11年上半期の新車チェック評

過去の新車チェックのポイントはあくまでも発売当時のポイントなので、今現在の国産車デザイン通信簿のポイントとは一致しません。

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1-貰っても乗らない。2-格好悪いです。3-普通。4-知り合いが乗ってたら嬉しい。5-今すぐ欲しい。

MRワゴン(11.5.14記)

 車自体はずーっと前に見ていたし、セールスのおねーちゃんがスズキなんかで営業やってる割には、ちゃんと車好きそうで勉強してて可愛かったので、色々印象に残ってたんだけど、なんか書き忘れていて今頃(笑)。

 そもそもこのMRワゴン、コンセプトカーではその名の通りミッドシップレイアウトのワンモーションフォルムだったモノが、初代市販車ではデザインと名前はそのままにワゴンRベースのFFでデビュー。2代目はダイハツムーブラテのヒットが気になったのか、大きく方向性を変え、いかにも男が考えそうな女性向き可愛いデザインと、散々迷走しつつも日産がモコ名義で台数を売ってくれるので無事3代目のデビューとなりました。

 3代目は2代目のあざといまでの可愛い路線は止め、どちらかというとキューブ系の四角いながらもエッジを丸めた可愛さで、購買対象を広げた感じです。フロントもさすがに3代目ともなると、モコとの造り分けも巧みになってきて、ボンネット、バンパー、ライトのみの交換でかなり違う顔に見えます。現行キューブがもう少し売れていれば、小キューブな顔になったらしいですが、モコはグリルがしっかりついてコンサバ。MRワゴンはグリルレス風で好き嫌いが分かれそうです。筆者はMRワゴンの方が好みですが。

 この車のハイライトは内装。ドアからホワイトパネルでラウンドした流れの中に黒い硬質なパネルが浮かび上がる、軽自動車とは思えない手が込んだデザインです。日産が3倍ぐらい売ってくれるので、思いっきりお金が掛けられるのかも知れませんが、スズキは本当、こういう派生車種ではなく、基幹車種にこれぐらいお金を掛けて欲しいです。

 その黒い部分はオーディオなどがタッチパネルで扱え、その操作感は大変スムーズで、これまた今までのスズキ車らしくない優れた仕上がりです。ショールームでこれに触れたら、そのままやられちゃいそうなお客さんもいるかも知れません。

 ただクオリティはさておき、このデザインは明らかにアップルiphone/ipad辺りの影響をもろに受けているわけです。あちらがフットワーク軽くモデルチェンジ出来るのに対して、車は5年はこのままのデザインな訳です。数年前に出たアップルの真似をしたモノが今出たわけですから、このデザインがそう遅くないうちに古く感じるようになるのは明らかです。

 そうなっちゃうとこれが売りなのはちょっと厳しいかも知れません。もちろん先代よりボディデザインははるかにマシですし、実用性も最新のハイト軽なので問題はないでしょう。さらに今まで何やってたんだな、16年ぶりの新開発エンジンも搭載なので、車としての実力が数年で陳腐化するわけではないのが救いです。

 むしろこのMRワゴン、10年20年経ってから味が出るのでは?と思います。時代の最先端を走ってる風のデザインというモノは、それが過ぎ去ってしまえば途端に輝きを失う可能性があります。でもそこからさらに時間を経ると、その最先端感、未来感が「来なかった未来=レトロフューチャー」として処理されたりします。

 80年代のデジパネ、サテライトスイッチな運転席周り。あれが妙に格好良く感じてしまうのもレトロフューチャーなわけです。このMRワゴンも20年ぐらい経って乗っていると、同乗者にちょっと感動されるような車になるんじゃないでしょうか(その頃もまだガソリン車が走れてるかはわかりませんが)?

 一つのプラットフォームから、毎年のようにホイホイと新型車が出てくる軽自動車世界はおかしいと思います。もっと一台に全てを注ぎ込んだような車を出すべきだとも思います。でもこういう思わず作っちゃったと言うような、走りすぎた車は正直楽しいです。現状普通車でこういうチャレンジは出来ませんから、自由にやれる軽自動車はうらやましい限りです。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)3

セレナ(11.3.24記)

 4代目セレナの発売は昨年の11月。最近試座期が遅くなっている傾向を加味しても明らかにほったらかし感が漂っています。おっさんで独身なおいらが、車のターゲットとずれているのでディーラーに行きにくいとか、だったら本当に買いたい人たちが殺到しているであろう発表直後は遠慮しておこうとか、1ヶ月経ったしそろそろ良いかなと行ってみたら既に展示車が減らされていて実物無かったりで、こんな時期になってしまいました。

 元々前方視界を遮るような車が大嫌いなおいらですから、基本的にミニバンと言う存在を認めてません。さらに日産の「子供の奴隷」感漂うCMも大嫌いです。子供のご機嫌を窺うためにミニバンの運転手を買って出て、子供は後ろで大はしゃぎ、あるいは目的地までDVD鑑賞で大満足。帰りは家まで爆睡と、その間ずーっと子供の下僕として仕えているなんて、本当に現在のお父さんの草食系ドMぶりにはがっかりです。

 そんなわけでミニバンに対する興味は、車好きを自称するには厳しいほど無いのですが、先日も友人の旧型セレナを「ステップワゴン」と呼んでしまう失態を犯してしまいました。とは言えそのセレナは、オプションか何かでグリルに日産マークが無く、さらに色もステップワゴンに良くある色で、頭の中に有るステップワゴンそのままな佇まい。例えセレナだったとしても、「ステップワゴンがヒットしてたのでステップワゴンにそっくりな仕様にしました」なのだから、ステップワゴンに間違えられて本望でしょう?

 かように現在のステップワゴンとセレナは似通った車だと、自らの失態を元に言い張りたいわけです(笑)。元々このクラス中型ミニバンは、日産とトヨタが、MRレイアウトのセレナと小エスティマを展開していた中、FFベースの広大なスペースを持った、箱形で道具感が心地良いステップワゴンを投入して、一気に主導権を握ったわけです。

 ホンダが2代目をキープコンセプトで発表して守りに入ると、日産は2.3代目をとにかくステップワゴンにそっくりな箱形道具感漂う車としました。これが大当たりをし、トヨタがノアとヴォクシーに車名を分けていた事もあり、一躍このクラスのベストセラーカーとなります。ホンダはこの失態を2代目がキープコンセプトで守りに入ったせいだと分析し、3代目は思いっきり全高を低くし、サイドにくさび形のキャラクターラインを入れた攻めのモデルチェンジを行います。

 しかしこれもいつものホンダの展開と同じく、多少は盛り返したモノのセレナの牙城は崩せませんでした。それではとホンダが考えに考えて発売した4代目は、セレナを徹底的に研究したセレナそっくりのモデルと言う、ミイラ取りがミイラになったかと思ったら、そのミイラがミイラ取りになると言う、複雑な展開を経て、結局セレナとステップワゴンはよりそっくりな車となったわけです。

 そんな中出た4代目のセレナは、ヒットモデルゆえに見事にキープコンセプト。アイドリングストップがついたのが時代性ですが、王道中の王道で実にセレナらしい車に仕上がっています。多少フロントバンパーなどに道具感より、色気が見られるのが心配ですが、先代モデルは通常仕様よりハイウェイスターの方が売れていたるとのことなので、この程度の色気は問題ないとの判断なのでしょう。

 サイドもリアも頭の中に有るセレナそのものなライン。ここまでキープコンセプトだと、2代目ステップワゴンのような失速が心配になりますが、基本的にコンサバなのがこのクラスのユーザーの上に、前記したようにステップワゴンも物凄くセレナな車。ノア、ヴォクシーを含めて、4強体制が続くんじゃないでしょうか?

 内装質感などはクラスなり。内装色の組み合わせは、黒と白で、珍しくグレーもベージュも設定が有りません。子供が暴れる車で白内装というのは、とっても攻めな発想ですが、イージークリーンシートと言うモノが採用されていて、汚れを簡単に落とせるらしいです(ただ子供が汚すのはイスだけでは無いんですよね)。

 実はメーカー曰くミニバンブームは既に終わっているそうで。その最後の砦がこの中型ミニバンクラスらしいです。早くこのクラスも終了して、目の前の信号がしっかり見える、背の低い車ばかりになったらなぁと思います(笑)。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)3

ヴィッツ(11.2.22記)

 昔トヨタのエントリーカーは、スターレットやカローラ2をただ漠然と安物車(一部スポーツグレードも有りましたが)として作っていたのですが、それを根本から見直し、トヨタの主力車種となるべく投入されたのが初代ヴィッツでした。いわゆる世界戦略車として、欧州でも通用するデザインと採用されたのはギリシャ人デザイナーの案で、確かにそれまでのスターレットのぺらぺらのデザインと比べて、非常に塊感のある、ある意味トヨタらしくないデザインで衝撃を受けました。

 その後初代ヴィッツは、多種多様のボディスタイル、用途で兄弟車を増やしながら見事トヨタの主力車種となり、また他社からもマーチやフィット、デミオがヒットすることにより、一躍日本車のスタンダードサイズはコンパクトカークラスとなることになります。そしてそんなヴィッツも今回のモデルチェンジで3代目となりました。

 初代モデルがヒットしたため、2代目モデルはキープコンセプトで少しだけ上質感を加えたデザインとなりました。当時既に兄弟車として、ヴィッツより安物なパッソがデビューしていましたから、その棲み分けの上でもこの戦略は妥当で、デザイン上もどこから見てもヴィッツに見えるけど、先代よりちょっと良さそうという雰囲気を上手く出していたと思います。

 そして3代目は、2代目のデザインの評価がちょっと女性より過ぎるとの反省から、男性が乗っても恥ずかしくないようにスポーティーな要素を加えたデザインとしたらしいです。初代から2代目がそうであったように、この3代目のモデルもパッと見ちゃんとヴィッツに見えます。そう言う意味ではキープコンセプトの中にもキチンと新味は出ていて悪いデザインではないと思います。

 ただ初代、2代目が割合じっくりと練られていたデザインだったのに対して、3代目はなんか小手先のデザインというか、流行を追っただけのデザインとも感じられるのが残念なところでしょうか?エッジをつまんでその下を抉るという手法は、世の中に溢れかえっているので、このデザインが陳腐化するのは早いんじゃないでしょうか?(色は17色もあって素晴らしいです)

 内装の質感は初代以来の完全に割り切った、トヨタの安い方の仕様です。配色やシボのデザインでカタログ上は高品質に見えますが、実際に乗ってみるとプラスチッキーなヴィッツらしい仕上がりです。さらにハッチバック車なのにリアのトノカバーはオプション設定、フロントシートもグレードFでは今時ヘッドレスト一体型と(カタログではオプションの分離型の写真が使われてますが)、コストダウンの嵐に悲しくなります。

 ドアの閉まる音なんかは実にしっかりしていて、軽自動車や他社との差を明確に感じるので、この見るからに安っぽく感じる仕上げは非常に惜しいと思います。昔のトヨタは中身がチャチでも目に見える部分はそれなりに作っていましたし、子会社のダイハツの軽自動車の方が、ヴィッツよりしっかりした内装を作っています。欧州のこのクラスの車はドンドン品質が上がっていますから、ヴィッツもいつまでもこの仕様ではやって行けなくなるでしょう。

 最近流行のアイドリングストップに関しては、トヨタはあまりやる気無しって感じでしょうか?付けられるグレードがベーシックグレードのみでは、一応うちにも有りますよ的存在に過ぎません。やはり本命のヴィッツクラスハイブリッドが控えてる影響を感じさせます。

 結論としては、悪くもないけれど積極的にこれじゃなくても良いんじゃない?と言う感じです。なんか昔のトヨタ車っぽい評価になってしまいました(笑)。初代ヴィッツには有った「車を買う時に消去法でトヨタ車を買う。」そう言うトヨタ車的価値観を壊すようなインパクトは、この3代目ヴィッツには有りません。

 安さで考えれば軽自動車(維持費も含めて)が有り、広さで言えばフィット、デザインで言えばデミオ、仕上がりで言えばスイフトも有る。なのに残念ながら3代目ヴィッツには「これ」という指名買いさせるモノが感じられません。定番商品となったのでこれで良いのかも知れませんが、他国、他社はもっと攻めています。典型的日本企業が出す、典型的守りの1台にならないと良いのですが。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)3

ソリオ(11.2.3記)

 簡単に言ってしまえば、軽自動車パレットの幅を広げて小型車登録にし、5人乗れるようにしたハイトワゴン。先代モデルも同じようにワゴンRの幅を広げて小型車にしたものでした。モデルチェンジの間隔は5年半で、至極常識的なラインだと一見思えますが、ソリオという名前になる前に、ワゴンRソリオの時代が5 年有り、さらにその前にワゴンRプラスと言う名前で1年半。と言うわけで、実際には12年ぶりのフルモデルチェンジになります。

 たいして台数が売れるモデルでも無いので、減価償却に時間が掛かったのかも知れませんが、それにしても12年前の軽自動車の拡幅モデルを(この間にベース車のワゴンRは2度モデルチェンジしています)、数年毎に名前を変えて「新型車」として売ってきたスズキの厚顔無恥ぶりには相変わらずゲンナリします。ちなみにこの先代モデルのさらに前のモデルにあたるワゴンRワイドは、発表からわずか2年でモデルチェンジをして、購入したらすぐに旧型車になると言う、これまたユーザーガッカリな事をやってのけてます。

 まとめますと、「初代」ワゴンRワイド(2年間)→「2代目」ワゴンRプラス(1年半)→「2代目」ワゴンRソリオ(5年間)→「2代目」ソリオ(5年半)→「3代目」ソリオ(現行)と言う流れになります。以前にも書きましたが、スズキの小型車を買うようなユーザーは、車に詳しくない農家のじいちゃんなんかが圧倒的に多いわけで、そう言う人が数年毎に「新型車が出たので買って下さい」と、セールスの餌食になるのは本当に可哀想です。

 さらに同じスズキのお店では、ワゴンRソリオの顔を変えただけのモデルが、シボレーブランドのMUとしても売られていて、こちらはこちらで「アメリカGMとの共同開発のワゴンです」なんて事をいけしゃーしゃーと言って、シボレーブランドに憧れが有ったであろう、年配の人たちをだまくらかして売りつけてるわけです。

 全く持ってスズキの商売の汚さには呆れるばかりですが、肝心の車の出来はどうでしょう。今回はさすがに反省したのか、一応ベースの軽自動車よりホイールベースは伸ばしてきましたが、全幅は先代のソリオと変わらず。側面衝突の安全性を考えて、モデルチェンジ時に全幅の広がるモデルが多い中での現状維持は、12年分進歩した技術でクリアしたと考えるべきか、軽自動車程度の側突基準でお茶を濁してると考えるべきか、事故が起きてみないと解りません。

 そもそも軽自動車ベースの拡幅モデルという成り立ちも疑問です。たいしたモデルが無かった12年前ならともかく、現在のスズキにはスイフトという優れた小型車が有るわけです。どうしてスイフトベースでスペースユーティリティに優れて安全な車を開発しないのでしょう?結局「安く作れるし、このサイズの国産車はこんなモノで良いだろう」といういつものスズキの見切り、自社の利益優先の姿勢が貫かれてるわけです。

 一応この車としての最大の売りは、ベースグレードから電動スライドドアが採用されていると言うことでしょうか。確かに便利な装備かも知れませんが、そこにお金を掛けるのであれば、上記したようにベース車にお金を掛けて欲しいところです。室内スペースはベース車パレットより拡大されているので4人で乗る分には十分。ただ上記したように全幅はたいしたこと無いので、5人乗ると正直窮屈です。

 ホイールベースを延長したことにより、後席はスライドシートを後ろにすると広大な空間が広がります。しかし実用的なトランクスペースを確保する位置にシートを合わせると、後席ドリンクホルダーが使えないと言うバカ設計はベース車パレットと変わりません。

 と言うわけでソリオ。典型的な駄目な方のスズキ車です。駐車場の事情や道路の事情、かつ5人乗れないと困るという非常に限定した人だけの車です。それ以外の人は普通に軽自動車かフィットを買った方が良いでしょう。でもこのソリオ。三菱にも供給されるという話し。田舎の三菱ユーザーも、軽トラ愛用のお年寄りが多いんですよね、心配心配。「デリカの小さいのです」なんて騙されないようにしてください。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)2

ムーヴ(11.1.22記)

 初代はワゴンRのヒットを見て大慌てでミラベースで開発したため(ダイハツ曰く、ハイト軽の開発はしていたが、売れないと考えて中断していた)、姿こそハイトワゴンの形をしているものの、その着座位置等を見ても、ワゴンRの影響というよりミニカトッポを横目で見て開発していたのはありあり。2代目もドア周りなどを共有していたため基本構造変わらず。ようやく3代目から本気でワゴンRに挑むようになり、先代4代目は室内空間拡大を考えて、セミボンネットスタイルからワンモーションフォルムへと転身と大いに攻めの姿勢。

 と、ざっとムーヴの変換を辿ってみました。最初の志は低かったモノの、途中でトヨタからの本気出せ指令が出て以降は、あまりにもメーカー本位過ぎる開発姿勢のスズキより、ダイハツ、ムーヴに筆者は好感を持っていました。さて5代目となる今回はどれぐらい本気で攻めてくれるのかと期待していたのですが・・・

 うーん、それほどでも無い感じですかね(笑)?ホイールベース短縮という辺りを見ても、室内空間は兄弟車タントに任せれば良いやという感じ。室内デザイン自体も、先代の攻めすぎててなんでそんな形してるんだ?な、アーチ状のセンターメーターみたいな無茶はしてません。全体のフォルムも先代ほどのワンモーションフォルム感は無いです。

 やっぱりと言うか残念というか、売れている軽でも昨今の日本の縮こまったモデルチェンジの対象になってしまった感じです。特に外装デザインで残念なのは、リアからの眺めです。6ライトのサイドウィンドーの形を平凡な形にし、テールランプ上部をクリヤー処理にしたせいで、実にワゴンRと雰囲気が似てしまっていて、正直バッチ類を外してしまったらどこの車か解らなくなってしまいます。

 多分目に見えない部分でのコスト削減はもの凄くやってるのでしょうけど、パッと見の質感はそれほど下がっていません。直前に新型ヴィッツを見てきて、一段と進んだその安物感にびっくりしてきた反動も有るのかも知れませんが、どうひいき目に見てもヴィッツよりムーヴの方が質感が高いです。配色にしてもムーヴの方が安っぽく見えない色遣いをしています。

 全車プッシュ式のオートエアコンを標準装備としてるのも凄いと思いましたが、これはマニュアルエアコンで構わないので、もう少し他にお金かけれるところ有るんじゃないでしょうか(シートリフターとか)?最近流行のアイドリングストップは、実質その価格は2万円程度らしいです。これはスズキが10万円以上も乗っけてるのに対して、実に意欲的な価格設定です。

 総じて、今の時代らしいモデルチェンジだと思います。デザイン面は守りに入って面白くないモノの、中身はエコでそこそこ高品質。小型車の安っぽいの買うなら、維持費も安いですし値段はほぼ同じか、ちょっとこっちの方が高くても買う人多いでしょうね。ただなんかもう本当に家電化が進んで、車としての面白味とかはどうでも良い感じです。

 車の中で生活できるようなモノが一式詰まって、スーパーやパチンコ屋の駐車場でエンジン掛けっぱなしでカップルや親子がだべってるイメージ。車なんかこれで良い。10年乗ったら同じような軽をまた購入。これでは全く日本の未来に希望が持てません(笑)。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)3。

ラクティス(11.1.16記)

 ヴィッツベースのトールコンパクトカー。大元を辿るとファンカーゴから始まっているわけなんですけど、モデルチェンジの度に立ち位置が曖昧な感じになってる気がします。ファンカーゴはコンパクトカーとは思えないその広大な空間がキチンと売りになっていましたが、ラクティスに変わってからは、先代はトールコンパクトなのに走りが売りとか解らないことを言っていて、今回は先代よりも全高を下げたのに走りの話はどこへやら、ファミリーカー押しというのがCMを見ての印象です。

 トヨタはヴィッツベースの兄弟車を乱発してきました。ヴィッツ、ファンカーゴ、プラッツ、bB、ist、WiLLVi、WiLLサイファ、シエンタ、ポルテ、パッソ、パッソセッテ、ベルタ、ラクティス、ラウム。これで全部でしょうか?これらをトヨタは巧みに売り分けていこうとしましたが、果たしてこれほどまでの車種が必要だったのでしょうか?案の定、キチンとモデルチェンジを受けた車種はあまり無く、ブランドとして定着させることに失敗しています。

 こんなに乱発せずに、当初の4車種、ハッチバック、セダン、トール、スペシャリティに限定して、キチンとブランド育てれば、フィットにここまで快走されることも無かったんじゃないでしょうか?もっともそのホンダもフィット以外の兄弟車は順調とは言い切れませんが。

 で、この新型ラクティスは、そんなフィットコンプレックスが見事に詰まった1台に思えます。本来ならフィットのライバルはヴィッツなんでしょうけど、フィットに出来ていてヴィッツに出来ないことは、みんなラクティスで取り返そう。そんな風に見えて仕方有りません。

 成功車のデザインに似たデザインを持ってくるのは昔からトヨタの得意技ですが、背を低くしたラクティスは、特徴的なボンネットフード(格好悪いですけどね)を除けばなんともフィットな仕上がり。そしてそのフロント部も兄弟車スバルトレジアと共に、10年近く前にデザインされた三菱コルトとそっくりな面構成。コンパクトカーのデザインも行き詰まっちゃったんでしょうか・・・

 内装の感じは、ほぼ同時期に出たヴィッツよりはましな仕上がりも、やっぱり安い方のトヨタな仕上がり。フィットには当然勝ててませんし、なんだったら同じグループのダイハツの軽自動車の方が良い仕上がりの車が有りそう。プラッチックのシボの質感なんかは良いのでもカタログ写真は高品質に写るんですけど、実際に乗って触れるとガッカリなんですよね。初代ヴィッツが市場に受け入れられて以降、トヨタはこのクラスの質感はこんなモノでよいと考えているようですが、ユーザーもそろそろノーと言うべきだと思います。

 先代より大幅に全高を下げたと言っても、まだフィットより高いわけですから、室内空間は十分な感じ、ただだからと言ってフィットよりラクティスを選ぶかと言われると微妙で、これならフィットのように、立体駐車場に収まる1550ミリ以下に出来ないのか?と言う気もします。ここまで中途半端に背を下げるぐらいなら、ヴィッツと作り分けてる理由もわからなくなりますし。

 総じて最初に書いたように、なんとも中途半端な存在の車です。これが上記したように全高1550ミリ以下でヴィッツという名前で出ていれば、評価も変わるんでしょうけど(となると現行ヴィッツがパッソだな)、パッソ、ヴィッツ、ラクティスをこの程度の造り分けでやっていくのなら、単純にフィットを買うか、趣味性追求してデミオ、スイフト買った方が幸せになれそうです。

 こんな程度の車がトヨタから新型車として出てきちゃうんですから、軽自動車売れるのもわかりますね(笑)。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)3(嫌)

FJクルーザー(11.1.11記)

 昔のランクルBJ40をイメージしたフロントマスクを持つFJクルーザー、アメリカでは既に2006年から発売されていて、「日本に導入する予定はない」とのトヨタの発表に並行輸入業者が勇気づけられ(笑)、結構な台数が日本に上陸していました。今回その発言を覆してまでも日本市場に導入したわけですが、世界的にすっかり縮こまってしまっている日本車、トヨタ車の閉塞感を打破するには、格好のモデルと言えるのではないでしょうか?

 以前にも書きましたが、今の日本車のモデルチェンジは全く面白くありません。ヒットモデルは当然、それどころかたいして売れたとも思えないモデルまで、キープコンセプトキープコンセプトで、モデルチェンジの意味を疑う変わり映えしない車が作り続けられています。不況下でタダでさえ車が売れないのに、大きな変化にチャレンジして、先代より売り上げが落ちたらどうする?と言う、チキンな開発陣、メーカー首脳の判断が、このような状況を生み出しているわけです。

 しかし同じトヨタでも、アメリカトヨタ発ならこんな思い切った車も発表できるのです。日本だってバブル時代の日産や、トヨタでさえほんの10年前ほどまでは、このようなチャレンジングな車種が有ったものです。日産のパイクカーシリーズは大ヒットしましたし、ヒットこそしませんでしたが、初代ヴィッツのプラットフォームを使って、トヨタはあらゆる挑戦を繰り広げました。

 余裕があるから出来た。確かにそうでしょう。不況下で失敗したら会社が傾く可能性があります。でもそう言うときこそ、新たなチャレンジをして、新たなお客さんを開拓しなければ行けないわけです。と言うか、変わり映えのしないモデルチェンジを大衆車クラスで繰り返していると、お客さんは、日本人は、本当に車に興味を持たなくなってしまいます。

 先代より明らかに優れてる。先代より明らかに格好良い。そう言う積極的に選ばれる要素がないと、本来モデルチェンジなんてしてはいけないのです。先代と変わらないモデルチェンジをしていると、結局車を選ぶ理由が消去法になってしまいます。結果趣味性の低いハイト軽辺りに落ち着いてしまい、そのモデルをただ足として10年ぐらい乗ってしまうわけです。

 これでは日本の基幹産業が揺らいでしまいます。別に車検毎に乗り換えろとは言いませんが、100万そこそこの車にキッチリ10年乗られてしまっては、そりゃ日本の景気はなかなか良くなりません。だからこそメーカーは、ユーザーが気になるような車をモデルチェンジ毎に提案しないとダメなんです。それは先代よりちょっとだけ安く、ちょっとだけ良くなったと言うようなネガ潰しのモデルチェンジではいけません。

 技術的アドバンデージが無いのでしたら、その車を持つことによって、ユーザーの夢が広がるような車を提案するべきなのです。その車を買うことによって、消去法じゃない生き方が出来る。自分の生き方が何か変わるような車。技術的に行き詰まっているのなら、そう言う提案を国産車はすべき時なのです。

 さてFJクルーザー。技術的にはどうって事ありません。昔から有る4WD車です。サイズもデカすぎて日本の道には不的確でしょう。そもそも4Lの排気量ですから、税金のことを考えたら常識的日本人はまず乗りません。トヨタも台数売る気は無いですからカタログもペッラペラです。実際大ヒットなどするわけないでしょう。

 でもこの車。この車には今の日本車に必要なモノが詰まっています。こういう車を企画して、そしてそれが通ること。それが大事なのです。この企画が通ると言うことが「攻め」なのです。既に有る技術、既に有るパーツで、こんなに他と、今までと違うモノが生み出せるわけです。新しい技術、全体の80パーセントが新規パーツでも、先代と変わらない風体のモデルを生み出している、軽自動車、コンパクトカー、ミニバンに見習って欲しい部分です。

 最初に記したようにモチーフは昔のランクルです。そう言う意味ではミニやフィアット500等と同じように、レトロカーですから視点的には後ろ向きかも知れません。でも発想は完全にプラスの発想です。これが大事なのです。日本でこの企画がもし通っていたら・・・このデザインでRAV4ぐらいのサイズ、だったらRAV4ベースですから、FFモデルでも構いません。それで値段は250万以下。日産のエクストレイル/ジュークがそこそこ売れてる状況を考えると、結構な鉱脈だった可能性も有ります。

 問題はそこにチャレンジしないことなのです。

 ちなみにこのFJクルーザーの価格。そのサイズ、4Lの排気量で考えるとイメージ的には400万オーバーぐらいですが、実際にはベースグレードは314万円。アメリカでは200万円台の車なので安いとは言いませんが、少ない台数のために右ハンドル仕様を作ったことを考えると、意外と勉強している価格と言えるかも知れません。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)3(好)

 

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