12年上半期の新車チェック評

過去の新車チェックのポイントはあくまでも発売当時のポイントなので、今現在の国産車デザイン通信簿のポイントとは一致しません。

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1-貰っても乗らない。2-格好悪いです。3-普通。4-知り合いが乗ってたら嬉しい。5-今すぐ欲しい。

カローラアクシオ(12.6.24記)-試乗済み-

 長年ベストセラーの座を守り続けたトヨタのカローラも、最近ではフィットやプリウスにその座を奪われるようになりました。一時期はカローラと名前がつく車型は、セダン、クーペ、5ドアハッチ、3ドアハッチ、ワゴン/バン、4ドアハードトップ、ミニバンと有り、それら全てがカローラの登録となっていたのですから、No.1になるのも当然というか、No.1を維持する努力はすさまじいものでした。

 ところが、現在は海外でカローラとして売られているオーリスがカローラを名乗らないのでも解るように、カローラブランドを掲げている車は少ないです。セダンのアクシオ、ワゴンのフィルダー、ハイトカーのルミオンだけでしょうか。これはトヨタが既にカローラを諦めたからなのではないでしょうか?多くの歴史有る車名が、忠実なユーザーの高齢化と共に消滅していく例は数多くあります。カローラのライバル車だった、サニー、ファミリア、シビック。いずれも国内乗用仕様は消滅しました。

 カローラを諦めたと思えるフシは他にもあります。まず先代からセダンの車名にアクシオとサブネームが付いた点。トヨタがサブネームを付ける場合、多くはいずれそのサブネームが車名になります。古くはセリカカムリやコロナマーク2。最近ではコロナプレミオなんかがモデルチェンジ時にプレミオになりました。

 名前の話しは続きます。カローラのユーザーがあまりにも忠実すぎる為、カローラ購入ユーザーの高齢化が進んでいることに、トヨタはかなり前から危惧を抱いていました。クーペのレビンやハッチバックのFXが受け入れられている頃は、20代のユーザーも結構な数が居ました。それらと入れ替わる形で出たスパシオも、子育て世代の30代ユーザーでしたからまだマシでした。しかし現在ルミオンは完全に失敗作、ワゴンのフィールダーが幾分若者にも売れているモノの、他にユーザーの平均年齢を下げる手だては見られません。

 そもそもサブネームをつけ、いずれ車名に昇格させるという手は、古くなった車名の印象を払拭して、ユーザーの若返りを図るという意味があります。なのに今回トヨタは車名をアクシオに替えませんでした。依然カローラアクシオのままです。これはアクシオにして若返りを図るより、カローラとして既存のユーザーと共に滅びる道を選んだと言えるのではないでしょうか?

 コンパクトなセダンにはこの先需要はない。コンパクトカーの主流は5ドアハッチだと。そしてこのクラスの5ドアハッチは、世界標準規格のオーリスが有る。カローラをアクシオと替えたからといって、それで4ドアセダンの需要が上がる訳じゃない。ならコンバクトの4ドアセダンはカローラのままで良いじゃないか。そう言う判断なのだと思います。むしろそう言う意味ではアクシオと言うサブネームは必要ありません。

 デザインの面でもカローラを新しくすると言うのは諦めているように感じます。2代前「変わらなきゃ」と登場したNCVカローラは、顔つきなどはカローラでありながら、そのフォルムには変わろうという意思が感じられました。しかしそのスキンチェンジだった先代はむしろ感覚的には先祖返りしたようなセダンデザインで、変わるのを諦めたように感じました。

 そして新型も完全に変わるのを諦めました(笑)。いや実は中身は変わっています。先々代から12年使い続けたプラットフォームをやめました。これを機に世界中のカローラで使われている3ナンバープラットフォーム(オーリス、プリウスなど)に変更かと思われましたが、実はヴィッツ系プラットフォームを使用しています。そう。ベルタと兄弟車になってしまったわけです。

 ベルタはコンパクトセダンとしては、比較的まとまった好デザインだと思うのですが、これにカローラユーザーが納得するような雰囲気を加えると・・・なんともジジむさい華の無いデザインになって、このデザインで若者にアピールするというのはどう考えても無理です。特にサイド面の抑揚の無さと、フロントマスクのバランスの悪さは致命的で、とても2012年の新型車とは思えず、一昔前の韓国車や、プレス技術に限界のある東南アジア製の車を思わせます。フロントマスクは1.5LUXEL仕様こそが、カローラユーザーが本来望む顔ですので、マイチェンでこの雰囲気を活かした大きなグリルになると思います。

 内装。カタログの見た目どころか、ディーラーで座ってみても結構頑張っている印象です。さすがはカローラ。と言いたいところですが、手で触れるとアラが見えてきます。まずグローブBOXのフタなどを中心に大胆に採用されている布張り部分ですが、これが残念なことに安っぽいんです。毛足が短いので、手や肘が触れる部分はいずれハゲて来そうな雰囲気です。さらにそれを貼り込んでいるプラパーツがどれもペナペナで押すと凹む点。もう少し肉厚でしっかり感が欲しいところです。

 今回も試乗を勧められたので、ありがたく乗せて貰います。グレードは1.3XのG EDITION。1.3の見映えが良い仕様で、価格自体は1.5のベースグレードより高くなります。今回久方ぶりに復活した1.3Lエンジンですが、街中十分普通に走れます。もっともヴィッツベースのサイズと言うことを考えれば当然な話ですが(笑)。エンジン音は回すとそれなりに安っぽい音がしますし、生産初期の試乗車ゆえのパラ付きか、アイドリング時にBピラー後方から終始ビビり音が出ていて、歴代カローラの作り込みから考えると残念な感じです。

 上記アイドリング時の話しでも解るように、このご時世にも関わらずアイドリングストップは1.5LCVT仕様にオプションで準備されるだけです。出るのでは?と言われていたハイブリッド仕様も有りません。この辺りの攻めない姿勢も、カローラがベストセラーは目指さずに、このまま消滅するブランドになるのだと諦めていると思わされる点です。

 最初に書いたように、カローラは現在の60代以上のユーザーと滅んでいく道を選択したのだと思います。新しい時代のコンパクトカーはカローラと言う名前で無く、別の形、名前の車が埋めるのでしょう。でもそれは悪いことではありません。ヴィッツベースでダウンサイズしたのも、大きな車を好まなくなる高齢ユーザー向けには的確な判断です。今まで忠誠を尽くしてくれたユーザー向けに、それらのユーザーが好む車を準備するのはなかなか出来ることではありません。MTが残されているのもその辺りの事情からでしょう。願わくば、もう少し質感の高い車に仕上げて欲しかった点。忠誠を尽くしてくれたユーザーが最後に乗る車として、満足感のある車で有ってもらいたいです。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)3(嫌)

BRZ(12.6.15記)

 アメリカのGMとの提携を解消されたスバルが、新たな提携先に選んだのは(選ばれたのは?)トヨタ。個性的な車作りが売りのスバルが、トヨタの傘下に入ってその独自性が生かせるのか?と心配されました。取りあえずスバル360以来続いてきた軽自動車の生産からは撤退。R1/R2で大ゴケした乗用車は、間に合わせで作ったステラが主力でしたから致し方ない気がしますが、商用車のサンバーは各方面から評価されていた名車だっただけに、ダイハツのOEMに成り下がるのは何とも残念でした。

 とは言え、スバルの最もスバルらしい車、レガシィ、インプレッサのクラスに、自主性が残されたのは妥当な判断かも知れません。トヨタの上手いところは、軽自動車の生産を辞めさせた替わりに、一緒にスポーツカーを作ろうと提案したところ。今まで軽自動車を設計していた人にとっては、納得行かない事かも知れませんが、共同開発と言っても、トヨタが担当するのはデザインや企画などのソフト面。スバルは今までGTカーの生産はアルシオーネ等でしてきましたが、本格的なスポーツカーの設計は初めて。これで心躍らない技術者が居るとは思えません。

 さて以前からデザインに関してはスクープ記事などで明らかになっていましたが、正直その頃の印象はあまり良くありませんでした。これってフェアレディZなんじゃないの?と。トヨタは86レビントレノや2000GTのエッセンスをちりばめたと言っていましたが、写真で見る限りは、トヨタやスバルの車という印象は薄かったです。

 実際に車を見ての感想は、「小さいな」。これです。小さいのでフェアレディZには見えないです(笑)。でもやっぱりトヨタっぽいデザインだとか、86っぽいデザイン、あるいは新しいスポーツカーのデザインだとは思えません。どこかで見たことが有る、子供が絵で描きそうなスポーツカーのデザインと言えるでしょう(最近の子はスポーツカーなんか描きませんが)。もちろん全然格好悪いデザインでは無く、水平対向エンジンを活かしたボンネットの低さ、そこから盛り上がっていくフェンダーなど、このサイズでこの量感が表現できてるのは良いと思います。

 スバル版のBRZとトヨタの86では外観上、バンパー、ライト、エンブレム程度の造り分けしかしていません。現在の日本でどれぐらいの台数が出るか未知数の車では、あまりコストが掛けられなかったのは想像がつきますが、もう少し雰囲気の違った顔つきのデザインに出来なかったのでしょうか?バンパー、ライト替えでもイメージの違う車は、世の中にごまんとありますし。またどちらかのブランドは3ドアハッチバックとかにして欲しかったところです。

 内装の質感は、メッキやスイッチ類のデザインで何とかカバーしようとしていますけど、プラッチッキーで安っぽい感じです。価格帯を考えると仕方無い気もしますが。と言うか、いい加減スポーティーな車は黒一色。あるいは差し色で赤。と言う短絡的思考から抜け出せないのでしょうか?黒は一番プラッチックの質感がバレる色です。こういう配色をしてる限り、若者や女性受けが大きく上がるとは思えません。

 色については外板色にも言えます。全く持って地味な色ばかり。スポーツカーを買うという高揚感がまるで有りません。白、黒、銀、ガンメタの無彩色。ここに紺、赤にくすんだオレンジ。どうしてこんな地味な色ばかりなんでしょう?ちょっと前に出たホンダのクーペCR-Zもこんな感じの色でした。全く創造性が感じられません。こんなのだから、スポーツカーやハイパワー車に乗っているのは、自分にコンプレックスが有るような、デブヲタばかりな印象になってしまうのです(←偏見)。

 おしゃれな人は色味の有る服を組み合わせて、自分を巧みに表現しますよね?反対に中学生男子とかは、黒一色が失敗せずに格好良いとばかりに、みんな右へ習えで同じ格好。スポーツカーを取り巻くこの厨二感にはゲンナリです。売れなくても1色は挑戦的な色。それを仕様変更毎に入れ替えるぐらいのことはやろうとして出来ない事じゃないと思うんですけど。

 インパネデザインは少し間抜けな感じ。車両状態を感じるために水平基調ってのは解るにしても、なんか助手席前のパネルとか変な形です。こちらでもスポーツカーに乗っている、所有しているという満足感、高揚感は得られません。どちらかと言うデザイン的に鈍くさい、トヨタとスバルが組んだらこんなレベル止まりなんですかねぇ?

 あと、走り屋向けに後席を倒すとタイヤが4本入るようになっています。でもイスを倒すスイッチは、前席を倒して後席に入ってでないと操作できません。これ頭悪いですよね。散々、ミニバンやハイトカーでイスの倒し方なんて工夫してきたのに。どうしてトランク側からのワンタッチで倒せないんだか。この位置にスイッチ着けて良いのは、ハッチバック車でしょう?

 なんだか結構ダメ出しが多くなっちゃいましたけど、今の時代にスポーツカーを出そうと言う考え、そして本当に出したと言うのは素晴らしいと思います。そして、トヨタはともかく、スバルがこれで多少は潤ってくれると嬉しいです。企画当初は若者の車離れを解消する1台にしたいなんて話がありましたが、この車ではそれは無理だと思いますし、トヨタもスバルもそれは諦めてるっぽいです(笑)。

 今の若者に乗ってもらうには、この形式、この価格帯では無理です。別にFRに拘らなくても良いですし、特に早い必要もありません。ヴィッツベースのFFで構いませんから、それに誰もがハッとするような美しいボディを乗せて、価格帯は全込みで200万円。欲を言えば180万円ぐらいで。まず安くないと。そしてそれまでの価値観を(スポーツカーなんて狭いし格好悪い)破壊するようなデザイン。これが必須です(そう言う意味ではハイブリッドなしのCR-Zが安く出てれば理想に近いんですけど)。

 でもBRZと86は、端からおっさんがかって乗りたかった車を全開で設計しちゃってます(笑)。こういう車を欲しがるのは40代以上です。でもそれで良いのかも知れません。今の子供達にとってお父さん達は、ミニバンを運転してどこかに連れて行ってくれる奴隷運転手に過ぎません。でも、スポーツカーを上手に運転してくれるお父さんはきっと違います。ミニバンにとって後席は天国ですが、スポーツカーにとって後席は、狭くて暗い閉鎖的空間です。必然的に助手席の良さに気づくでしょう。助手席に座れば、その視界、スピード感を体感できます。

 そうすれば、車は移動だけの手段ではなく、ジェットコースターのような楽しい乗り物だと気づくはずです。隣を見れば、その楽しいジェットコースターのような乗り物を自由に操ってる格好良い父親。いずれ自分も車を、スポーツカーを、自由に操りたい。そう思わせればしめたものです。ここで初めてトヨタスバルが、この車を開発した意味が出てくるのです。

 今の若者が乗りたいとは思わなくても、喜々として操っている父親を見て育つ、次の世代の若者が乗りたいと思うかも知れない。

 トヨタスバルは、その為にこの車の開発を止めずにやって欲しいです(スバルはするでしょうけど)。最初だけ売れて、あとは閑古鳥。そう言う車にせずに、年次改良で魅力を増す車にするべきです。小排気量ターボの追加だったり、マイチェン毎のデザインの大きな変更。価格帯を工夫して下げても良いです。やることはいくらでもあります。

 まず出したことを評価。あとは育ててくれれば、デザインなんかは目をつぶれます。取りあえず色が良ければデザインの七難は隠せますし。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)3(好)。

CX-5(12.6.5記)

 この車の発表は2月。それから約4ヶ月経ってしまいました。試座記がこんなに遅れるのは、そう。興味がないから(笑)。最近本当、こういう前方視界を大きく遮るSUVや、SUVとのクロスオーバー車が多くて困ります。特にデザイン的に冒険していると言う車は、大概SUVとのクロスオーバーになってしまって、流行だからしょうがないとはいえ、セダン、クーペ市場の縮小の要因になってると思います。

 興味が無いんですから、このままスルーしても良かったんですが、他にも国産新型車が色々出てきたので、CX-5もついでに現車確認してきました。 CX-5に興味が湧かなかった原因は、上記したようにSUVだからと言うことなんですが、それともう一つ。この車格好良いですか?筆者は、少なくとも日本で売れていようと売れていまいと、近年のマツダのデザインには概ね好印象を抱いていました。デミオ、アクセラ、アテンザ、ロードスター。全て単純にデザインのみで語ると非常に格好良くて良い車だと思います。

 ただ、ビアンテ、プレマシー辺りの微妙なデザインも有るには有るんですよね。このCX-5はどちらかというとその外れの方のデザインなのではないかと。一応国内では、CX-5はCX-7のダウンサイズモデルチェンジという扱いになっています。流麗でスポーティーだったCX-7が売れなかった(売れなかった理由は価格と、その価格に見合った質感が無かったからだと思いますが)反省からか、CX-5ではグリルをぐっと立てて、見た目の押し出しを強くしています。

 ところがこの顔つきと、マツダが掲げているテーマがあまり一致してないように思えるんですよね。パッと見マツダの車に見えにくい。斜め後ろから見た姿は、そこそこまとまっているのですが、こちらもまとまっているだけ有ってどこかで見た感(デュアリスとか)ですし、何よりこの車、以外と大きいんですよね。最初デュアリスやRVRぐらいだと思ってたんですけど、実物は一回り大きい。デュアリスだと凝縮感が感じられたデザインでもCX-5だとガバガバ感が出ちゃって、それもこのデザインのいまいちな点だと思います。

 CX-7の先代的存在のトリビュートも、このガバガバ感の有るデザインでしたから、マツダのこう言う車をデザインする上でのクセなんでしょうか?いずれにしても、デュアリスが出てRVRが出てからのこのデザインですから、先進的なマツダデザインにしては、遅れたデザインであることは確かだと思います。

 外装で思うのは、相変わらず塗装の品質が低い点、本当マツダのパール系の塗装は、基本ユズ肌。パールが入ってると光の反射でそこそこ誤魔化せるのが解っててやってるのか、どうしてこうまで平滑感出せないんでしょう?蛍光灯の下だけでなく、太陽光下でもはっきりと解ります。反対に、室内のピアノブラックパネルの質感はなかなか。スズキやホンダ辺りとはレベルが違う光沢を生み出しています。イスもそこそこアンコが詰まってる雰囲気ですし、クラスなりに頑張っている内装質感だと思います。ただサイズの割に後席は少し狭く感じますかね?

 と、全然メカニズムと関係ないところで、あーだこーだと言ってきましたが、CX-5の目玉はスカイアクティブ技術を活かしたディーゼル仕様に有るわけです。優遇税制の絡みもあって、CX-5の8割ぐらいがディーゼル仕様。お高いディーゼル仕様で、元を取るには距離と年数で(税制上6年保有の縛りもありますし)、取り返すしかないわけで、そう言う使い倒す系の人には、些末なデザインの話なんてどうでも良いことだと思います(笑)。

 理想を言えば、もうちょっと小さくて、もうちょっと躍動感があって、小さめの燃費が良いエンジンの乗った、CX-3なんて有ると、どーんと売れるんじゃないでしょうかね?

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)3 (嫌)

インプレッサG4/スポーツ(12.3.4記)-試乗済み-

 初代は8年、2代目は7年。3代目はインプレッサとしては異例の4年でのモデルチェンジとなりました。先代が売れなかったのか、トヨタからお金が入ってくるようになったからかは不明ですけど、マイチェンで顔を替えまくった2代目、5ドアだけと宣言したのにセダンを追加した3代目と迷走続きで、どうにもインプレッサという車を売りあぐねている感じです。

 特に三菱共々WRCから撤退して、インプレッサ=ラリー=走りの良さと言う売り方がしにくくなって以降、ランエボとのライバル関係が自動車雑誌の紙面を飾ることも少なくなり、インプレッサも往時を過ぎた、過去の車のようになってしまったきらいがあります。

 そんな逆境のなか生まれた4代目ですが、今回はそこそこ売れるかも知れません。と言うのも、現行レガシィの存在があるからです。レガシィと言えば日本で扱うのに適度なサイズでありながら、しっかりと作り込まれたクラスレスな車として、確実に固定ファンを抱えていました。ところが現行5代目レガシィでは、その販売の中心を北米と考え、一気にサイズアップを果たし、デザイン的にもそれまでのレガシィが持っていたも凝縮感のようなモノを失ってしまいます。

 北米でレガシィがヒットすることによって、この判断は経営的には成功したモノの、日本国内のレガシィファンからは、否定的な意見が多く上がります。そこでこのインプレッサの登場です。大きくなりすぎたレガシィに対して、日本国内で使いやすいサイズのインプレッサを代替モデルとして買ってもらおうという考えです。

 サイズは初代、2代目レガシィの中間程度の大きさになり、デザイン的にも、現行レガシィ風でもあり先代レガシィ風でもある。ただ現行レガシィのような腰高感は有りませんから、レガシィが失ってしまった凝縮感のようなモノを上手く表現できている感じです。インプレッサらしいかと言われれば微妙ですが、初代ヒット以降は明確なキャラクターづけに失敗してきたインプレッサなので、インプレッサに見えるより、レガシィの小さいのに見える方が大事という判断でしょう。

 個人的には直線基調でボクシィなデザインは、華やかさには欠けますが、スバルらしい実直な印象を上手く表現できていると思います。少なくとも2.3代目のインプレッサの迷走感は払拭できてますし、レガシィの代替と考えても、その雰囲気は3代目までのレガシィのイメージに近いのではないでしょうか?特にセダンG4の方は、明確にレガシィB4からの乗り換えを意識しているようで、リアにインプレッサの表記は無く、スバルマークと「G4」のエンブレムが有るのみです。これは「インプレッサ」のレガシィの格下的イメージを嫌い、レガシィ「B4」を連想させようという意図だと思います。

 内装質感はスバルらしいプラスチッキーで残念な仕上がり。先代に比べればマシになってるんでしょうけど、スバルの進歩のスピードより、他車の進歩の方がはるかに上で(笑)。スバルファンはここは目をつぶるところなのでしょうか?代々本当に質感が上がりません。デザイン的にも特に驚きの有るものではありませんが、今回は旧型レガシィの代替を狙っているわけですから、これぐらいコンサバなモノでよいのでしょう。

 例のごとく、自分から図々しく言ったりはしませんが、勧められればホイホイさせてもらうのが試乗のポリシー。勧められたのでG4の1.6Lに乗せて貰いました。短い試乗コースでの簡単な印象ですが、段差などはトントン軽やかに跳ねますが、ボディ剛性感も高く収まりも良いので不快な感じはしません。こう言う乗り心地が好きな人も多いと思います。ただタイヤ周りの遮音が全く出来てなくて、終始しゃーっと言う音が響き渡ります。雑誌提灯記事では「とても静かになった」的記述が多かったですが、ヤフーのユーザーレビューを見ると同様な書き込みをそこそこ見かけます。

 音に関してもう一つ。サンバイザーを跳ね上げると、それが天井に当たって屋根に音が響きます。今までこんな車経験したことがありません(笑)。天井内装パネルはぺらぺらでバイザーが直接天井に当たってる雰囲気です。大丈夫だとは思いますが、車横転時に不安が残りますよねぇ?

 アイドリングストップは、何の気配りもなくガッとブレーキを踏んで停止すると、確実に反応しますが、停止直前にブレーキを抜いて停止時の揺れを軽減するような、ていねいな運転をする人だと反応しないことが有るダメ設定です。アイドリングストップはまだまだ発展途上な技術なので仕方ないのかも知れませんが、今のところ雑な運転手向きな制御で残念に思います。コンピーターの設定の仕方の問題だと思うので、マイチェン時の修正を期待したいところです。

 総じて今回のインプレッサ、スバルらしい車に仕上がっていると思います。特にG4の方はセダン好きには刺さりそうな車です。プレミオ/アリオンやブルーバードのような旦那仕様ではなく、拘りが感じられるセダンに乗りたい。今までそう言う車はギャランフォルティスぐらいしかありませんでしたが、今度のG4はそれより一般的な格好良さがあると思います。

 ただひとつ解らないのが、エンジンのラインナップが1.6Lと2.0Lと言うこと。先代の廉価版は1.5Lだったわけで、今時モデルチェンジでベースモデルの排気量が大きくなると言うのはどうでしょう?しかも日本では、1.5L以上では税金の区分けが変わるわけです。WRCの現行規定が1.6Lターボですから、その辺りを睨んでいるなんて話しもまことしやかに語られていますが、今のスバルがWRCに復帰できるのでしょうか?

 むしろスバルにはターボエンジンの技術が有るのですから、むやみに排気量を拡大せずに、欧州車のように小さいエンジンにターボ付きで、エコイメージをアップさせるべきだったのではないでしょうか?現状日本車で、この小排気量ターボでのエンジンのダウンサイジングをしたメーカーは有りません。スバルのようなメーカーこそ、一番乗りすべき技術だったと思います。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)3(好)。

アクア(12.2.11記)

 トヨタのハイブリッドフルラインナップ戦略のキモが、このヴィッツクラスのハイブリッド、アクアです。北米ではプリウスCと言う名前で発売され、欧州では欧州版ヴィッツ=ヤリスにこのシステムを乗っけてヤリスハイブリッドとして発売される予定です(つまり形はヴイッツのまま)。

 少し前にホンダのライバル車フィットにハイブリッドが追加されましたが、あちらは例のごとくインチキハイブリッドで、ハイブリッドシステム分重くなって悪くなった燃費をハイブリッドで稼ぐという不思議な仕様。実用燃費で考えれば、ハイブリッド分値段が高くなるより、ホンダ得意のエンジン技術をつめて、アイドリングストップ&ティーチングシステムを搭載した素のフィットの方が(ホンダ版スカイアクティブ仕様みたいなの)、お得なんじゃないか?と言う疑問がついて回ります。

 それはこのトヨタのアクアにも言えて、ホンダより遥かに性能の良いハイブリッドシステムを搭載しているとはいえ、このサイズではハイブリッド分のプラスマイナス(燃費向上&優遇税制、価格&重量の上昇等々)と、通常技術をつめたコンパクトカーでは、どっちが得だかは、はっきりとは解りません。買い換えは5年後なのか10年後なのか?またその間の走行距離は?街中主体なのか高速主体なのか?、少なくともプレミオとプリウスほどの差は、このクラスでは生まれないと思います。

 ただ今の日本で車を売る上で「ハイブリッド」と言う言葉が正義なのはあきらか。ハイブリッドと付いていれば、車を買う免罪符になっている状況では、トヨタもホンダも、このクラスのテコ入れに、他社にない「ハイブリッド」を使うのは大いに肯けます。CR-Zだって、ハイブリッドじゃなかったら、あれほど売れなかったと思います。

 そんなコンパクトカーハイブリッド必要不要論は、結論が出にくいのでちょいと置いといて、単純に車としての仕上がりをチェックしていきます。デイーラーに置いてあったのは、最上級仕様のGのみ。これだけを見るとヴィッツクラスとは思えない十分な仕上がり。ハイブリッド車は大体質感が安っぽいのが泣きどころだったけど、アクアは最上級グレードに関してはインパネ質感などお金が掛かっている感じです。

 マイチェン前プリウスが、インサイトに引っ張られて安すぎたのに対して、アクアは適正価格(トヨタとしての)で、その分コストが緩くなったような仕上がり。と言っても、この誉め言葉は最上級仕様のみへのモノ。実は今回グレード毎の差別化が結構はっきりとしていて、インパネにソフトパッドが貼られていたり、メッキ加飾が有るのは、確かGのみ。それ以下はプラッチックむき出しだったり塗装での対応です。

 さらにベースグレードは169万円からでグッと安い印象ですが、これはリアガラス手回し、ヘッドレスト一体式シート、パッケージオプションもつけられません。色も無彩色中心の4色と完全に営業車扱いのグレード。昔のトヨタならいざ知らず、最近のトヨタはこういう見た目の値段の印象を下げる詐欺的価格設定をしていなかっただけにちょっと残念です。せめてこの仕様でも色が全色選べれば、個人向けユーザーでも買う人居ると思うのですけど、トヨタ自身がベースグレードの価格でアクアを売りたくないのがありありですね。

 室内空間はそんなに広くなく、昨今の広々したコンパクトカーの流れとは違う雰囲気。空気抵抗を考えて、車高を今の車にしては低めにした影響が素直に出ています。とはいえ狭苦しいと言うほどでもなく、ヴィッツより全長、ホイールベースが長い分、後席足下空間や荷質の広さにはヴィッツゆりゆとりがあります。

 外観デザインはヴィッツとプリウスの中間的デザインで上手くまとまってます。筆者は2代目以降のプリウス的デザインを全く格好良いとは思わないので(初代やインサイトの方が格好良いでしょ?)、トヨタのハイブリッド車の中で、一番格好良い形だと思います(カムリもSAIもも一つですし)。

 と言うわけで、最初の話しに戻ってしまうわけですが、あんまり厳密にトータルコストとか考えない人が「ハイブリッドだからきっとお得だよね」って印象のみで買う分には何も間違い有りません(笑)。特にそれまでもう少し大きなサイズの車に乗っていたのであれば、全く不満なポイントはないでしょう。ただハイブリッドを含むエコカーの技術はこれからどんどん進化していくはずです。それを考えると、今乗っている車を気に入っているのであればもう少し待ってから買い換えても、その時はさらに進歩した技術のエコカーが買えるはずなんですよね。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)3

NBOX(12.2.3記)

 軽自動車販売台数のトップ2社は誰もが知ってるダイハツとスズキです。では3位はどこかと聞かれると、多くの人はホンダと答えるでしょう。ところが正解はホンダではありません。三菱?違います。実は日産なのです。経営環境的に厳しい三菱はともかく、自社で軽自動車を開発していない日産に、ホンダが抜かれてしまっているのですから、いかにホンダの軽自動車に魅力が無かったのか明かです。

 ホンダはコンパクトカーの分野でフィットと言う大ヒット車種を持っています。そのヒットの理由は、なにはなくともセンタータンクレイアウトによる、広大なスペースをユーザーが評価したと言うことにあるでしょう。なのに初代フィット誕生以降、どうしてこの技術を軽自動車に採用しなかったのでしょうか?コンパクトカーですら、あれだけの効果が得られたわけですから、軽自動車に採用すれば、ホンダの軽の室内空間は圧倒的に広がるはずなのにです。

 センタータンクレイアウトは、運転席の下に燃料タンクを置くわけですから、万が一の出火事故の際には、運転席が一番危険になる可能性があります(ボディの中心に有るので、出火さえしなければ一番タンクが安全な位置とも言えますが)。軽自動車で求められる衝突安全基準では、この辺りをクリヤーできない可能性が有るから、今まで採用されないのでは?と勘ぐっていました。

 ところが一足先に三菱がiでこのセンタータンクレイアウトを採用し、今回ようやく本家ホンダが満を持して軽自動車に採用したのが、このNBOXです。今後ホンダはこのプラットホームを利用し、その全てのモデルにNの頭文字をつけ、自社製軽自動車の大改革を行うと言うこと。北米にばかり目を向け、日本ではフィットとステップワゴンしか売るモノが無いと言う状況がようやく改善されそうです。

 そんなわけで、軽自動車リニューアルの一番手に選ばれたのは、ダイハツがタントでボロ儲けをしているハイト軽のクラス。筆者は、頭上空間に使いもしない広大な空間がある意味を全く理解しないので、ここまで背の高い軽自動車が必要だとは思わないのですが(大体幅より高さの方が圧倒的に長いって、どう考えても不安ですし)、世間的には軽自動車はこの形こそが正解。過去全長1600ミリオーバーのクラスで、ザッツ、ゼストと連敗したホンダが、ついに1700オーバーで正面からタントに挑みます。

 外観デザインは、近年のハイト系の車を徹底研究したようで、全体からどこかで見たこと有る感が漂います。具体的にこの車のコピーって言うのは無いんだけど、「ホンダ渾身の新型軽」というような新しさは有りません。箱形の車のデザインで、ここまでホンダがふるわないのも逆に珍しいと思いますけど、ホンダとしては、センタータンクレイアウトに独自性が有るんだから、外観デザインは売れてる車の模倣で構わないと言うことでしょうか?カスタムグレードが有る辺り見ても確信犯ですよね・・・

 内装の質感はそこそこ。カタログにも使われている全面オフホワイトの内装は良いですけど、やっぱり汚れますよね(笑)。ベージュ系内装は、明るい雰囲気になって質感の低さを上手く隠すと思います。反対に黒系内装は、プラッチックの安っぽさが明確になるのでお勧めしません。

 特にカスタムだと、流行りのピアノ調パネルを採用してるんですけど、これがもう安っぽくてまるで駄目です。黒にパールを入れて光輝感で誤魔化してるつもりだろうけど、ピアノ調パネルは、ソリッドの黒で鏡面仕上げだからこそ映えるわけで。こんなガンプラビギナー塗りっぱなしみたいな柚子肌仕上がりならやらない方がマシだと思うんですけど。あと軽自動車なので、あまりお金を掛けずに死角を減らす数々のミラーはとても良いと思います。慣れれば色々なところが見えて助かります(夜は照明が無いとあれですが)。

 この車のキモのセンタータンクレイアウトで室内空間は広々。ただ後席の位置は固定で、スライドで荷室優先か後席優先かの選択が出来ないのが残念。跳ね上げ式にする都合上仕方ないんでしょうけど、これで後席の位置がスライドできれば完璧だと思うんですけど。現状固定位置では、後席足下空間が広すぎて、荷室が狭くなって勿体ないです。他社の非センタータンクレイアウト車のトランクと比べて割り出したんでしょうけど、固定位置もう少し前で、荷室スペース広めが良いと思います。

 取りあえずホンダスキーな人にとって、買える車が出てきたことは良いことだと思います。現在の日本では、乗り換えの際にクラスダウンする人も多いですし、ホンダは買っても良い最上級車が、事実上ステップワゴンですから上への買い換えは現状あり得ません(アコード、インスパイア、レジェンドは北米サイズでデカすぎて買わないでしょ?)。今までシビック乗っていたような人が、シビック無くなっちゃったし、維持費も安いし、広さも十分って買える車です。

 ホンダとしては渾身の出来の軽自動車を作ったつもりだったんでしょうけど、上記したように、センタータンクレイアウト以外はあくまでも他社の真似で売れるような車作りです。悪くはないけど、アイドリングストップの詰め方(停車してから停止。他社は7キロや9キロで停止)等取っても、他社はもっと本気です。軽自動車や日本市場に視点を向けたのは良いですが、真似だけでなくもっとホンダならではの本気を出して欲しいところです。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)3(嫌)

CR-V(12.1.27記)

 初代はRAV4と共に、世界中にこんな金脈有るんですよと知らしめた、日本発の新カテゴリーのコンパクトSUV。マツダのロードスターが多くのフォロワーを生んだのと同じく、RAV4、CR-Vも世界中のメーカーが同じような車を続々生み出し、未だにそのブームは継続中。ところが自らが生み出したブームでありながら、モデルチェンジ毎に世界サイズに拡大した影響か、日本ではRAV4共々息も絶え絶えな何とも残念な状態になってます。

 今や日本でのこのクラスの天下は日産のエクストレイルとジューク(デュアリスはもひとつかな?)。サイズ的にも日本最適サイズで、何よりコンサバなエクストレイルとアバンギャルドなジュークと言うバランスも良い感じ。この牙城を崩そうと、本家CR-Vが4代目で打った手は2.0Lエンジンの復活(笑)。ただサイズ自体はメインマーケットのアメリカンサイズそのまま、いたずらに拡大されなかったのは救いだけれど、それでもやはり日本では大きなイメージです。

 CR-Vはモデルチェンジ毎に巨大化したせいで、本来はコンパクトクラスだったモノが、現行では初代ハリアーぐらいのサイズになってしまっています。ホンダ自身も、モデルチェンジ毎の巨大化に合わせて高級化も進め、1台毎の利益が大きな車にしようと企んでいたきらいがあります。でも元々CR-VはシビックベースのコンパクトSUV。4駆システムにしてもなんちゃって4駆で、値段が安いことがヒットしたことの要因の一つでした。世界市場に目を奪われ、この基本的な部分を見落としたのが、日産に全てを持って行かれる原因だったわけですが、上記したようにいくら2.0Lエンジンを搭載して、値段を安くしようとしても、サイズが既にコンパクトで無いのですから無理があります。

 デザイン自体は、なかなか格好良いデザインだと思います。FCXクラリティ→インサイト→CR-Zと続く正当派ホンダ格好良いラインで、ホンダはこの路線でデザインを押していけば良いとすら思います。ただ2代目以降高級化に進んだ流れを修正したいのか、内装も含めて全体的な質感は安っぽい感じで、3代目のような車格に合った高級感は全く無くなってしまっています。ある意味アメリカンな仕上がりとも言えますけど、これを受け入れてくれるのはアメリカ人のみで、日本でこの感じなのは厳しいと思います。別に逆輸入車ではなく、日本国内で作ってるはずなんですけど、このサイズでフィット並みなクオリティ。ホンダはこの車をどう売りたいのでしょう?

 あと気になったのが、SUVなので車高はそれなりにあるけど、室内高が低いのか、着座姿勢は足を投げ出す感じで外観のクーペ風デザインに準拠。これはこれでスポーティーと捉える人も居るかも知れませんが、だったら素直にクーペ作ってくれという感じがします。

 サイズはハリアー並みなのに、品質はプラスチッキーで3代目にすらかなわず。なのに値段は250万オーバー。また宣伝もほとんどやってないことから見ても、ホンダはこの代で日本でCR-Vを売るのを諦めるかも知れません。現状のCR-Vではどう考えても日本で売るのは無理です。ホンダのアメリカ向け車は、本当に、日本に持ってくるとどうにもなりません。シビック最終型、アコード、インスパイア、レジェンド、エレメント、MDX、ラグレイト、揃って討ち死にです。

 確かにホンダの経営はアメリカ頼みな所はあるでしょう。アメリカ優先な車作りも理解は出来ます。い゛も国内で売れてるのはフィットファミリーのみ。これだけの規模を持つメーカーでありながら、どうしてこんな事になってしまうのでしょう?ようやく軽自動車に本腰を入れ始めているようですが、もう少し日本向けの車というのを考えるべきだと思います。

最大瞬間評価(目一杯ひいき目で見て)3(好)

 

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