09年下半期の新車チェック評

過去の新車チェックのポイントはあくまでも発売当時のポイントなので、今現在の国産車デザイン通信簿のポイントとは一致しません。

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1-貰っても乗らない。2-格好悪いです。3-普通。4-知り合いが乗ってたら嬉しい。5-今すぐ欲しい。

SAI(09.12.18記)

 トヨタのハイブリッド。安いのがプリウスで200万円台、高いのがレクサスブランドだけどHSで400万円台。となるとその中間を埋める車種が欲しいと登場してきたのがこのSAIで300万円台のハイブリッドカーとなるわけです。

 印象を率直に一言で言うと「高いでしょ?」確かにトヨタの中での価格帯のバランスは上記したように100万ずつで上手く取れてると思うんです。でもプリウスと比べて、HSと比べて、マークXやクラウンと比べて、このSAIのベーシックグレード340万って高く感じてしまうんですよね。

 以前HSの試座記で、HSは兄弟車のようなSAIが出てしまうと厳しいのではないか?と書きましたが、実際に現車を見てみると、価格に説得力がないのはむしろSAIの方でした。HSはプリウスとはっきりと差別化が出来ています。価格、世界観、とても同じ土俵で比べようとは思わない車です(実際の性能、価値は別として)。HSが買える人は、あまり積極的にプリウスを買おうとは思わないでしょう。レクサスの世界観を気に入って、それでいながらレクサスで一番安い価格でハイブリッド車が買える。そう言う面にメリットを感じるユーザーが買う車なのです。

 しゃかりきにリッター20キロ走る事だけに価値を見いだしていない。今まで乗っていた高級車がリッター7キロ程度しか走らなかったので、だったら一つHSでも買ってみるか。そう言うユーザーがプリウスと比べてHSを選ぶわけが有りません。ところがこのHSと事実上兄弟車と言って良いSAIには、そのプリウスとの差別化があまり出来てないのです。

 プリウスの一番安いモデルとの差は約130万。基本プラットフォームは両者共用ですから、130万円は排気量、若干の後席拡大、装備、そしてトヨタ曰く高級車としての作り込みのはずです。でも高級車としての作り込み。全然駄目です。確かにプリウスよりは安っぽくありませんし、高そうには見えます。でもクラウンは当然、マークXあたりと比べてもその質感は完敗です。むしろプレミオ/アリオンの臭いすらしてきます。

 トヨタはこの車をプログレの後継車として売りたいとも考えているようです。そう、小さな高級車です。確かに小さな高級車がハイブリッドなんて洒落てます。良い着眼点です。でもプログレって不人気車でしたけど、もの凄くトヨタ的価値観で作り込まれた車だったわけです。その仕上がりを気に入っていた人からすれば、このSAIに納得出来るとはとても思えません。

 トヨタにすれば「これが新しいトヨタが考える高級、高品質の価値観です」と言いたいのかもしれませんが、そんなのは詭弁に過ぎません。クラウン、マークXでは未だに旧来の「高級」価値観で車を作っているのですから。SAIの高級感が詭弁だというのは、HSと比べるとよく解ります。トヨタはHSとSAIは別の車で兄弟車であると言うことを否定しています。

 その証拠に「内装パーツはどれ一つとして同じパーツを使っていません」と言うわけです。両車を比べてみましょう。全体の印象はもの凄く似通ったイメージなのに、確かに一つ一つ見ていくと別の形、別のパーツに見えます。

 「全くの無駄。」

 どうしてそんな無駄な金型起こしてくだらない差別化を図るのだったら、その分のお金を本当の高級感に回せないのか?レクサスとトヨタが同じ車じゃまずい?だったら尚更別の車に見えるように、大きく内装デザインも変えるべきでしょう?基本骨格は同じでも、別の車に見えるようにデザインできるよう、ヴィッツ兄弟で散々作り分けしてきたのですから。

 SAIの価格が高い言い訳に、トヨタは全部乗せであるからとも言います。ベーシックグレードでほぼフル装備だから、プリウスのベーシックグレードとは違うんですよと。でもだったらSAIにも不必要な装備を省いた本当の意味でのベーシックグレードが有っても良いんじゃないでしょうか?この車が300万ジャストぐらいでしたら、そんなに高いとも思いませんし、プリウスの上のクラスだなと素直に納得が出来ます。

 と言うわけで、プリウスと大して変わらないのに、排気量が大きくて税金が高くて、燃費もぐーんと悪い。プリウスより良い点は、若干高そうに見えて(実際高いですし)、排気量なりに力に余裕があって、若干広い。それだけです。その為に130万円アップで、300万円オーバー。

 優遇税制が年度末で終了となる予定だったので、プリウスを買えなかった人がかわりにSAIを注文しているようですけど、SAIぐらいの燃費で、SAIぐらいのお金を出すのなら、実用燃費でゴルフとか十分太刀打ち出来ると思うんですよね。「ハイブリッド」「優遇税制」なんかそう言うキーワードに踊らされてるだけかと。プリウスの性能があの価格で買えるのは確かにお得だと思います。でもインサイトやSAIをハイブリッドだからとほいほい買ってしまうのはどうなのでしょう?

 ハイブリッド車と言ってもまだまだ過渡期です。本当に性能が良くて、本当にお買い得な車は、これからまだまだ出てくるのではないでしょうか?少なくともSAIは決してお得な車では無いと思います。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)2

キザシ(09.11.17記)

 東京モーターショー開催中にいきなり日本導入が発表され、即日発売開始となったスズキのフラッグシップカーがキザシです。事前情報で欧米では発売されるが、日本への導入は不況の影響で不明とあっただけに、世界で最初に日本に導入されるというのは驚きでした。

 しかしこのキザシ、スズキ初のフラッグシップセダン。日本市場へ世界最初に導入。と掲げられたアドバルーンは実に見事な車ですが、なんと日本では完全受注生産で、そうそう実車が拝める車ではなさそう。となれば、展示車があるうちにと大慌てでスズキのディーラーに向かいました(また配車も各県1台とか2台なんで大変です)。

 いつものように実車を見て触っての結論としては「スズキらしい車だなぁ」という感じです。と言っても全然ほめ言葉じゃないです。と言うか以後この車についてほめる点など殆どありません(笑)。

 まず肝心のフラッグシップカーとしてのたたずまいですが、いわゆる日本的、ドイツ的な高級感、高品質感は微塵も感じられません。確かに外観デザインは、サイズ的な縛りがなかったせいか、なかなかアグレッシブな仕上がりとなっていますが(どっかで見た感は拭えませんが)、18インチタイヤが標準装備な点、ウエストラインが高くてグラスエリアが狭い点、そして何よりフロントに大きくスズキのマークが付いていると言うことで、なんか小さな車に見えてしまいます。

 またこの車に準備されている色が、黒、銀、白のみ。営業車か?という感じです。高級車らしい上品な色が準備されていたりは全くしません。と言うか何の為の受注生産なんだか?売れそうにないから受注生産を選んでいるのであれば、それを生かしてせめて、スズキで現在販売している車の色ならどれでも塗れます。ぐらいの事は出来ないものかと。

 ドアを開けて運転席に座ります。あ、イスはちょっと良い感じ。いつものスズキの平板なイスでは全く無く、適度にルーズで好印象。ただこればっかりは長時間座り続けないと評価しきれないですけど。内装はいわゆるいつものスズキ仕上げ。ソフトパッドを貼ってある部分ですらプラッチックに見える悲しさ。相変わらずの黒一色内装で(天井はオフホワイト)、質感の低さが丸わかりです。デザイン自体もファミリーカーのようなデザインで、シボの質感低いのに、助手席前にそのパネルがでーんと来ちゃって、嫌でも目についてしまいます。

 後席に回ってみると、サイズとFF(4WDも有り)で有るということを考えると、とても広いとは言えない空間。少なくともスズキの重役カーとして、後席に人を乗せるのに向いているとは言えません。また前記したようにウェストラインが高い上に、黒内装なので座っていると圧迫感があります。トランク容量を稼ぐためか、リアガラス下が盛り上がってるのもその印象を強めます。

 さてこの車。お値段なんと280万円からです。フラッグシップカーですからそれぐらいしても悪いとは思いませんし、スズキとしても、いわゆる安全装備全部付けですから高いとは思ってないんでしょうけど・・・同時期発表の新型マークXは、6気筒2.5Lで240万円からなんですよね。

 ではそろそろまとめます。最初に書いた「スズキらしい車だなぁ」と言うのは、自分達の都合だけで作っているいつものスズキらしさと言う意味です。決してユーザーのことを考えての車作りなどしていない、スズキらしい「見切り」の車です。まずFFでこのサイズなのに室内空間が狭い点と品質が低い点。アメリカメインに売る予定で開発が進んだ車と考えればすべて納得です。

 アメリカ人はこのサイズのセダンに4人ないし5人乗ろうとは思っていません。品質についても日本人やドイツ人ほどこだわりが無いので、この程度でもさほど文句は出ないのでしょう。つまりアメリカ人の嗜好をこの程度で大丈夫と見切ってるわけです。欧州向けの車はキチンと作るのに、ワゴンRはこの程度で大丈夫と見切るのと一緒です。

 次に完全受注生産で有る点。上記したように受注生産なのに色すら選べない。だったらそんな車無理して出さなくても良いわけです。でもスズキは自分達の都合のみを考えるので販売してしまうのです。こんな車も自分達は作ってるんですよ、作れるんですよとアピールするためだけに。

 たった1年で消滅したオプトラと言うOEMのセダンがありました。あれと同じです。その車を買ったユーザーのことを全く考えていません。オプトラなんか5年乗って他の車に乗り換えようと思った時に、査定価格いくらになるんでしょう?カローラを買っておけば次への乗り換えもスムーズでしょう。でも不人気車では乗り換えすらままなりません。

 似たような例でマツダスパイラルと言う言葉がありますが、マツダは本気でその車を開発して、本気で売ろうとして、その結果のスパイラルですからまだ仕方有りません。でもスズキが売ったオプトラ。開発生産は韓国の大宇で、そこにスズキの本気は1ミリも有りません。このキザシもそうです。受注生産ですから注文した奴が悪い。スズキは損しない仕組みになっているのです。

 こんな仕打ちを、今までスズキ車を買って愛してくれた人に(そうでないとこんな車買わないでしょ)平気でするようなメーカーがスズキなんです。散々ワゴンRだスイフトだと買ってくれたユーザーに300万の車を押しつける。この車が無ければそんな不幸は起こらないんです。スイフトの後は他社の、作りなれた本物の大型車、高級車に乗れば良いんです。

 よくモノの本でスズキの経営は評価されています。不況下でスズキ規模のメーカーが生き残っていくのは凄いと。でもそれは、ユーザーのことを冷徹に見切っているから出来るのです。この値段にするなら、こんな程度でもユーザーは納得するだろう。多くのユーザーは気づかないだろう。そう言う見切りの積み重ねがスズキなんです。とにかく田舎の農家のおっちゃんが騙されて買わないことを祈るだけです。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)2

マークX(09.11.7記)

 コロナから派生したマーク2が10代目を向かえる際に、ブランニューとして登場したのが先代マークX。今回のモデルチェンジにあたっても、名前はマークXIとはならずにマークXの2代目としての登場です。

 筆者はマーク2のような車を長年否定して来ました。300万円クラスの車で別の良い車が出るとよく、「日本人はマーク2なんか買ってる場合じゃない」そう評して来てました。マーク2の全盛期、部長以上がクラウンなら課長はマーク2、係長はコロナ、平社員はカローラ。そう言うクラス分けがバブル崩壊ぐらいまでは有ったわけです。

 当時トヨタが本気出して作ってるのはカローラとクラウン。間のコロナとマーク2、特にマーク2はその2車に比べれば、お手軽に雰囲気重視で開発され、売れれば売れる程トヨタがガバガバ儲かる車でした。クラウンとほぼ同じサイズでクラウンより格下感を出す為に、クラウンより軽快でスポーティーなイメージを演出。その為4ドアHTに小さめのキャビンで、価格帯の割になんとも狭苦しく実用性の薄い車になり、それが筆者の評価を大きく下げる要因となってました。

 その後、バブル崩壊以降、このマーク2のからくりに気づいた多くのユーザーは、レガシィやオデッセイ、あるいは素直にクラウンを購入するようになり販売が激減。最終型は心を入れ替え(笑)、クラウンベースの全高高めなまっとうなFRセダンだったにも関わらず売れ行きは伸びず、結局マークXにモデルチェンジされるわけです。

 そうしてデビューした先代マークXは、最終型マーク2の失敗の揺り戻しで、またまた全高低め、派手なイルミネーション内装等を採用する軽薄な車として復活。それほどヒット車というわけでもありませんでしたが、新型もまたこの路線を踏襲して来ました。

 と言うわけで、長々このマーク2的な路線が嫌いな理由を書いてました。が、新型マークXを見て触って、ちょっ微笑んでしまいました。あぁトヨタはキチンとユーザーの事を考えているんだなと。と言うのも、新型マークX。びっくりする程マーク2的な車として仕上がってます。

 今時びっくりする程、イスがべったべたな位置まで下がり、4ドアHTのストレートアームで寝そべって運転する姿勢がばっちり決まります。またその平板でコシが無い独特のイスは、歴代マーク2そのもの。内装意匠もメッキパーツにテカテカな木目と、艶消し木目を採用する事が多い最近のトヨタ車の流れに逆行しています。

 まさか平成のこれだけ全高の高い車が多い中で、こんな車が新車で現れるとは思いませんでした。これはトヨタ明らかに確信犯です。今まで散々マーク2系でトヨタを潤してくれたマーク2ユーザーに、キチンと最後までマーク2的な車を供給し続けると言う覚悟。新たなユーザー拡大等考えずに、現在50代以上になった平均ユーザーと、そのまま心中して行くつもりなんだと思います。

 世の中が大きく変わる中で、名前は同じでも、車のコンセプトが変わるという事はままあります。初代シビックと現行シビックが同じ名前の車だとはもはや思えません。そしてコンセプトが変わらなくても、時代に合わなくなった車は消滅して行っています。なのにマークXは名前こそ変わりましたが、あのマーク2的な世界観はそのままです。

 しかも自動車評論家の評判を聞くと、このクラウンベースのマークXがまた結構よく出来ていると言う話し。以前の軽薄短小なマーク2とは違って、イメージはそのままに車の出来は良く、さらに価格もあの当時のマーク2より遥かに安い価格で供給されるわけですから(ベースグレード238万円)、これほどユーザー思いの車は無いでしょう?

 マーク2的なモノを好む、日本中のおっさんユーザー。そのおっさんユーザー達の人生最後の車として、マークXが有ると言う幸せ(こう言う価値観の車が人生最後の車で幸せか?と言う外野の意見は別にして)。人間長い間染み付いた価値観はそうそう変えられません。またそこを無理して変えたからと言って幸せになるとも限りません。マーク2ユーザーは、このマークXで、自分の信じている価値観と共に幸せな老後を過ごすわけです。その為には、現在ではある種パイクカーのように感じてしまうこのマークXが必要なのです。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)3(好)

ステップワゴン(09.10.29記)

 ホンダが触れ幅の大きなメーカーで有る事は皆さんもご存知の通り。同じ車でも、その代によって大きくコンセプトが変わる事がままあります。今回モデルチェンジされたステップワゴンもそんな1台と言 えるでしょう。

 ステップワゴンはオデッセイと共に、現在のホンダの地位を築く為の重要な1台でした。バブル前、スポーティーイメージに固執したホンダはRVブームに見事に乗り遅れ、一時は三菱に吸収合併される のでは?と言う噂がささやかれるほどの経営状況でした。その窮地を救ったのがこの2台で、以後フィットのヒットと共にホンダはハイト系ミニバンメーカーへと変わり、現在へ繋がるわけです。

 大ヒットした初代ステップワゴンは、クリーンな面構成を持つ、見るからに広そうで箱そのものな道具感溢れるデザインでした。2台目もそのヒットの流れのままキープコンセプトのモデルチェンジ。ただこのキープコンセプトのモデルチェンジで、ホンダが失敗するのもいつもの出来事。2代目後半からは、日産セレナやトヨタノアの後じんを拝するようになりました。

 そこでホンダが大きく方向性を変えたのが先代ステップワゴン。低重心コンセプトの元に、室内スペースはそのままに(ホンダ談)全高をライバル車より大きく下げてのモデルチェンジでした。しかしこの振り幅の大きさはあまりユーザーには受け入れてもらえず、今回そのコンセプトは大きく揺り戻され、全高をまた高くしてライバル他車と同じ土俵での勝負となりました。

 さて新型ですが、パッと見の印象は・・・「これホンダ?ステップワゴンだよね?」と言う感じ。特にどこがと言うわけでは無いのですが、どちらかと言うとセレナがモデルチェンジしたらこんな感じになりそうと感じました。ホンダファンとしてはどうせ戻るのなら、初代ステップワゴンの「道具感」なデザインに戻って欲しかったんでは無いでしょうか?

 ホンダとしては先代の失敗の要因はコンセプトに有りと考え、全高を上げて来たわけですが、筆者は先代の失敗はコンセプトよりむしろデザインに有りと感じています。初代、2代目とクリーンな道具感あふれる箱形が支持されていたのに、低重心コンセプトに引っ張られて、箱を変にスポーティーなデザインにしたのが不評だったのでは無いでしょうか?

 サイドに斜めに走る、ただ入れただけのキャラクターラインや、ゴテゴテして無駄なラインの多いフロントマスク。そのやりすぎちゃった感がユーザーに敬遠されたのだと思います。このクラスのユーザーが保守的なのは、セレナが売れ筋なのからも想像がつきますが、何より奇抜なマツダのビアンテが全く駄目なのでも証明していると思います。

 そう言う意味では、新型は水平基調な綺麗なデザインで、ホンダらしくは無いけれど、及第点なデザインだと思います。ただ、そのままではあまりにもセレナに見えると思ったのか?無理して先代やビアンテの反省を生かせてない点もちらほら。先代程ごちゃごちゃしていないものの、プレスラインに関係無くヘッドライトにグリルが食い込んで来るフロントマスクはいまいち。

 リアもこれだけプレーンな箱型デザインにしたのなら、Dピラーはボディ色ではっきりと有った方が良かったのでは無いでしょうか?サイドからリアへガラスが繋がったようにデザインされてるのはビアンテと同じで不吉ですし(笑)、何よりデザインにもう少し勢いが有る車に(むしろ先代の方が似合いそう)採用すべき手法です。

 デザインについての話しが長くなりましたが、乗って触っての印象を。運転席。広い広いと言っていても、相変わらずだなぁと思うのが5ナンバーミニバンの運転席足元空間。これ指摘するユーザーって居ないんでしょうか?右側はパワーウィンドースイッチに、左側は中央コンソールBOXに挟まれて、狭くて仕方有りません。このサイズのミニバンはママが運転の役目なんでしょうか?成人男性のサイズ(身長でも体重でも)だと必ずどこかに足が当たると思うんですけど。

 インパネ等の質感はホンダのがっかりな方の質感。黒内装だと特に安さ全開です。つーか、最近のホンダ車内装はもっぱらがっかりな方の質感が多いですが。宇宙船デザインやらない時のホンダは本当、プラッチック丸わかりで安っぽく見えます。

 逆にそんなコストダウンの意識の現れが面白い方向で出てる点が2点。左側フロントタイヤの死角を、フェンダーに無様に飛び出した小型ミラーで無く、CCDカメラを埋め込んだわけでもなく、単純にミラーをAピラー根本とドアミラー基部に埋め込んだだけで解決したアイデアは秀逸。

 同じく3列目シートを畳む際に、最後の一たたみを磁石とマジックテープでやってるのも面白い。通常なら成形したプラッチック部品でパチンと止めるのだろうけど、そうすると部品精度が低いと低級音が出やすいところ。それをローテクなアイデアで解消。畳む一手間増えるけど工夫が現れていて好感触。

 全体的な印象としては可も無く不可も無く。その辺りが最初に書いた、ホンダらしく無くてセレナに見えちゃう要因かと思います。この程度の仕上がりでは、大ヒットってのは難しいんじゃないでしょうか?ま、日産も立て続けにモデルをヒットさせるようなメーカーでもないので、次はそろそろトヨタがノア/ボクシーで全部持ってっちゃうんでしょうかね?

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)3

ミラココア(09.10.19記)

 日本の軽自動車を牽引するダイハツとスズキ。今までに記してきた文章からもわかるように、筆者は断然ダイハツの姿勢を評価しています。スズキの姿勢に関してはラパンの項を見て頂ければ解ると思いますが、筆者はユーザーを軽視しないダイハツの開発姿勢に好感を持ってきたわけです。しかし実はダイハツ。ここ数年毎年1台以上の軽自動車をリリースし続けています。ざっとさかのぼっていくと、08年8月にムーヴコンテ。07年12月にミラ、10月にムーヴラテ。06年10月にムーヴ。05年12月にエッセ・・・さらに殆どのモデルにカスタムと言ういかつい仕様も準備してたりするわけで、その膨大な車種を把握しているユーザーが一体どれほど居るでしょうか?

 そして軽自動車の規格を守りながら、快適な空間を生み出さなければならないと言う事で、エッセ、コペンを除くモデルは全てハイト軽と言っても過言では無い状況です。そんな中新たに投入されたのがこのミラココア。またもやハイト軽でちょっと可愛い方向を向いた車です。ちなみに来年にはタントエグゼと言うモデルも控えていて、ハイト軽乱発の状況はまだまだ続きます。

 冷静に考えれば毎年毎年同じような車を新規開発しているわけが有りませんから、基本的にどの車もみんな一緒です。毎年マイナーチェンジをしながらドンガラだけすげ替えている状況。いくら今まで軽自動車が売れ続けているからと言って、そしてスズキほど安普請な作りでは無いにしろ、とても健全な状況とは言えなくなっています。

 実際にディーラーで見たココアにもなんの感想も抱きませんでした。どこかで見たスタイル、どこかで見た内装。そしてどれも同じような性能なのでしょう。この「どこかで見た」と言うのが、まだ他社の影響を受けたと言うのなら救いが持てますが、明らかにこのどこかで見た感は、つい最近のダイハツ車で見た「どこかで見た」なのです。

 ダイハツはスズキのアルトラパンが堅調に売れ続けているのが羨ましくて仕方が有りません(そう言うスズキはタントが売れてるのが羨ましいのですが)。あまり開発費が掛かっていないのに、モデル末期でも、変わり映えのしないモデルチェンジ後でも、同じように売れ続けるラパンのようなモデルを自社でも持ちたいわけです。

 その為ちょっと女の子受けしそうなモデルを色々開発しているのですが、どれもラパンにはかないません。スノッブな可愛さを目指したエッセは安っぽすぎて受けず(でもこれに乗ってる女性は可愛くセンス良く見えますけどね)。ミラの高級おしゃれ版のジーノは、中途半端なBMWミニのぱくりっぷりが受けず、だったらとムーヴを思いっきり可愛くしてみたラテも、そのあざとさを女性達に気づかれて受けませんでした。

 どうにもダイハツのセンスと日本女性のセンスはなかなか上手くシンクロしないようです。そして今度こそと投入したのがこのココアなんでしょうけど・・・これも駄目でしょ(笑)。フィアット500から頂いてきたフロント周りはジーノのような浅さを感じます。ハイト軽特有の四角い箱のエッジだけを落とした安直な丸さは、ラテの匂いがします。そしてハイト軽なのに上窄まりな台形フォルムはエッセのリアスタイル。

 見事に失敗作の寄せ集めです。そう言う細かなディティール以前に、どうしてダイハツの考える女性向け車とは、丸くてコロコロしたような車なのでしょう?いったいラパンのどこを見れば、こう言うスタイルになるのでしょう?ラパンは決してコロコロ丸くはありません。優しいラインで包まれていますが、基本は直線基調なクリーンなフォルムをしています。

 ダイハツとスズキは、お互いの商品をパクりパクられなライバル関係です。それがデザインのパクりな事も有れば、コンセプトのパクりな事も有ります。そこまでお互いの商品をよく研究しあっていながら、どうしてラパンのパクりだけは上手く出来ないのでしょう?根本的にダイハツのデザイン陣というか、経営陣は「女性向けの車」と言うモノを捉え違えてると思います。今まで連発してきたような女性向けの車では女性の心は揺れません。

 そんなわけでココアもただ4年作って、モデルチェンジは無いと思います。こんなの出すぐらいならエッセのおしゃれ高級仕様を投入した方が遙かに売れるでしょう。ダイハツのデザイン陣は本当に駄目だなぁと思ってたら、東京モーターショーに出品されるコンセプトカーに「バスケット」と言うのがありました。これだよこれ。オープンなのは置いといて、こう言う方向性が女性が可愛いと思うスタイルでしょう?駄目なのはゴーサイン出す経営陣の方と判明しましたよ(笑)。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)2。

レクサスHS(09.9.10記)-試乗済み-

 ビスタ店を廃止してまで立ち上げたトヨタのレクサスチャンネル。まだレクサスになる前の価格帯がユーザーの記憶に有る為か(アルテッツァ→IS、ハリアー→RX)、はたまた商品としての魅力が劣るのか?、欧州高級車のブランド力にはかなわないのか?なかなかトヨタの思うようには売れていないようです。

そのレクサス。元々ラインナップにハイブリッド車は揃えていましたが、今回遂にハイブリッド専用車としてこのHSを発表。発表以来HSは、プリウスが減税終了時期までに納車されないと解ったお金持ちなユーザーの乗り換え効果で、レクサス始まって以来のヒット車種となりました。

と、現状はウハウハなレクサスHSですが、なかなか前途洋々とは行かないようです。既に多くの媒体に掲載されていますが、このHSのトヨタ版が「サイ」と言う名で11月にも発売されるらしいからです。プリウスとHSは同じプラットフォームを使っていますが、それでも明確に、排気量や価格帯、仕上げ等で別のクラスの車と棲み分けが出来ています。

しかしどうやらサイとHSはパネル類も共用する兄弟車で、シルエットや内装骨格もほぼ同じ車。となると、単純に仕様の差が価格の差となるわけですから、レクサスの作り込みや過剰な装備を必要と思わない人は、HSではなくサイを選ぶようになるでしょう。

レクサス店が出来てから、筆者の足はなかなかディーラーに向かいませんでした。事前に漏れ伝わってきた情報などから敷居の高さを感じてしまい、買いもしないのに(買えないのに)車を見に行くことに気後れしてしまったのです。以前のようにトヨタブランドであれば、セルシオであれアリストであれ、アムラックスに行けば実車を心おきなく見れたのですが、レクサスになってしまうとアムラックスにはLSもGSも展示されません。

 ベンツやBMWも高級車ディーラーですが、輸入車だからと言う免罪符も有りますし、最近ではAクラスやミニなど手頃な価格の車も扱うようになったので、それほど敷居の高さを感じません。国産車なのに敷居が高い。その辺りがレクサスの販売が伸びない要因の一つでは?と思います。

 そんなわけでレクサスディーラーに行くには、いつもそれなりの覚悟が必要なのですが(笑)今回のHSは、筆者ぐらいの年格好の人間が見に行ってもおかしくないクラスなので、発表時の混雑が収まった頃を見計らって見に行きました。

 外観の印象は写真等の印象通り、やはりずんぐりむっくりしていてレクサスブランドと言うよりトヨタ車な感じ。顔つきやモール類の気の配り方でなんとかレクサスっぽくしてますが、シルエットだけ見るとプレミオ/アリオン系の臭いがしてしまいます。この辺りもトヨタブランドのサイに引っ張られている感じがします。

 中に入ってみると、そこはレクサスな仕上げの高級感。革の使い方、ステッチの入れ方等、チリの合い方にのみ拘ってる大衆車には出来ない仕上がりです。ただここでもトヨタな臭いは見え隠れします。オーリス→プレイド→プリウスと無理して使ってきた、運転席と助手席を分断するインパネが、このHSでも使われています。それでもインパネから肘掛けまで繋がっているのはなんとか止め、幾分圧迫感は軽減されましたが、本当この基本仕様を決定したデザイナーは猛省してもらいたいところです。

 試乗を勧められたのでほいほい乗ってみます。短い試乗コースですので、たいしたことは言えませんが、個体差なのか、レクサス仕様で他が静かすぎるからか、プリウス試乗時にはあまり感じられなかった、回生ブレーキ作動時の音が結構目立つなと言う印象です。乗り心地に関してはプリウスでも十分な仕上がりだったうえに、それより車重の重いHSですから。一般ユーザーが使う範囲では十分心地好い乗り心地と言えるのではないでしょうか?

 現状ハイブリッド専用車は、インサイト、プリウス、HSしか有りません。これら3車は微妙にクラスが違いますから、それほどお互いを食い合うこと無く売れ続けています。インサイトとプリウスではハイブリッドの考え方からして違います。筆者はプリウス圧勝だと思うますが、価格帯やサイズ、アンチトヨタ、デザイン、色々な判断でインサイトを選ぶのも解ります。

 プリウスとHSはハイブリッドの考え方自体は一緒ですが、クラスにしては安っぽいプリウスの仕上げと、レクサス仕様でそれなりにお金を掛けたHSでは、これまたクラス以上の差が開いていてユーザーが迷うことは少なそうです。しかし今後トヨタに投入されるサイとの間には、それほどの差が無いのは明らかです。そうなった時にユーザーはHSを選ぶでしょうか?

 上記したようにレクサスに敷居の高さを感じているユーザーは多いはずです。この不況下だからこそハイブリッド車が売れているのに、同じ車の高い方をわざわざ買いたがるユーザーがそれほど居るとも思いません。筆者にはHSのヒットはつかの間のバブルとなって、レクサスディーラーを苦しめるような気がしてなりません。何より今HSを購入したユーザーに、ほぼ同じ形で価格もぐんと安いサイが出た時にどう言い訳するのでしょう?

 HSは車としては良く出来ていると思います。ですがレクサスで売る車なら、明確にトヨタ車と作り分けるべきではないでしょうか?プラットフォームを共用しても、ドンガラのデザインはレクサスオリジナルであるべき。作り込みや仕様だけでなく、目で見てトヨタと違うと解る部分にも「レクサス代」は掛かってるはずなのですから。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)2

スカイラインクロスオーバー(09.8.23記)

 R34型からV35型へのモデルチェンジで、日本国内の頑固なスカイラインファンを切り捨てた日産が、またもや多くのスカイラインファンの反発を買うであろうモデルを投入。それがこのSUVとクーペのクロスオーバー車。その名も素直にスカイラインクロスオーバーです。

 V35スカイラインは日本のスカイラインファンを切り捨てる事により、インフィニティGシリーズとして北米で大成功を納めました。この成功によって、ブランド消滅の危機を乗り越えたわけですから、日産の判断は間違っていなかったわけです。R34型の7万台の生産台数が、V35では20万台以上になったのですから文句のつけようが有りません。

 ただ、適度なサイズのスポーツセダンとしてのスカイラインの姿はもはやどこにも有りません。V36型になってサイズ的にも価格的にも、スカイラインは高級スポーティーセダンにクラス替えしてしまいました。もはや旧来のスカイラインファンが買う車は日産のどこにも有りません。

 そんなスカイラインファンの傷口に塩を塗り込むような車クロスオーバー。「スカイラインなのにSUVって・・・」肩を大きく落としてがっくし来ているスカイラインファンが目に浮かびます。そんなファンの人達には申し訳有りませんが、V35スカイラインに続いて、このクロスオーバー発売に関しても、筆者は肯定的です。

 世界的に車の「スポーツ」の捉え方は大きく変化して来ています。それまで、早くて良く曲がり良く止まる車が「スポーツカー」だと思われていました。これは言うなれば、野球やサッカー等、スポーツ競技そのものをしている人を「スポーツマン」と言っているような状態です。

 しかし時代は変わって来ました。山登りをしたり、自転車で走る人も、今の感覚では充分に「スポーツマン」です。競技をしていなくても、何とも競っていなくても「スポーツ」なわけです。そう言う価値観で言うと、SUVも今の世ではおおいに「スポーツ」と言えるでしょう。その車に乗る事によって、心身ともにリフレッシュ出来健康的になれる存在、それが今のスポーツカーなのだと思います。

 しゃちほこばってタイムばかりを競い、乗り心地や快適性を犠牲にするストイックなスポーツカーも有りですが、今の世の中的には、健康的な心身を維持出来る心地よい車。それもスポーツカーなわけです。そういう考えで見れば、スカイラインクロスオーバー。実に良いタイミングで出て来た良い車だと思います。まったく、スカイライン=スポーツのイメージを崩す車では有りません。

 と言うわけで好評価がこの後、つらつらと書かれるかと言うとそうでは無いのです。評価をしているのは、そのポジショニングと言うか記号としての存在です。現状の日産の売り方では、残念ながらこの車あまり評価出来ません。

 せっかくの良い企画にも関わらず、日産が基本的にこの車を売る気が無いと言う点。元々V36スカイラインは(ちなみにクロスオーバーは同じプラットフォームを使ってますが、形式はJ50型になります)価格帯がかなり高い車ですが、このクロスオーバーには3.7Lエンジンの搭載車しか無く、廉価版のようなモノが存在しません。高級イメージで売りたいのかも知れませんが、本来こう言うクロスオーバー車を好むのはどちらかと言うと若い世代で、それにはせめてセダンと同じく2.5Lエンジン搭載車が欲しいところです。

 かねがね日産には、この搭載エンジンの設定に一般ユーザーとのズレを大きく感じます。日産としては高品質なエンジンを安めに投入しているつもりなのでしょうが、車というのは買ったら買いっぱなしで済むものではありません。毎年毎年税金がかかるのです。つまりいくら大きなエンジン搭載車を安く手に入れても、毎年その排気量分の税金を取られると、決してユーザーの財布には優しく無いわけです。

 一般ユーザーの常識的排気量はせいぜい3.0Lまででしょう?これでも自動車税は51000円取られてしまいます。なのに日産は3.5Lエンジンで性能的に満足出来ないとなると平気で3.7Lエンジンを搭載したりします。そのわずか0.2Lの為に8500円多くユーザーに出費させるわけです。どうして技術的に頑張って3.5L内で満足出来る性能のエンジンを作らないのでしょう?

 スカイラインクロスオーバーの自動車税は3.7Lですから66500円です。毎年毎年この金額を取られて行くわけです。もし2.5L搭載車が有れば自動車税は45000円で済みます。日産は高級車を買う人はそんな事は気にしないとでも考えてるのでしょうけど、前述したようにクロスオーバー車を好むような若い層には、この差は実に大きな金額です。これだけとっても日産がこの車をあまり売る気がないのが想像出来ます。

 車としての仕上がりは大変評価出来ます。V35からV36になった時に、北米での台数が見込める分お金が掛けられてるのがよく解る品質と記しましたが、このクロスオーバーはセダン以上に高品質な内外装に仕上がっています。元々インフィニティEXとして開発されたので、スカイラインとは殆どパーツを共有しません。インパネのデザインなんかも実にバタ臭くて独特な高級感が有ります。後席やラゲッシスペースがサイズの割に狭かったりしますが、前記したようにこの手の車を好むのは若いユーザーでしょうから、その点はあまり問題にならないでしょう。

 今の若い世代は車に興味が有りません。車が好きと言う人でもセダンと言うボディ形態を好む層は少ないようです。でも高級SUVやクロスオーバーと言う形態は世界的に人気があるわけです。だったらそれらに憧れる若い世代が、なんとか背伸びして買えるような価格設定、排気量にどうしてしないのでしょう?本当日産のマーケティングには疑問が残ります。

 この車が売れる事によって、クロスオーバーからスカイラインのイメージが好転する可能性だってあるわけです。旧来のスカイラインファンを切り捨てたのなら、どうして新しいスカイラインファンを育成しようとしないのでしょう?スカイラインクロスオーバーは、充分そのきっかけとなりうる車なはずなのに、つくづく勿体なく思います。

 と言うわけで、車としての出来はなかなか。コンセプトも良し。何よりこの車を「スカイライン」として出した事はおおいに評価しますが、3.7L一本で、まるで台数売る気無い日産の姿勢に大きくがっかりな印象です。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)3(好)

アクセラ(09.8.12記)

 国内ではそれほどでも無かったものの、海外ではヒットモデルとなり、マツダの屋台骨を支えるモデルとなったアクセラ。実にマツダ車の1/3がアクセラだと言う事で、マツダとしても気合いの入ったモデルチェンジになったと思います。

 先代がヒットモデルだったのと先代のプラットフォーム流用という事で、デザインはキープコンセプト。特に5ドア後ろの印象は、詳しく無い人が見ればどちらが新型か区別がつかない程。先代でもサイズの多くがデザイン代に使われて、大きく張り出していた後部バンパーは、新型はそれ以上にアグレッシブなデザインの為にサイズを使っています(クラッシャブルゾーンと言う解釈も出来ますが)。

 ただアクセラのメインマーケットの欧州では、このクラスの車は皆大型化が進み、以前の欧州車の「煮詰められた室内空間」のようなモノはあまり感じられなくなってます。大きなサイズを、安全性やデザインの為に贅沢に使うというのが主流のようなので、その流れに従うのは仕方の無い事かもしれません。

 RX-8以降のマツダのデザインは、攻撃的でエグいデザインながら、割合抵抗感少なく「格好良い」と思えるうまいデザインが続いていると思います。街を走る台数自体は、トヨタ日産ホンダに比べて少ないでしょうが、明確にマツダのデザイン、マツダの顔が一般に浸透して来ていると思います。五角形グリル定着に失敗したホンダ、顔がコロコロ変わって迷走しているスバルあたりは、ブランドイメージ構築という意味でお手本にして欲しいところです。

 このアクセラ。アイドリングストップ機能のついている2.0Lモデルベースグレードの値段は、例の189万円です。インサイト、プリウスEXと同じ値段にしてあるわけです。多分この価格はマツダが当初想定していた価格より安くなってしまったのでしょう。新型プリウスの内装が安っぽいのと同じように、アクセラも内装色が黒一色で選択肢が有りません。色数を押さえるとどれぐらいコストが軽減出来るか解らないのですが、5万円アップぐらいで2色ぐらい室内色選べるように出来ないのでしょうか?

 質感自体は最近のマツダクオリティ。安っぽくは無いですけどそれなり。普通ならそこを色味でカバーするんでしょうけど、残念ながら「黒」はシボの深さやプラッチックの安っぽさが伝わりやすく、一番質感がバレやすい色。デザイン自体は外観に合った格好良いものだけに、ちょっと惜しい感じがします。

 と言うわけでこのデザイン。先代のアクセラを憎からず思っていた人には、より格好良く見えるんじゃないでしょうか?モデルチェンジとして成功していると思います。ただ、日本で使うには幅が広すぎるとか、前後ももう少し小さく出来るだろ?とか、サイズ面での不満はありそうですが。そう言うデザイン、サイズの問題以外で言うと、エンジン、ATの組み合わせがもう一つでしょうか?

 アイドリングストップがついている2.0LのATが5速ATしかなく、1.5Lの方は7速CVT。素人考えでは全車CVTの方が燃費にも良いんじゃないの?と思いますし、1.5Lにもアイドリングストップを付けて欲しいと思うのは、誰もが考えている事だと思います(エンジンのスムーズな始動には直噴エンジンが理想なので、直噴では無い1.5Lにはつけて無いそうですが)。

 あと、実際の販売比率でセダンは3割、その殆どがビジネスユースという事で、近所のディーラーどこにもセダンが置いてませんでした。先代からデザインとしてのまとまりは、セダンの方が良いと思っていたので、セダンが見れないのはなんとも残念。こんな所にも189万円の影響が出てるのでしょうか?

 総じて、ハイブリッドでもコンパクトでもない今の日本では売りにくい車としては良く出来ていると思います。今のところ販売比率では、アイドリングストップの付いた2.0Lより1.5Lの方が人気だという事です。と言う事は、やはり必要な組み合わせは1.5Lにアイドリングストップ付き。そうすれば価格的にもハイブリッドと比べてアクセラを選ぶユーザーも増えそうです。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)3 (好)

プリウス(09.7.26記)-試乗済み-

 さて発表前から多くの予約を確保していたプリウス。発表後はその勢いにも加速がつき、今注文しても年内どころか年度内の納車も難しそうと言う、近年ではあまり見なかった大ヒット車となりました。いつものように試乗したい車は、発表後しばらく経ってから見に行って、本当に買おうとしている人に迷惑をかけない。そんな訳で今更なプリウスレポートになります。

 そもそもホンダのインサイトが、プリウス潰しの為に戦略的な価格で発表されたのが、今にして思えば逆に良い宣伝となった形です。インサイトの登場、価格により、多くのユーザーの中に「ハイブリッドカー」と言う選択肢が生まれ、そこに当初想定されていた価格より大幅に安く、さらにインサイトより確実に良い性能のプリウスが出たのですから、補助金など無くてもヒットは約束されていたようなものです。

 展示車でまず外観デザインを確認します。事前に写真等で見ていた印象では、2代目とあまり代わり映えしない言うものでした。しかし実車の印象は、 2代目よりは格好良くなってるなと言う印象です。筆者は初代プリウスのデザインを気に入っていたので、正直凡庸な2代目のデザインにはあまり魅力を感じてません。

 それに比べると3代目は幾分マシになった感じですが、それでも同じようなフォルムをしてながらインサイトの方が、はるかに車として格好良い形をしていると思います。初代はハイブリット車として「意識」される事に意味が有ったので、あの当時の国産車の中では「違和感」を感じるデザインで、2代目以降はハイブリッド車として「意識」されないように、凡庸なデザインを選んだのでしょうが、そもそも車としてあまり格好良い形だとは思いません。

 ドアを開けて座ってみると、多くの方が感じてるようにセンターコンソールが大きく、室内空間を狭く感じさせます。プリウスはプラットフォームをオーリスと共有しているらしいので(欧州向けオーリスにはハイブリッドが設定されるようです)、このような造形になってしまうのは仕方無いのでしょうが、スープラを思わせるような狭い包まれ感は、ファミリーカーの前席として有り得ないと思います。

 もっともこのレイアウトはトヨタ自身も失敗だったと考えているようで、同じプラットフォームを使っているレクサスのハイブリッド専用車HSでは、コンソールが途中でぶった切られ、狭っくるしさが幾分軽減されているようです。

 質感自体はトヨタ車としては、はっきりと安っぽいと言えるレベルです。インサイトの価格を知って急遽コストダウンしたのか、ちょっと残念な仕上がり。一番解りやすいところでは、エアコンの吹き出し口から横に銀色のラインが走っているのですが、これが只の塗装で済まされています。このようなデザインにするなら、やはりここはメッキで有りたいところでしょう。

 また今回、動作環境等を表示するモニターがかなり小さくなってしまいました。その上表示の色合いが薄くて、意識して見ないと現状を瞬時に判断出来ません。トヨタとしては、普通に乗って貰って充分燃費良く走れると言う意味で、あえてインサイトのような目立つ表示にしなかったんでしょうけど、見やすさ、楽しさを考えるとインサイトの方が良いと思います。

 この表示部の考え方は、外観デザインが初代〜3代目でどんどん違和感のないものになって行くのと同じく、トヨタはモデルチェンジ毎に、プリウスの「特別な車」感を消そうとしていると思います。逆にホンダは、シビックで普通の車にハイブリッドシステムを搭載して認知されなかった反動か、インサイトは「ハイブリット専用車で特別な車」で有ろうとしています。ハイブリッドカーとしての考え方自体は、インサイトの方が普通のガソリン車の延長で有ろうとしているのに、なんだか面白い逆転現象だと思います。

 室内空間自体はインサイトは当然、先代よりもはるかに後席が座れるようになっています。大体先代の、横から見た時に高さの頂点がルーフの真ん中に来るデザインは、誰がどう考えても、中で座る人間の事を考えて無いのは明らかだったので、今回の頂点が後席側に寄ったのは当然の変更だと思います。

 さてさて、では試乗した印象はと言うとどうでしょう?

 2代目の時も、初代と比べた印象として「全く普通の車」とつづった記憶があるのですが、それ以上に「普通の車」です。エンジンがどこで始動しているのか、ぼんやりしていると全くわかりません。乗り心地も先代の変な足回りの設定とも違いますし、インサイトの固い乗り心地とも違います。普通に運転していてさほど不満のでない乗り心地だと思います。全体的に、注意していないとハイブリッドカーだと意識させられる点はほとんどありません。

 インサイトはアイドリングストップからエンジンが掛かる時、明確に解ります。また低燃費を叩きだすには、それなりの運転テクニックが必要です。始終インパネが青かったり緑だったりしているので、どうしてもエコ運転をしなきゃと強迫観念を抱きます。もちろんプリウスもテクニックを使って運転した方が燃費は良くなりますが、インサイトほどしゃかりきにならなくても、車自身でそこそこの燃費を出してしまうでしょう。

 車としての出来の差はそれぐらいあるという事です。ホンダはそこを逆手に取って、コーチング機構をつけて、エコ運転を意識的にする事に楽しみを見いだしてもらおうとしました。それによって、プリウスに完敗な燃費にユーザー自身にの努力によって少しでも迫ってもらおうとしているわけです。これは2番手メーカーとしては大変賢い、逞しい戦略です。

 対してプリウスは、普通に乗ってもらって低燃費なんですから、少しでもハイブリッドカーとしての違和感を消そうとしています。3代目プリウスはそう言う意味で、また一歩普通に乗れる車になりました。何もしなくてただ渋滞に巻き込まれているだけでも、燃費が良いんですから言う事有りません。

 結論として3代目プリウス。人に勧めるのになんら迷う点はありませんでした。今買って何年か乗ってもリセールバリュー良いでしょうし、その間に大きな技術的変換が無い限り乗り続けても問題無いでしょう。唯一の不満は、大きくせり出したセンターコンソールと、安っぽい室内の質感のみです。あ、内装色もつまらないかな?これだけ売れてるのですから、質感と内装色はマイチェンでどうにかなると思います。へそ曲がりで無い限り、インサイトよりプリウスだと思います。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)3

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