても成功しているとは思えない。またその処理も、木目調パネルの上からアルミ調塗装を施したのが、ヘリのマスキングの甘さで丸分かりで、なんとも悲しい高級感の演出になってしまっている。

 と言うわけで、結構な勢いで駄目出しを続けてきたが、実はこの車なかなか価格がお安いのである。車のデザインやメーカーを気にせず、純粋に装備と価格表を比べて車を選ぶような人にはお買い得な良い車にも見えるだろう。内装にしてもスズキのエスクードなんかよりは遙かにみすぼらしさを感じずに済むし、外装もエクストレイルの若向きな道具感に抵抗を感じる人には、落ち着いたデザインに見えるのでは無いだろうか?「特別な存在」になり損ねたメーカーが、結局価格で勝負というのは安易な戦略で先行きが不安になるが、取りあえずこのクラスのこう言うモデルを真剣に買おうと思っている人には、悪い車では無いと思う。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)3。

 

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