シトロエン C5 2.0セダン  

(02.5.17記)(02.5.18補記)(02.12.16補記)
 我が家の誰からも好まれ、我が家で最長の8年8万キロを走破したXantiaはATの不調だけが問題点でした。修理をすると30万円コースと言われたので、治さずに騙し騙しで数年が過ぎました。しかし警告灯の誤作動、2度目のハイドロオイル漏れ等トラブルも起き始め(治そうと思えば治るんですけど)、そろそろ替え時かなと言う気がしてきました。後継車は、新車で国産車を買って数年で古く感じるより、高くてもモデルチェンジが長く、長い間愛着を持って維持できる外車の中から選びたいと言うのが家族全体の希望でした。当然ハイドロの乗り心地にぞっこんだった我が家の購入希望筆頭は新型ハイドロ車のC5です。他にもスカイライン250GTm、フォードモンデオ、BMW316ti、ルノーセニック等が候補に挙がりましたが、最終的には乗り心地の良さでスカイラインとの一騎打ちになり、結局モデルチェンジサイクルの長いC5が当然のように、Xantiaの後継車の地位を獲得しました。

 シトロエン好きの間でC5の評判はあまりかんばしくありません。主にデザイン面での評価が低いようです。「あんな数年前の国産車みたいなとろけたデザインはらしくない」「吊り目のデザインはどこの国の車か解らない」おおむねこのような悪評が飛び交っています。車雑誌での評価も同じようなモノです。新型シトロエンが出た時の常套句「またシトロエンらしさが薄くなった」は、Xantiaの時も全く同じ言葉を聞きました。本当にシトロエンファンと言うモノは、シトロエンには革新的なモノを求める割に、保守的な人物が多いようです(笑)。僕もインターネットで最初にスクープ写真を見た時はがっかりしました。実際にモーターショーで発表された形が、その写真とまるっきり同じだと解った時は、同時に発表されたルノーラグーナIIに心を奪われました。ですが日本に思ったより早く導入され、ショールームで実車を見て印象が変わりました。「これは凄い」頭の中で想像していたモノと形がまるで違うのです。もの凄く違和感のある物体が目の前に存在しているのです。

 とにかく抜群の存在感です。今ある新型車の中でこれほど「なんだこれ?」的雰囲気のある車があるでしょうか?実車は本当に何モノにも似ていません。「何モノにも似ていない」これほどシトロエンらしい誉め言葉があるでしょうか?平面ガラスかと見間違う真っ平らで広大なフロントガラスから、CXのリアガラスのような逆反り感のあるボンネットへのライン、前後上下が殆ど絞り込まれていない、丸いのに丸くない違和感全開のサイドパネル。ぱんぱんに膨らんだ印象の割に一段落とし込まれたリアハッチ。一つ一つのディティールが強烈に個性を発しています。何より全体的なイメージが、見事なまでにクジラ的なのです。DS、CXを見れば解ると思いますが、シトロエンのフラッグシップに大事なのはこの「クジラ感」だと思います。サイズ的にもほぼCXと同サイズのこの車。この車がシトロエンらしくないと言われるのが不思議でなりません。

 と、まぁデザイン的には今現在大変高評価です。では車としてはどうなのでしょう?乗ってみての第一印象は「堅い」この一言です。今までのXantiaが設計年次の古さから、幾分緩い感じだったのでまず最初に感じたのはこの感覚でした。ボディ剛性感が高くがっしりとした雰囲気での堅さです。と言っても足周りが堅いのとは訳が違います。現に速度が50キロを超えた辺りからのフワフワした乗り心地は、うちの初期型Xantiaとは比べモノにならないほどシトロエン的だと思います(ややこしいですが、BXの足周りに替えてからのXantiaの乗り心地に近いです)。ただこの「堅さ」、同時に「硬さ」にも繋がってしまうのです。前記したようにフランス車とは思えないほどボディの剛性感が上がっていますから、今まで路面からのショックをボディの緩さで逃がしていた部分が有りません。今まで「ドン・ぐしゃ」でこなしていた路面も「ドン・ゴン」という感じです。正直普通のバネのクサラにも低速域での乗り心地では負けるかも知れません。国産車でも低速域では、レガシィB4やスカイラインにはかないません。簡単に言うと現行プリメーラのような感じでしょうか?只まだ足周りが馴染みきっていない、タイヤが堅めのミシュランのオールシーズンタイヤである等の要因もあるので、しばらく乗ってみないと解らないとは思います(6000キロを越えた段階でダンロップ/ル・マンに交換する。静粛性はアップしたモノの乗り心地はあまり変わらず)。

 元来シトロエンは長距離クルーザーだと言われますが、C5もその言葉に偽りはありません。Xantiaは(うちの車だけの問題かも知れませんが)、110キロぐらいまでが快適クルージングの限度でした。それ以上のスピードを出すと、安定はしているモノのちょっと車が「頑張っています」的雰囲気でリラックス出来ませんでした(欧州車なのですから本来そんな筈がないのですが)。対してC5は固い殻に包まれているかのような高いボディ剛性感で、全くミシリとも言わずに140キロぐらいで巡航できます。2.0Lエンジンも高速上りでの追い越しなどでは非力な面を見せますが、通常の流れに乗るのであらば全く問題は感じません。市街地低速路での堅さの半面、高速での安定性と独特なフンワリとした乗り心地、Xantiaよりより一層高速クルーザーとしての性能に磨きが掛かったと思います。

 この車最大の問題点はATです。うちの初期型Xantiaは機械式?のATで車速に応じて変速されていきました。ですから速度計を見なくても速度が解ったほどです。対してC5のATは国産車のような最新式の電子制御マニュアルモード付きATです。これがもうおバカさんでおバカさんで困っています。どんな状況でも確実に3→2に落ちる時にドンと言うシフトショックがあります。色々運転パターンを工夫したのですが、どうやってもこの症状は出てしまいます。また一旦減速してから再加速なんかする時にも大きめのシフトショックが起きる事があります。一応学習機能付きな筈なので、マニュアルモードでせっせと変速タイミング教えてやっているのですが、どうやらそういう意味での学習機能では無いらしく、一向に変速タイミング、ショック共に変わりません。このATはプジョーシトロエンルノーの共同開発な筈ですが、こんなの使うぐらいなら素直に日本製のATを採用すれば良いのにと思います(シトロエン日記にも記しましたが、ATの初期化をしたところシフトダウン時のショックは劇的に軽減。是非やってみる事をお勧めします)。

 内装レベルはまぁそれなりです。個人的にはXantiaのフィニッシュの方が良かったと思います。と言ってもそれはデザインのことを言っている訳ではなく、色や質感の話です。Xantiaは単純に黒色でソフトパッドを貼ったようなベーシックなインパネでした。対してC5はグレーを2色組み合わせたり、メタル調の塗装をしたり、変に高級感を意識した素材選びが逆に貧乏くさいく感じてしまいます。こういう点では残念ながら国産車的だと思います。国産車で言えば、格下クラスとは言えカローラには当然かないません、三菱、マツダぐらいのレベルでしょうか?インパネのグレーは若干薄く、晴れた日にはガラスに映り込みますし、天井布地成形などは、大丈夫かな?と思うぐらいヤワな立て付けです(でもこれでビビリ音が出てないのだから良いのでしょうけど)。またスイッチ類の感触は独特な感じです。ハザード、クラクション共に、口では言い表せませんが変な押し応えで、いまだにクラクションは上手く鳴らせません。

 イスの出来もXantiaよりは少し劣るかなと感じています。素材も変にズボンに密着抵抗する素材で気になります。これまたまだ馴染んでいないと言うのも有るでしょうけど、やはり同じフランス車でもルノー→シトロエン→プジョーの順にコストの掛け具合が違うと思います。室内空間はたっぷりとしています。最新の国産車ほど呆れるほど広くは有りませんが(特に後席)、必要にして充分なゆとり有る空間と言えるでしょう。何より後席中央足下に、まったく出っ張りの無いのは凄いことだと思います。

 とにかく今はまだ車も体も馴染んでいませんので、あまり好意的でない記述もあります。ですがやはりこの価格帯で、これほどまでのメカニズム、これほどまでの存在感、そして長く乗れるという安心感のある車はそうは無いと思います。対価格での満足度、それがハイドロシトロエンの最大の魅力では無いでしょうか?


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何、シトロエンの話がもう少し聴きたい?(トラブル情報等あり)

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