12年下半期の新車チェック評

過去の新車チェックのポイントはあくまでも発売当時のポイントなので、今現在の国産車デザイン通信簿のポイントとは一致しません。

今年の新車チェック評に戻る

1-貰っても乗らない。2-格好悪いです。3-普通。4-知り合いが乗ってたら嬉しい。5-今すぐ欲しい。

クラウンロイヤル/アスリート(2012.12月発表)(13.6.15記)

 発表前から一部スクープ誌などで、今度のクラウンのフロントマスクはかなり大胆だとすっぱ抜かれていました。特にアスリートのそれはギザギザのグリルで、およそ代々のクラウンが持ってきた伝統的、日本的な雰囲気とはかけ離れていて、物議を醸していました。そして正式に発表されたクラウンのフロントマスクはスクープ誌通りの大胆なもので、スクープ情報を知らなかった人たちに衝撃を持って受け取られました。

 しかしその後クラウンの話題はというと、大胆なフロントマスクよりも、発表会で展示されたピンクのクラウンの方に持って行かれた印象が強いです。この辺りはトヨタの巧妙な作戦が伺えると思います。大胆なフロントマスクに拒否反応を持たれるなら、それよりもっと拒否反応が出そうな話題を作ればよい。それがピンクのクラウンだったと思います。

 結果的にピンクのクラウンは、クラウンの変化を象徴する出来事として、多くの一般マスコミにも取り上げられ、その多くは好感を持って報道されました。カタログモデルでもない(いずれ販売するとの話ですが)ただ色を塗り替えた車1台で、ギザギザフロントマスクへの拒否感を無くしたのですから、トヨタの見事な作戦勝ちだと言えるでしょう。実はトヨタの作戦勝ちは、ピンクのクラウンだけではありません。ギザギザのフロントマスク自体も、今回のクラウンの本質を隠すひとつの作戦に過ぎないのです。

 クラウンという車は、今までほぼ4年毎にフルモデルチェンジを繰り返してきました。ただフルモデルチェンジとはいうものの、実際にはプラットフォームは2世代使い回しが基本線で、実際には8年毎に本格的なフルモデルチェンジをして来ています。近年?のクラウンで説明すると、バブル前後の8.9代目。9代目はマジェスタが初めて投入された代ですが、フルモノコックのマジェスタに対して、ロイヤル系は8代目とのプラットフォーム共用の縛りが有る為、ペリメーターフレームのままでした。

 その後10代目でロイヤル系もフルモノコックになりますが、このプラットフォームは11代目と共用。そして12代目の新プラットフォーム導入時に、記憶にも新しい「ゼロクラウン」と言う言葉が用いられたわけです。先代に当たる13代目はゼロクラウンとプラットフォーム共用で、それが逆に「ゼロクラウンのような革新性が感じられない」との不評を呼んだようですが、最初からプラットフォーム2世代使い回しは決まっているのですから、大きく変えられないのは仕方ない話なのです。

 話を戻します。では今回の大胆なフロントマスクは何を隠してるのでしょう。そうプラットフォームの話をしたから解りますね。今回の14代目クラウンは、先代とプラットフォームを共用しているのです。つまりクラウンとしては異例の3世代に渡り同じプラットフォーム使っているわけです。現在の技術であれば、日々の改良で3世代に渡って同じプラットフォームを使っても特に問題はないでしょう。ですが、ピンクのクラウンや、ギザギザフロントマスクで大きく変わったと言われるほど、今回のクラウンは「変わった」ワケではないのです。

 プラットフォーム新設計だったゼロクラウンは、本当に「変わった」クラウンでしたが、今回のクラウンは車の本質的な部分では、あまり変わってはいません。とはいえ、今回のクラウンは販売の主流をハイブリッドに大きく振ってきました。しかも今までクラウンの力強さの演出として使ってきたハイブリッドではなく、世間的に認知されている、燃費追求型のハイブリッドとしての投入です。そういう意味では、クラウンという車の考え方は確かに変わり始めているのですが、いかんせんプラットフォームはゼロクラウンのままです。

 本格的にクラウンを変えるのであれば、高級ハイブリッドカーとして新しいプラットフォームを開発するべきでしょう。でもコストの縛りからそれが出来なかった。なので大胆なフロントマスクを採用することによって、あたかも大きく変わったかのように見せているわけです。今回のクラウンがフロントマスクほど変わっていないのは、サイドビューや、リアからのプロポーションを見て貰えば解ると思います。そのスタイルは先代のクラウンとそっくりです。

 たまたま現車を見に行ったディーラーでは、先代クラウンの在庫車がたたき売りとして隣に展示されていましたが、方やロイヤル、方やアスリートだった為か、当初世代が違うとは認識できませんでした(笑)。それほど顔以外の部分では、新型と旧型に差違はありません。逆に言うとそれほどフロントマスクの印象というのは大事なわけですよね。

 世間的には、当初トヨタ自身も拒否反応を恐れたと言われる、アスリートのギザギザグリルの方が評判が良いようですが、筆者としてはロイヤルのグリルの方が好きです。ギザギザにアレルギーが有るわけではなく、アスリートのグリルはただギザギザに切り取ってあるだけで、実は大した工夫、仕上がりではありません。対してロイヤルのグリルは実車に近づいてみると、グリル自体が立体的でバイクのエンジンがむき出しになっているような表現で、実は物凄く凝った造形であることが解ります。この手の掛けようこそがクラウンの世界観に相応しいと思うのです。

 内装の質感はクラウンらしい仕上がりです。日産がフーガで導入した銀粉本木目の華やかさを、低コストでそれっぽく見せた新しい木目の表現などは素晴らしいです(皮肉をこめつつも結構本気で誉めてます(笑))。質感がバレやすい黒内装も、これぐらいの価格帯の車だと雰囲気が有って良いと思います。ただ後席の背もたれクッションが、包まれ感を出すためか過度に凹型をしていて、長時間の移動では体に負担が掛かりそうな形状だと思います(久々に腰痛感知センサーが発動しましたよ)。

 最初にも記したように、本来プラットフォーム共用3代目の車なんて、新たに買い換える必要性なんて感じないのですが、トヨタはそこにハイブリッドシステムと、大胆なフロントマスクを投入して、十分に商品としての価値を作り上げています。15代目こそは全く新しい価値観によって作られた「新」クラウンになるでしょうけど、それまで4年間、お金が有るならこのクラウンでも良いんじゃないでしょうか?誰が見ても新しいクラウンに見えますし。

 個人的には、レクサス、マジェスタの存在で、ロイヤルとアスリートが昔のマーク2ぐらいの存在に落ちてる状況こそが問題だと思うんですよね。真面目に働いてきたお父さんの最終目標の車として、キチンと「いつかはクラウン」な存在で有って欲しく思います。クラウンに上が有りすぎるのは面白くないですよね。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)3

シルフィ(2012.12月発表)(13.6.8記)

 今回のモデルチェンジでブルーバードシルフィからブルーバードの冠が取れ、単独でシルフィという名称になりました。ブルーバードと言えば、途中パルサー後継モデルへのすり替えが有ったモノの、日産にとって50年以上続いた歴史有る車でした。サブネームとしてシルフィが付いてからは、いつかはブルーバード名が消滅することは想像できていましたが、実際に無くなってしまうとやはり残念です。

 そんなシルフィですが、先代モデルは先々代の1.5Lクラスを無理矢理Cセグメントにしたのとは違い、本来の5ナンバー2.0LサイズCセグメント車として実に良くできた車でした(実はプラットフォームはBセグだったんですが)。室内空間はライバル車のプレミオアリオンより確実に広く、内装デザインも演歌調で古くさいプレミオアリオンに対して、ラウンドしたシートデザインなども含めてどこか欧州車風で、30〜40代の女性が乗るととてもおしゃれに見える車でした。

 実際乗ってみると欧州車風のしなやかな乗り心地ではなく、日産らしい足回りの感触が伝わってくる男らしい乗り心地なのがちょっと残念でしたが、バブル期のブルーバードやプリメーラから乗り換えても、またローレルやセフィーロから乗り換えても失望するようなことは無い、隠れた名車だったと思います。

 ところが、5ナンバーセダンに乗るような地方のお父さんには、プレミオアリオンの押し出しの効いたフロントマスクや、解りやすい演歌調の内装、ゴムゴムしいやわらかな乗り心地こそ正解で、欧州風でちょっとお洒落な価値感がわかる都会のマダムは、そのものずばり、素直に欧州車を買うわけで、日産が狙ったほどのヒットとはなりませんでした。 

 結果シルフィとしての3代目は日本仕様オリジナルでの(中国にも供給されてましたが)開発を断念し、日中シルフィ、北米セントラ、豪州パルサーの世界戦略車として開発されました。世界戦略車となると懸念されるのがボディサイズ。国内だけで台数を捌ききれなくなったセダンが、世界サイズに引っ張られてボディを拡大するのはレガシィやアテンザを見ても明かです。

 シルフィもやはりと言うか、5ナンバーサイズははみ出してしまいましたが、1800ミリクラスの全幅だったセントラのモデルチェンジも兼ねてる割には、なんとか踏みとどまって1760ミリになっています。実際に運転してみれば、全幅より問題なのはドアミラー間の寸法なので、1700ミリオーバー=運転しにくいと言うわけではないのですが、やはりイメージとして3ナンバーと言うのは、地方での売り上げに響いてくると思います。

 となると問題なのは、前から話している現状の日産のラインナップです。今まで、ノート/ティーダ/ラティオ/シルフィとあった、5ナンパーでそこそこ質感の高いモデルが、今回のモデルチェンジで、ティーダ消滅(日本仕様のみ)、ラティオ廉価版セダンへの変更、シルフィ3ナンバーと、実質ノート一択になってしまいました。しかもノートはクラスとしては、マーチの上級サイズです。ほどよい大きさで、満足感のある車が、日産からは無くなってしまってるわけです。

 それに対してトヨタは、プレミオアリオン健在ですし、ヴィッツベースになったとはいえ、ラティオに比べれば遥かに質感のあるカローラが有ります。5ナンバーサイズのセダンを選ぶお父さんは、トヨタ以外に買う車が無くなってしまいました。シルフィが大型化するのは仕方ないにしても、やはり本来の上質なコンパクトとしてのティーダラティオは、残しておくべきだったと思います。

 さて、では5ナンバーの制約が無くなったシルフィは、さぞ良い車になっているだろうと期待して乗ってみると、これが・・・今度は世界戦略車のとしての制約に捉えられてしまいました。あれほど広大だった室内スペースも、実寸では拡大されているのかも知れませんが(すいません比べてません)、実感としてはそれほどでもないイメージ。シートデザインやインパネ周りも、先代では独自性が感じられて、内装写真を見るだけで「シルフィ」と判別ついたモノが、どこにでもある凡庸なデザインになってしまってます。

 特に雑誌などでは、木目調パネルが奢られた上級グレードのG主体で紹介されているため気づきにくいですが、その他のグレードはシルバー塗装の安っぽい仕上がりで、相変わらずのブラック内装の質感の低さと合わせてガッカリです。事実上、唯一シルフィらしい車格感のあるGグレードは、本体価格が約240万円。1.8Lで、アイドリングストップも無し、最近流行りの自動ブレーキなども無い、ただの1.8L車が240万円。全く理解できない価格設定です。

 外観デザインは、シルフィらしさを残しつつ3ナンバーでデザイン代に余裕が出来たのか、流れるようなラインがキレイな車だと思います。少なくともラティオの見た瞬間にがっかりするような酷さは有りません。ただこれも世界戦略車として、どこでも受け入れられるデザインにしたせいか、これだ!と言う特徴の無い目立たないデザインになってしまったかも知れません。街中で新型シルフィが走っていても、目に止まる人は少ないのではないでしょうか?同じ世界戦略車で、元は同じクラスだったアテンザとは大違いです。

 総じて3代目シルフィ。どうでも良い車に成り下がってます。日産党で日産車だけ乗り継いできたお父さんでも、価格と装備、仕上がりを見ると厳しいと思います。今の日産車は確実に、駄目なターンに入っています。ゴーンが社長になって最初に送り出した世代は、どれもこれも非常に危機感が有って良い車が多かったです。対して、その第一世代がモデルチェンジを迎えた今、出てくるモデル出てくるモデル、先代を凌ぐような良い車は有りません。今どうしても車を買わなければ行けないのであれば他社に。逆にどうしても日産車に乗りたければ、5.6年待って次の世代に掛けるのが正解だと思います。

 残念ながら今の日産を象徴する車がシルフィだと思います。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)3

アテンザ(2012.11月発表)(13.5.15記)

 他社がハイブリッドや電気自動車など新しい技術に走る中、地道に今ある技術を磨き上げる題材としてマツダが選んだのがディーゼルエンジンでした。日本では 営業車優遇政策でディーゼルに対して甘すぎる環境であったことが、逆にディーゼルの首を絞め、ディーゼル=汚いと言うイメージが定着し、最近の乗用車では 設定車を探すのが難しいほど嫌われた存在でした。

 しかし世界的に見ればむしろ主流はディーゼルで、ガソリンよりディーゼルエンジンのラインナップの方が豊富なメーカーも有ります。そんな事情は欧州で一定のブランド力を持つマツダなら当然解っていたわけで、日本でも優れたディーゼルを導入すれば成功できるという読みがあったのでしょう。そうして投入されたSUVのCX-5がスマッシュヒット。しかしディーゼル仕様が爆発的に売れると言う状況にはマツダ自身が驚いていたようです。

 そんなマツダ自信のディーゼルを搭載した2台目はセダン&ワゴンのアテンザ。CX-5はSUVというボディ形状を考えれば、ディーゼルがヒットするのも肯ける車種です。アテンザがヒットしてこそ、マツダのディーゼル路線が成功であったと確信が持てるわけで す。ところが筆者はそんな事情は別にして、新車発表時の写真を見て素直にノックアウトされました。

 格好良い。

 近年ここま で素直に格好良いセダンがあったでしょうか?デザインの大元はここ数年マツダがセダンのデザインコンセプトカーとして発表してきた、靭 (SHINARI)→雄(TAKERI)にあるのは明かです。しかし、コンセプトカーはあくまでもコンセプトカーで、市販車ではその雰囲気は大きくコン サバなモノに変えられるのが通常。何度三菱のコンセプトカーが「このままの形で出ます」と言われてダマされてきたことでしょう(笑)。

 プロポーション自体は、ホイールベースが長い割に前後オーバーハングも長くて、有る意味古く古典的な感じすらします。ただこのデザインテーマは、伝統的英国風デザインからの脱却を目指している現在のジャガーが先鞭をつけ、世界的にヒットを飛ばしているワケですから、長くて薄べったいセダンを好む層は、確実に居るわけです。

 この一言で言えば「おっさんホイホイ」なデザイン。バブル期の4ドアハードトップブームに踊った日本メーカーにとっては、 テクノカットに人民服やツーブロックに紺ブレのように、今の目で見るとなんとも恥ずかしい感覚なのかも知れません。特にミニバンとハイト軽に埋め尽くされ ている日本国内で、こう言うデザインが評価されるとは思えなかったのでしょう。

 でもトヨタのマークXがある一定数売れていることでも解るように、セダンは大きくて薄いのが格好良いと思う人は、まだまだ存在するわけです。世界を見れば、むしろ大型セダンは実用性を削ってでも薄い方が格好良いとばかりに、クーペルックな高級セダンが増えています。そこでマツダはアテンザを投入し見事に成功したのです。

 そう。アテンザヒットしています。

 近年発売後、街中でこんなにすぐ見かけるようになったセダンはありません。格好良い車は売れるんです。ミニバンやハイト軽でなくても、少々高くても、セダン でも、格好良ければユーザーはハンコを押すわけです。何勝手に自分達でマーケティングして、縮こまってたんでしょう?セダンが売れないのは、格好悪いから売れないんです。トヨタやホンダはこのアテンザのヒットを参考に、素直に格好良いデザインのセダンを出して欲しいです。日産はともかく、この2社のセダンは明らかに考えすぎで格好悪いです。

 この抜群に格好良いデザインに、冒頭で記したマツダ自信のディーゼルエンジンが搭載されています。 いや、アテンザにはフルスカイアクティブ仕様のガソリンエンジンも搭載されます。でも圧倒的に売れているのはまたもやディーゼルエンジンの方。しかもディーゼルエンジンの方がガソリンより価格が高いにも関わらずです。その価格差を埋めるには、ディーゼルの価格の安さ燃費の良さを考慮しても何年も掛かるのにです。

 セダンのデザインで日本人の目を覚まさせたマツダは、エンジンでも日本人の意識を変えたわけです。ディーゼルの方がプレミア ム。何という衝撃でしょう。「ディーゼルなんて荷車が使っている汚いエンジン」そんな印象を一気に変えてしまったわけです。同時にこのディーゼルエンジンでマツダが変えた大きな事柄があります。それはパワー信仰の無意味さです。

 日本ではいつの頃からか、どの自動車雑誌から、誰が言い出したのか、車の善し悪しを語る基準として、何馬力あるかが非常に重視されてきました。ライバル車同士を比べる時に、A車は250馬力だけどB車は260馬力だからB車の方が優れてる。こんなスーパーカーブームの時の、カウンタックと512BBの最高速争いみたいな、幼稚な価値観が今の今までまかり通ってきた わけです。自動車メーカーも頭では無駄だと解っているクセに、カタログ数値に拘り、実用域での使いやすさを犠牲にしてでもピークパワーの数値を大きくすることに全力を注いできました。やれやれ。

 キチンと車に接している人なら誰でも解ることですが、日本の国内法規でAT車を運転していて300馬力なんか使うところ無いですよね。しかもその300馬力が発揮できるのが6000回転とか(笑)。その為に実用トルクが削られちゃって1500回転以下スカスカとか。全く意味が無いわけです。使わない事のために使う事が犠牲になっている。それでも日本の多くの自動車関連業界はパワーパワー言い続けてきたわけです。

 ところが、アテンザのディーゼルヒットしています。その要因は「発進時や追い越し加速時の力強さが気持ちよくてクセになる」はい正解です。エンジンぶん回さないと出ないパワーよりも、トルクを厚くした方が車は気持ちよい。この心地よさをアテンザディーゼルは堪能できるわ けです。ちょっとアクセルを踏んだ時の心地よさ。今まではそれを大排気量エンジンや、ディーゼルでも振動が大きいとか排ガスが汚いのを我慢しないと味わえなかったわけです。

 でも新世代のプレミアムなディーゼルなら簡単に気持ちよく味わえる。そりゃディーゼル売れますよね。高回転までエンジン回して気持ちよいなんてのは、小排気量軽量スポーツカーに任せておけばよいのです(そんな車が出るかどうかは別として)。

 内装の質感はマツダとしては頑張ったと思います。アメリカ辺りの感覚だと十分にプレミアムな仕上がり。デザイン自体は普通なんですけど、普通のデザインで安っぽく見えないって事は、質感そのものが上がっていると言うことではないでしょうか?何よりホワイト内装のアテンザは結構エロくてしびれますよ。今更 チョイ悪オヤジかと(笑)。

 総評としてアテンザ大いに気に入りました。会心の出来だと思います。今までのマツダ車の感覚で考えると価格がかなり高く思えますし(マツダ車は1L=100万円なイメージ)、アテンザの始祖はカペラなので、サイズが大きすぎるという声もありますが、むしろ経営難 でフラッグシップを作れなくなっていたマツダが、また高級セダンを作れるようになったことを讃えたいです。

 そう言う意味ではこの車、アテ ンザの名前で無くても良かったかも知れません。センティアやルーチェでも、志半ばに撤退したユーノス800→ミレーニアでも良いです。でも筆者が一番押し たいのは、北米でマツダの高級ブランド用に準備され、V12搭載車の量産試作車まで完成していた「アマティ」。アクセラ、アテンザと同じ頭文字が「ア」と 言うのも良いかと。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)5

フォレスター(2012.11月発表)(13.9.13記)

 レガシィベースのインプレッサをさらにベースに、SUVと言うよりちょっと背の高いワゴンとして、当時のスバルの苦しい台所を支えたのが、初代フォレスターでした。当時はSUV(RV)ブームのまっただ中、パジェロやランクの大型四駆が街を闊歩していてなんともうっとうしかった記憶があります(笑)。そんな中スバルが放ったフォレスターは、RV車ほど高くない車高で乗り降りしやすく、それでいて只のワゴンやハッチバックとは違う存在感で、街で使いやすいおしゃれな車として、スマッシュヒットを飛ばします。残念ながら、キープコンセプトで挑んだ2代目は変わり映えしないデザインで、ヒット作の次モデルとして典型的な失敗を見せてしまい失速。先代にあたる3代目からはコンセプトを変え正当派SUVとなり、今回が4代目となりました。

 とはいえ、正当派SUVとなった先代がそれほどヒットしたというわけではありません。解りやすいSUVスタイルは北米マーケット主導のためで、日本でフォレスターを支持していたユーザーからすれば、他社SUVと変わるところが無くなったのだから当然かも知れません。それでも4代目が同じコンセプトでモデルチェンジを果たしたのは、3代目がヒットした北米からの要望と、インプレッサベースの新型クロスオーバー車XVの存在が有ったからだと思います。

 XVはインプレッサの車高を高くしてSUV風に装った、SUVとハッチバック/ワゴンとのクロスオーバー車なのですが、これは初代フォレスターのポジションに非常に近い存在です。3代目で大きくコンセプトを変えたフォレスターに拒否反応を示したユーザーに対して、それまでのフォレスターユーザーを取り込める車を準備した。だからこそ4代目はより安心して、正当派SUVとしての道を究めることになったのでしょう。

 そんな正当派SUVとしてのデザインですが、先代よりどちらかというと道具感というか、質実剛健感が増したと思います。このクラスで一番売れているエクストレイルが道具感全開なデザインなのも要因だと思いますが、ここでもXVの存在が大きいと思います。前記したようにXVは初代フォレスターのポジションに近い車なのですが、そのデザインは現行インプレッサのハッチバックボディを使っているのでかなり若向けです。秀逸なデザインのアルミホイールや、独特の切り口のオーバーフェンダーは、ただのハッチバックだったインプレッサを特別感のある車に替えています。

 それに対してフォレスターのデザインは、もう少し落ち着いた、老若男女このような車をずーっと購入したきたであろう層が好みそうな雰囲気でまとめられています。ややこしいのですが、初代フォレスターとポジションで近いのはXV。ニュアンス的に近いのは4代目フォレスターという感じでしょうか。XVの存在によってフォレスターがどっちつかずの存在にならずに、キチンとキャラクター分けできたのは良いことだと思います。内装デザインはインプレッサとほぼ同じ。特に言うことがない、ちょっと他社よりは劣る例のプラスチック品質です。色合い的にも地味な黒内装のみなのですが、質実剛健感という意味では、この車を買う層には好感を持たれるのかも知れません。

 スバルは初代レガシィのプラットフォーム一つから、インプレッサとフォレスターを派生させて、3台ともヒットさせた経験があります。あれはメーカーに取ってみれば非常においしい話なのですが、それもこれもコンセプトとデザインがしっかりしていたから出来た話。今回のインプレッサ、フォレスター、XVの3台からは、同じような雰囲気を感じます。キチンとしたコンセプトとデザイン。3台が全く別のキャラクターとして存在し、それぞれがどれも魅力的。アイサイトという突出した飛び道具を持つスバルが、車としても魅力的なモデルをリリースすれば、それは売れて当然だと思います。

 個人的には、後方車の前方視界を塞ぐような背の高い車は好きではないので、フォレスターよりはXVやインプレッサG4が好みですが。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)3(嫌)。

ノート(12.11.25記)

 トヨタがヴィッツベースで多くの車種を作り分けたように、トヨタほどでは無いモノの、日産も先代マーチベースで数多くのコンパクトカーを作り、その殆どの車種をヒットさせました。もちろんここで言うヒットは、スマッシュヒットレベルで、月間販売台数トップ10に乗り続けるようなモデルは少なかったですが、どの車もモデル末期までそれなりに売れ、世界的規模で見ても日産躍進の原動力になったと思われます。

 ところが日産は、この順調だと思われていたモデルラインナップに手を入れます。おしゃれだったマーチを国外生産の廉価ベーシックカーに格下げ。マーチよりちょっと大きく、フィットやラクティス対抗車だったノートと、高品質コンパクトカーと言うポジションだったティーダを統合、ティーダのセダン版でこちらも品質の高さが売りだったティーダラティオを独立モデルにして、マーチと同じく廉価版ベーシックセダンへと格下げ。ティーダラティオの本来の客層は、次期ブルーバードシルフィに統合という流れになりそうです。

 トヨタがこのクラスに車種が多いのはともかく、ホンダは実質フィットとフリードの2台で十分な台数を売って居るのですから、日産がラインナップの多さより、車種構成を明確にする方を選んだのはわからない話ではありませんし、上記したように、廉価ベーシックカーをマーチとラティオ。高品質コンパクトをノートとシルフィに整理したのも解りやすいです。

 ただ、車というのは、代々同じ車種を買ったり、代々同じメーカーを買ったりすることが多い商品です。それを考えると、日産のこのコンパクトカーの整理の仕方には、納得出来ない面も出てきます。しかも日産はこの前の世代で、サニーやパルサーの廃止というコンパクトカーの整理を一度しているわけです。2世代に渡る整理統合は、メーカーや車種に対するユーザーの忠誠心を揺るがしかねません。

 今回の2度目の整理統合モデルチェンジは、どれも既存ユーザーに不満を抱かせるモデルチェンジになって居ると思います。マーチは安っぽくおしゃれで無くなり。ノートは車高/室内高が低くなり使える道具感が薄れました。高品質なハッチバックだったティーダは無くなり、そのセダン版だったラティオは廉価セダンで猛烈に安っぽいです。

 そんな不満の多く出るであろう、日産コンパクトカーラインナップの中で、それでも唯一マシなのがこのノート。上級車種ティーダと統合という事で、初代の道具感よりもう少し、スタイリッシュで品質の高いモデルへのチェンジですから、ノートからノートに乗り替えるのであるならコンセプトの変化に目をつぶればさほど不満は抱かないでしょう。

 また初代が独特なデザイン(と言うかディティール)をしていたのに対して、2台目はコンパクトカーで5ナンバー枠を守ってるにしては、流麗でキレイなデザイン。写真や遠くから見ると、フィットコンプレックス丸出しかなという気もしますが、これを見て格好悪いという人は、そうは居ないのではないでしょうか?一つ心配なのは、今の時点でどこかで見た感があるキレイなデザインですから、先代と同じく7.8年作るとなると、ある時点で急激に古く見えるという可能性は有ります。特に今後新型フィットが出た時にどうなるのかというのは微妙なところです。

 今回ティーダと統合と言うことで、ティーダに乗っていたお客さん用には、上級グレードとしてメダリストが準備されました。昔からの日産党なら懐かしいグレード名ですが、わざわざ標準ノートと別のカタログを準備している割には、それほど標準車と造り分けられている事はなく、ピアノブラックパネルインパネと、シルバー調塗装華燭程度で高品質とか言われても(あと装備ですか)・・・と言う感じです。

 ピアノブラックインパネを使っていないノートの品質はそれなり。コンパクトカーの標準的なプラッチック内装を思い浮かべてもらえば間違い有りません。機構的には1.2Lエンジン、スーパーチャージャー、アイドリングストップ辺りが売りなんですけど、相変わらずアイドリングストップがグレード毎設定だったりで、中途半端なやる気はユーザーの反発を招き逆効果だと思います。

 日産はコンパクトカー作りをなめずに、もう少し真摯に考えるべきです。「セダンとハッチバック、安いのと高いの有れば良いだろ?」国内の販売の主流が軽とコンパクトカーになっているご時世に、そんな安直な考えでやっていけるわけがありません。マーチ、ノート、ティーダ。それぞれに良さを感じて購入したオーナーが居るわけです。そのオーナー達が次も同じ車を買おうというモデルを作るべきなのです。ユーザーのことより、お家の事情を押しつけられたような車では成功するわけがありません。ノート自体はそこそこ良い車ですが、日産の姿勢に問題有りだと思います。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)3(好)

ミラージュ(12.11.1記)-試乗済み-

 通常は、取り上げる車の成り立ち→外装デザイン→内装デザイン→まとめ。と言う形をとるのですが、今回は結論から。この車ダメです。こんな車に社運をかける三菱自体がかなりまずい。ここのところ平均点前後の、良く言えば安定していて、悪く言えばつまらない車が多い国産車の中で、ひっさびさにこんなにはっきりとダメが出せる車に(国産ではなくタイ産ですが)出会えた感じです(笑)。

 何がダメって、取りあえず試乗してみると解ります。自動車評論家達は、久々の三菱のニューカー、そして流行りのコンパクトカーと言うことで、かなりオブラートに包んだ書き方で苦労していますが、とにかく車として質感が低く安っぽい。乗り心地はふなふなコトコトで頼りなく、何より燃費重視の軽量化のためか、終始室内にゴーっと言う音が響きます。

 こんな車過去にも乗ったことがあります。そう。スズキの軽自動車ですね。スズキの軽と言えば、ダイハツやホンダと比べて、明らかにユーザー軽視の割り切りで、安っぽく質感が低いものでしたが、それでも近年の日本国内での軽人気で、以前に比べれば遥かにマシになってきました。でもこのミラージュに乗っていると5〜10年前のスズキの軽を思い出すのです。

 今や日本の車の販売の主流は、軽自動車とコンパクトカーです。そして軽自動車には維持費という点で、普通車に比べて圧倒的なアドバンテージがあるわけです。それでも今までは、筆者のように軽自動車の質感の低さや、衝突安全性への不安から普通車を選ぶ人も多かったです。

 ですが、軽自動車がセカンドカーからファーストカーに代わり、家に軽自動車しか無いという家庭が増えて行くにつれ、軽自動車の質感、安全性は大きく上がりました(同時に価格も大きく上がりましたが)。となるとコンパクトカーは当然軽自動車より優れた面を見せなければ、選ぶべき理由が無くなってしまいます。フィットやスイフト、アクア、デミオ辺りにはそれぞれ明確なアドバンテージがあります。現行のマーチ、ヴィッツあたりは若干厳しいでしょうか?それでも「トヨタ」「日産」と言う看板への信頼感があります。

 ではリコール隠し問題で会社が大きく傾いた三菱は、何を売りにしたのでしょう。それは、燃費と価格です。特に大きな発明、飛び道具を使うことなく、今までの技術の研鑽でバツグンの燃費と低価格を実現する。今の時代を考えれば方向性としては間違っていません。これで最低限、先代にあたるコルト並みのクオリティを維持できていれば、大変期待の出来るニューカーに仕上がったでしょう。

 でも出来上がった車は上記したとおりです。飛び道具を使わず低燃費を実現する為には車体の軽量化だと、削れるところはみな削り、削りまくった挙げ句、数年前の軽自動車のような、終始ゴーゴー響く安っぽい鉄の箱のような車になってしまいました。また低価格を実現する為に、全車タイ生産とし、その結果、プレスの限界かデザイン面でなんとも生ぬるいシャープさのない車になってしまいました。

 しかも発表された価格は、売れ筋グレードで比べると、抜群に安いと言うほどのモノではなく、ディーラーの値引き次第では、簡単に逆転できるレベル程度に収まっています。つまりタイ生産で安く上がった分は、ユーザーに還元されずに、メーカーのフトコロに入るという、マーチと全く同じ仕組みになっているわけです。

 ミラージュはグローバルカーとして世界中で売られるわけですが、三菱がまずいのは、これが今の日本車、今の三菱車の標準だと思われる点です。日本や先進国では当然、その他の途上国でも、韓国車や先進国のセカンドブランド(ルノーダチアやVWセアト)と比べられて、勝てそうな気がしません。

 ミラージュは軽自動車を除けば、三菱のエントリーカーなわけです。ここから三菱車の世界が始まり、広がっていくのです。なのにこんな出来のミラージュを買って、また次三菱車に乗ろうと思うでしょうか(もっとも今の三菱にはステップアップしていく車自体が無いですが)?筆者は結構なミツビシャーですが、このミラージュを見たらこう言わずにいられません。「三菱終わったな」と。

 思えば先代に当たるコルトは、出た時期が悪く、その後の会社の低迷でモデルチェンジもされませんでした。でも少なくとも、デザイン、質感、車の出来は、身びいきと言われようが、悪い車ではありませんでした。未だに外観デザインも古く見えませんし、初期型のフルチョイスシステムの頃の内装の質感も悪くありません。

 でも新型ミラージュは、タイ生産の工場レベルの問題からか、デザイン画やモックアップのシャープなラインは消え失せ、ポリカーボーネートのラジコンカーのようなだるい雰囲気になってしまいました。これはフルカラードバンパーに拘ったせいでより強調されてしまい、むしろモールなどに黒プラッチック部分を入れた方がしまったのでは?と思わされます。

 いや確かに今の時代、車に品質感や味わいなど求めず、道具として安くて燃費が良い車を求める人も居るでしょう。典型的車の白物家電化の1台がこの車だと言えます。でもそんな車に興味が無い人は普通軽自動車を買うでしょう?軽自動車とミラージュを比べて、唯一負けない点は法律上5人乗れると言うことだけです。全くこの車には存在理由が有りません。こんな車があっても、三菱は自分の首を絞めるだけです。

 人は良いモノに触れ続けていると、そのモノにたいして興味が無くても、悪いものと良いモノの区別がつくようになります。国産車に乗り続けてきた日本人、普通車に乗り続けてきた日本人。そんな人にこんな車が売れるわけがありません。いや、本当に三菱好きとしては心苦しいですが、こんな車は売れてはいけないのです。

 昔はごちそうだったお寿司やウナギ。今ではハレの日でなくても普通の食事として食べられます。でも、はたして昔の1年に1.2回しか食べられなかった時と同じ味でしょうか?国産のウナギを職人がしっかりと作った昔のウナギと、中国産のレンジでチンするウナギ。一見同じモノに見えても、その味は全く別物なはずです。

 でも、今の人たちの頭に浮かぶウナギの味は、レンジでチンのウナギの味なのです。職人が作った味がどんなに美味しくても、それを知らないのですから、ウナギの価格が高騰して食べられなくなっても、そんなに惜しいと思わないでしょう。車でも同じ事が言えます。こんなレベルが日本車だと思う人々が増えてきたら、途上国の車と比べて区別がつくとは思えません。

 日本車が欧米に追いつけ追い越せで頑張ってきた成果。それが世界中で、日本車というブランドとして評価されていたわけです。でも日本のメーカー自らが、こんな見切り商品のような、安かろう悪かろうな車を出していては、日本車で有る必要は無くなってきます。本当に三菱はこんな車を出していてはいけません。こんな車で生き残っていこうと考えてるのだとしたら、潔く乗用車の生産からは撤退してもらいたいぐらいです。

 三菱好きとして、こんなにガッカリした車はありません。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)2

オーリス(12.10.26記)

 トヨタのベストセラーカーだったカローラが、日本国内では交通事情やユーザー層から5ナンバーサイズを維持せざるを得ず、海外では200キロでの安定性や衝突安全基準を考えると5ナンバーでは成立せずと言うことで、先代から仕向地毎に作り分けることになり、その海外版カローラのハッチバックモデルがオーリスとなります。

 カローラが今回のモデルチェンジでヴィッツベースとなったことで、オーリスとの差は完全に一クラス分開いてしまったわけですが、価格的には1.5L同士で比べるとそれほど離れているわけではなく、国内向けと世界向けの造り分けの差が大いに気になるところです。

 外観デザインはハッチバックとセダンですから、比べても仕方がない感じですが、一見してペナペナで腰高感が感じられるカローラと、それなりの凝縮感があるオーリスで、断然オーリスの方が良いモノに見えるんじゃないでしょうか?カローラの1.5が150万円程度の車にしか見えないのに対して(実際は190万円)、オーリス1.5は200万円ぐらいの車にキチンと見える感じです(実際は198万円)。

 新型オーリスは、先代の使い勝手を割合真面目に考えられた(内装はデザイン優先で酷かったですが)凡庸なハッチバック車としてのスタイルから脱却し、明確にスポーティーなイメージを優先してきました。これは先代の実用的ハッチバック車風では、実用的でありながらプレミアムなイメージのあるゴルフには太刀打ちできないと考えたようで、正面からぶつかるより、ニッチというか、変化球で勝負を挑もうとの考えだと思います。

 ただ、ゴルフと正面から挑むのを避けたメーカーが取る手法の一番手がこの「スポーティー風味」なのはあきらか。そしてその席には既にアルファロメオという先輩がどーんと座っているわけです。となると本来は、アルファと別の方向からスポーティーを表現しなければいけないのに、世間的評価は「リア周りがアルファジュリエッタそっくり」と。まー確かに似てるのですが、好意的に解釈すればカルディナの最終型あたりをモチーフにとか・・・(笑)これに輪を掛けるのがイメージカラーが赤であると言うこと。スポーティー=赤。内装やボディカラーでも後述しますが、この短絡的思考が、より一層アルファに似てる感を強調しちゃってる感じです。

 前記したようにカローラの安っぽいデザインに比べて、オーリスのデザインはそれなりに作り込まれています。似ている似てないを別にしたら、これはこれで狙い通りスポーティーなハッチバックのリア周りだと思います。ただ問題なのはリアよりフロントで、この顔正直格好良いですかね?トヨタはこの顔をトヨタ顔として定着させようとしているようですが、全く魅力的に見えません。何よりみっともなくF1を放り出したのに(ホンダも一緒ですが)、F1のフロントウィング周りを感じさせるグリル処理がげんなりなんですけど。

 内装に移ります。こちらもカローラなんかとは比べものにならないほどキチンとしてます。インパネとか触っても、カローラみたいにプラッチックがベコベコしたりしません。それどころか、インパネは仕様によって3種類有って(カーポン調、本革、ブラックメタル調)、カローラのコスト意識とは雲泥の差です。ただ、だからと言ってこの内装が良いかと言われればこれまた微妙(笑)。86の時も思いましたけど、パネルの構成が変で気持ち悪くないですか?オーリスだと中央のメッキで縁取られたオーディオスペース。オーディオは規格品入れれるように四角いのに、縁取りはとくに意味もなく歪んだ形で、なんだか不安になります。外観デザインとの関連性が全く感じられないのも嫌です。

 あと、色については毎度同じ話の繰り返しなので、86(BRZ)の時のコピペしておきます(実際にはオーリスはベージュ内装が有ります(笑))。ここから→「いい加減スポーティーな車は黒一色。あるいは差し色で赤。と言う短絡的思考から抜け出せないのでしょうか?黒は一番プラッチックの質感がバレる色です。こういう配色をしてる限り、若者や女性受けが大きく上がるとは思えません。

 色については外板色にも言えます。全く持って地味な色ばかり。スポーツカーを買うという高揚感がまるで有りません。白、黒、銀、ガンメタの無彩色。ここに紺、赤にくすんだオレンジ。どうしてこんな地味な色ばかりなんでしょう?ちょっと前に出たホンダのクーペCR-Zもこんな感じの色でした。全く創造性が感じられません。」←ここまで。

 ではまとめます。車としての仕上がりはさすがカローラのホンモノという感じです。先々代辺りまであった、カローラらしくお金が掛かってる感が、このオーリスからはまだ感じられます。ただこれでゴルフと勝負するのは厳しいんじゃないでしょうかね?スポーティーにふったと言っても、それはあくまでトヨタのレベルのはんちゅうでの話し。似てる似てないは別として、アルファはもっとキチンとスポーティーにふって、かつ良いモノ感を漂わしています。それはシトロエンやプジョーでもです。それに対して、オーリスはほどほどなんですよね。

 ほどほどなら有る意味トヨタらしいじゃないか(笑)。確かにそうです。でもだったら、こんな中途半端なスポーティーにお金を掛けるわけではなく、本来の正当派、カローラセダンの世界観でお金を掛けて、良いモノ感を出して欲しかったところです。国内カローラがヴィッツベースの安物感有るモノになり、欧州版カローラたるオーリスが、変なスポーティーハッチバックになり。一体全体トヨタの大黒柱だったカローラはどこに行ったんだと言う話しです。トヨタ的世界観で構わないので、キチンとお金を掛けたカローラが必要なんじゃないでしょうか?

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)3(嫌)

ポルテ/スペイド(12.9.26記)

 トヨタがヴィッツベースで作るハイト系ワゴンは、モデルチェンジをすることよりも、作り続けながら車種を増やす事が多く、数多くの車が生まれてきました。ざっと上げても、ファンカーゴ、bB、ラウム、シエンタ、ポルテ、ラクティス、パッソセッテと有り、このうちモデルチェンジしたモノが、bB、ラウム、ラクティスと今回のポルテ。

 トヨタ自身もこの膨大なラインナップをコントロール出来ているとは言えず、パッソセッテに至っては販売不振で3年少々で生産中止、代わりに一度生産終了したシエンタを復活させると言う事を行っています。そんな中生まれた2代目ポルテには、兄弟車として顔つきをクールに仕上げたスペイドと言うモデルも有り、こちらはラウムの後継車にあたります。

 生き馬の目を抜くコンバクトカー市場で、ラウム以来3代目になるポルテ/スペイドと、10年選手になろうとしているシエンタが同じメーカーから売られていると言うのには疑問を感じます。シエンタは7人乗りのミニバンですから、用途が違うというのは解りますが、このサイズに7人を乗せる無理矢理なパッケージなのですから、衝突時の安全性を考えると、シエンタこそ最新プラットフォームの新型投入を急ぐべきだと思います。

 さて話が脱線しましたが、ポルテ/スペイドの特徴は左側ドアが1枚でありながら、スライドドアでがばっと開くというモノ。小さい子供なら傘をさしたまま乗れたり、足腰の弱ったお年寄りでも、窮屈な姿勢でかがみ込むように乗らずに済むという利点があります。まーこの手の車は実際に所有してみると、ショールームで感じたほどの驚きや、便利さが持続するものではないのですが、このコンセプトで無事2代目を迎えたと言うことは、ユーザーがこのスタイルを評価していると言うことでしょう。

 外観デザインもポルテは初代の雰囲気を上手く残している印象。それでいて初代のVW風な雰囲気から、ちゃんとトヨタっぽい顔になっています。スペイドは簡単に言えばヴォクシー顔。こちらはネッツ店らしい顔でキチンと棲み分けが出来ています。ただデザイン段階ではリア周りも作り分ける予定で、そのデザインも良かっただけに、ポルテとしてデザインされたリアはスペイドにはやや合わない感じでしょうか?

 内装デザインはポルテとして考えればなかなか良い出来。既存の車っぽさとは違う車であるというのが表現できていて、心地良い道具感というか文具感が楽しいです。こういうデザインであれば、プラッチッキーな感じはむしろプラスに働き、配色と合わせても非常にレベルの高い内装だと思います。

 ただ、こちらもあくまでもポルテ主導なデザイン、スペイドの外観に合っているかと言われると微妙。特に白内装にオレンジ差し色だと、全くイメージと違います(笑)。かといって単純に黒グレー内装というのも工夫がないので、紺に白を差し色にしたクールな内装とかが欲しいところです。なお助手席を前に大きくスライドさせるために、助手席足下を大きく抉っているのが特徴的ですが、ここは実際に乗ると若干不安感をもたらすかも知れません。

 これ一台で全てをまかなって10年間乗るというタイプの車ではありませんが、すでに多く出回っている試乗記では、この手の企画優先の車の割に、車としての出来は真っ当でなかなか良いという話し。基幹車種がキチンと有って、余技として出てきたトヨタだから出せる1台。たまたま気に入って購入してもそう外れではないかも知れません。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)3(嫌)

 

 

今年の新車チェック評に戻る


車ばかのばか車へ