(12.4.6記)
C5が次の車検を取ると10年目に突入するのと、そろそろ車自体もやれて来たのとで、次期主力車種の選定作業に入ることにしました。今回の縛りは中古でも新車でも250万円程度。国産、外車からざっと気になる車を選び出し、片っ端から試乗して気に入れば買うと言うスタンスで望みました(その際の個々の評価は「ちょっと気になる車大試乗会2回目」にまとめてあります)。相変わらず同居の両親は「歳を取ってきたので小さめな車が良い」なんて事を言ってますが、メガーヌもプントも殆ど乗らなかったのですから、話半分に聞いておきます。
候補車は上記まとめページに記してありますし、長くなるので最終候補に残った車で話を進めます。最終候補に残ったのは、シトロエンC3新車、DS3新車、V36スカイライン中古車、新型C5中古車。筆者はC3。母親はDS3、父親はスカイラインを推しています。父親はとにかく250万円も払って、昔で言うリッターカークラス(実際は1.6Lですが、ライバル車は1.2L等有るので)を購入というのが納得出来ない様子です(笑)。母親はおしゃれさん気取りなので、ガンメタ等のつまらない色しかない国産車にはあまり乗りたく無さそう。筆者もスカイラインのデザイン自体は気に入ってるのですが、やはり色がつまらないのと、マイチェン済みで数年で型遅れになるのが嫌でした。
唯一3人の落とし所として最適だったのが2代目C5です。中古ならなんとか予算近辺に入ってくる価格。乗り心地はより一層フワフワで、シトロエンスキーハイドロスキーとしては外せない1台です。ただ全幅が1800半ばを越えるサイズに母親がビビリぎみだったのと、昔の人な父親が、スカイラインオーナーと言う響きに後ろ髪を引かれているようでした。そんな状況下で中古の2代目C5の試乗や商談を進めていたのですが、その最中にウルトラCなお話が転がり込んできました。
商談を進めていた中古車店はシトロエン正規店でしたので、系列に新車ディーラーも有るわけです。そちらの新車ディーラーの在庫に、マイチェン後型遅れ(この時点で2011年モデルとして1.6Lターボ発売済み)の2.0Lモデルが有ると言う話。さらに外資なので年度末が12月となり、それまでに在庫を無くしたいと言う事で、超大型値引きを提示してもらいました。元々中古車のC5で探していたので2.0Lモデルで問題有りませんし、中古のC5は前期型のさらに前期モデルでナビが付いてません。対して在庫車はビルトインナビ付きです。当初の予算なんか遙かにオーバーしてるのですが、ここまでの好条件に心が揺れないわけがありません。決め手となったのが、在庫車の色がありふれた銀やガンメタでなく、ベージュメタリックであった点。結局当初の250万円の小さめな車なんて条件は何一つクリアされずに、C5の後継車は無事(笑)C5となりました。
我が家は先代C5には、世間の評価とは全く逆で全てにおいて満足していたのですが、2代目C5は、乗り心地と価格のみで即決したような状況でしたから、購入後色々思うところが出て来ました。まず納車当初一番違和感を感じたのが、合皮とファブリック、両方の良さを全く引き出してないイスです。ランバーサポートは変な位置に有るは、合皮のヒザ裏はパンッと固すぎて馴染まないわで、ちょっと乗ってるだけで腰が痛くなってしまいました。
2代目C5は昔の国産4ドアHT的プロポーションなので、背もたれを寝かせ気味にセットして、背中と腰、尻、全面で体を支えるようにすると、腰が痛くなりにくいのですが、今度はそのシートポジションと狭い視界、デカいボディで取り回しに四苦八苦しました。先代C5はセダン(ハッチバックですが)で有りながら、その当時欧州で流行になりつつあったミニバン的プロポーションを採用していましたので、背も高ければ、室内空間にも余裕があり、視界もピラーの太さは別として至極良好だったわけです。
ところが2代目C5はベンツCLSのヒットを横目で見たのか、背が低くキャビンが小さく見えるプロポーション。視界ははっきりと狭く悪くなってますし、車に乗り込む際にも4ドアHT全盛期の国産車に乗り込むような、頭をかがめながらくの字な姿勢で潜りこまなければいけません(一応降車時にシートは後方に移動するのですが)。ちなみに全高は先代比10ミリしか低くなってないので、見た目の印象ほど車高の低い車では無いのですが、室内高はどーんと先代比40ミリも低くなってしまってるので、そりゃ狭く感じるはずです。
この視界に寝かした着座姿勢、さらにボディが先代より2周りほど大きいので(全長4620→4795、全幅1770→1860)取り回しには慣れを要しました。筆者は車幅感覚には割合自信が有るので、問題だったのは今時バカみたいなロングノーズなフロント部分です。元々シトロエンはフロントオーバーハングが長く、リアオーバーハングが短いプロポーションですが、この車のフロントは酷いです。ラジエターから前、50センチ程度全くなんにも無い空間が広がっているんですから(笑)。
室内の悪い話しが続きます。先代C5は各所に小物入れが有りました。ドリンクホルダーが全く使えない形だったのはともかくとして、運転席右側に1.5Lのペットボトルが入りそうな広大なモノ入れが有るのを筆頭に、どれもそこそこ実用的なスペースでした。ところが2代目はサイズがこれだけ大きくなったにも関わらず、小物入れはどれも実用的で無く使えません。オーディオ下のスペースで顕著ですが、根本的に奥行きが足りずモノがしっかり収まりません。全長、ホイールベースが伸びた分はどこにいってるのだ?と言う感じです。何より今時ドリンクホルダーが無い奇跡(笑)。実際は中央アームレスト内部に有るのですが、モノ入れとして使用するとドリンクホルダーとしては使えません。結局運転席右側の、先代では1.5Lペットが入ったスペースをドリンクホルダー代わりに使っています。
思えばC5の前身のXantiaもグローブボックスを筆頭に小物入れがダメな車でした。あの車もドリンクホルダーは無い(時代的に仕方ないかも知れませんが)、地図を入れる場所もドアポケットに深さが無くてダメと、今回の2代目C5と全く同じでした。本当振り幅が極端というか、モデルチェンジ毎に正常進化出来ないもんですかね?(笑)
さらに細かな使い勝手の問題を上げていくと、ハザードスイッチが助手席前に有って遠いです。確か欧州では、緊急時に助手席から押せる位置にハザードスイッチが無いといけないとか言う法律?が有るらしいので、その影響かも知れませんが、運転席からは視線移動も大きくてちょっと危険です。同様に時計もナビの左上端に小さくあるだけですので、この確認もしづらいです。
ウィンカーは軽く触れるとその方向に3度だけ出て戻さなくて良いようになっています。これは車線変更時には有効かも知れませんが、何かの拍子でちょっと触れただけでも作動してしまい、さらにキャンセルの方法が無いので、周りの車に迷惑が掛かります。せめて出した方と逆に触れればキャンセルになるようにして欲しいです。
あとこれは年度モデルによって違うようですが、純正装着されているオーディオデッキの使い勝手も最悪です。デザイン優先で、ボタンの数を減らそうとしてるんでしょうけど、全く直感的に操作できません。どうしてラジオのチャンネルスイッチを5.6個並べるのが嫌なのか?オーディオメーカーのバカデザイナーの頭の中をのぞいてみたいです。
ではそろそろ運転しての話しに移ります。納車時に最も印象的だったのはやはりその乗り心地。自分で所有したことが有るハイドロ車は、Xantiaボンネットへへの初期型、C5前期型なので、どちらも5千〜1万キロ乗ってハイドロ本来の味が出るという感じで、この点を理解していない自動車雑誌が走行距離の少ない試乗車で「今度のモデルはハイドロの良さが薄くなった」などと書かれていて悔しい思いをしていました。ところが2代目C5は最初っからふわふわなので、雑誌でもその乗り心地にノックアウトされる人が続出な感じです(笑)。
ただこのふわふわさと、大きく太いタイヤがミスマッチなのは明らか。ハイドロのレベルが高いので、それなりにこのタイヤを履きこなしていますが、舗装の修復を繰り返した道や、首都高の目地段差ではダンダンとショックが伝わってきます。もう少し細い日本製のタイヤであれば、ふわふわなハイドロの乗り心地とよりマッチするだろうと思えます。
前記したように、ハイドロと言ってもそんなにふわふわでない仕様ばかり16年乗り継いだ筆者としては、正直この最初からふわふわな2代目C5には困惑もしました。試乗時にはふわふわさにばかり目が行き細かな点には気がつかなかったのですが、このふわふわさは結構運転に気を遣います。筆者は同乗者が居る場合は、なるべく姿勢変化の少ないスムーズな運転を心がけているのですが、今までより以上に揺れというモノに神経を使います。
加減速時の動きは当然ですが、特に気を遣うのは交差点などを曲がる際のハンドル捌きです。今までのハイドロ車でも、大きめや急にハンドルを切れば、ハイドロ車らしいぐらっとした動きは生まれていましたが、この2代目C5ではその動きは非常に大きなモノに感じます。また意外なほどハンドルの戻りが悪く、セルフセンタリングを長く採用していたメーカーとは思えないほどキャスターアクションが弱いです。これらのことからスムーズな運転をするには送りハンドルの方が良いのでは?と思わされたりします。
ふわふわなハイドロの乗り心地も、乗り物が好きな人には大変快適などんぶらこな動きなのですが、筆者が以前所有したハイドロ車とは違い、どんな小さな路面の凹凸にも過敏なほど反応してどんぶらするので、乗り物に弱い人には苦手な動きに感じるかも知れません。少なくとも町中〜幹線道路程度の速度域では、フラット感で、先代C5やXantiaより劣ると思います。もちろんハイドラクティブですので、ハイドロの設定をハード側にすれば、どんぶらこ感は軽減され、先代C5に近い乗り心地にもなります。ただこうすると前記したタイヤのネガも強調されてしまうので、どちらを選ぶかは悩みどころです。
ATは残念ながら2.0Lを購入してますので、昔ながらのAL4、4速ATです。ATの制御自体は大変巧みで、先代C5にあったような大きな変速ショック(コンピーターのリセットで解消)は有りません。たまに2→1に落ちる際に軽微なショックが有りますが、出ない時の方が多いです。また4速に入るタイミングも60キロ前後で、以前のように70キロまでは絶対に入らないというような頑なさが無くなり、総じて不満のないATで、先代C5のようにマニュアルモードを使用する事も無いかなと考えていました。
ところが、燃費が悪いんですよね・・・先代より大きく重くなってるのに、エンジンは同じ2Lなのですから当然なんですが、先代がリッター8キロ(市街地中心、AT/Mモード使用)は走っていたのに対して、AT任せにしているとリッター7キロ(市街地中心)を絶対に越えないんです。さすがにこのご時世にリッター6キロ台は納得いかないので、渋々マニュアルモードを使うようになりました。マニュアルモードで積極的に上の段を使う変速をすると、リッター7.8キロ程度はキープ出来る感じです。先代C5に比べて、AT/Mモードの操作性は劣る感じです。先代がスコスココキコキ快適に変速出来ていたのに対して、シフトの感触がぐんにゃりで手応えはもう一つです。さらにダウンシフトの時の反応が悪く、明らかにコクッと下げているのに、変速しないことがままあります(クレーム対応、ユニット交換で改善されましたが再発気味)。
Xantiaから先代C5にモデルチェンジしたときに、多くのシトロエンファンはサイズ拡大やデザインの方向性の違いを敬遠し乗り換えをしませんでした。ですが筆者は、確かにサイズは大きくなったモノの、信頼性の向上、道具としての使い勝手の良さ、そしてハイドロならではのフラットかつ心地良い乗り心地。全てを気に入り乗り替えに大変満足しました。対して今回のモデルチェンジ、名前はそのままC5ですが、車としてのコンセプトは大きく変わったように感じます。モデルチェンジを企画した時期が丁度欧州バブル期で、衝突基準という免罪符を手に、大きく立派に見えること。そこにばかり視点が行ってしまっています。これはどのメーカーの車も同じで、本来小型車のフォーカスの全幅が1800ミリを越えてしまったり、C5とプラットフォームを共有するプジョー407も、406→407のモデルチェンジで同じように無駄な巨大化を果たしています。
このデザイン優先の巨大化は、室内空間に拡大したサイズが全く生かされてませんし、使い勝手などもモデルチェンジ前より悪くなっています。これは正直肯定できる方向性とは言い難いです。そのデザインにしても、確かに格好悪くは有りません。明確にサイズアップしているのでその存在感はなかなかのモノで、田舎町では結構な注目度です。でも基本的プロポーションや、逆ぞりのリアウィンドーに若干シトロエンらしさは感じるモノの、全体の印象としてシトロエンらしい驚き、他と違う感はあまり感じられません。
先代C5がさほど成功作とは言えなかっただけに、シトロエンが2代目で目指した方向は頭では理解できます。サイズアップも他の欧州車を見ていれば想像がついたことですし、シトロエンとしての特殊性よりも、ドイツ車などに似たデザインで一般受けを狙い、カンパニーカー需要を獲得しようとしたことも。ただ方向性はそれでも、しっかりと工夫し煮詰めて開発すれば、室内空間は先代と同レベルはキープ出来たでしょうし、使い勝手もこんなに悪くなるはずがありません。このサイズ形でも、その辺りをしっかりと詰めていれば、誰もが納得する素晴らしい車が出来たはずなのです。欧州車は実用的と言われていたあの良さは、欧州バブルの前では全くかすんでしまっていました。
ただシトロエンも親会社のプジョーもこの失敗には気づいたようで、C5とプラットフォームを共有している407がモデルチェンジした508では、サイズこそまた大きくなっていますが、そのプロポーションを見る限り、キチンとしたセダンとしての本質を見つめ直した形に戻っています。またシトロエンも本来はC5の兄弟車になるはずだったDS5をC4ベースで作りダウンサイズをはかり、さらにコンセプトもグランツーリスモミニバンとでも言う、走りと室内空間を両立する方向性に変わっています。
C5の日本仕様自体も、マイチェンで1.6Lターボのみとなり、シトロエンのイスとしては残念な出来だった合皮とファブリックのシートをやめ、オールファブリックに変更されました。またお値段もようやく400万円を切る価格になり、若干お求めやすくなりました。どう考えても最初からこの仕様で出しとくべきで、誰かイスだけでも交換してくれないかなと切に思います(笑)。
と、かなり辛口に2代目C5についてまとめましたが、筆者はシトロエンスキーなので、基本ハイドロで乗り心地が良ければそれでOKです。最優先項目がそれなので、他の点数が低くても我慢できます。前記したように格好悪くは無いわけですから、ドイツ車しか乗ったことが無いような人に、この独特な乗り心地を味わって欲しいとも思います。ドイツ車から乗り替えるのに抵抗のない形。それでいて乗り心地は抜群。お値段も同サイズで比べれば格安。このC5が売れて貰わないと困ります。
と言うのも、このC5には欧州でハイドロでない金属バネ仕様も準備されています。C6もディーゼル専用車となってしまいました。DS5は前記したようにC4ベースになった為ハイドロではなくなってしまいました。このままではシトロエンはハイドロをやめてしまうのでは?そんな不安を感じてしまいます。ハイドロで乗り心地が良い車が作られ続けるためなら、このドイツ車風のデザインでも構いません。とにかくC5が売れて貰わないと本当に困るんです(笑)。
何、シトロエンの話がもう少し聴きたい?(トラブル情報等あり)