2001. 3.12 高橋誠
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[ねどこ/寝だな]でうつらうつらしていたジョンは、 |
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「あの男、[看/監]視をやめたんですか?」 |
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もう一時間半ばかり、 |
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しかし風は北西なんだ。 |
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ジョンは、[ねどこ/寝だな]からそっとぬけだし、 |
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ぼんやり[ひか/光]っていた。 |
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「風は北西だよ。」 |
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「ここから出て[行/い]くには、 |
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しずかに前へ[行/い]って、 |
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わしが船を右へ[うご/動]かすから、 |
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メ[ー/]ンスルをあげるのは、 |
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ながく[ひか/光]るのだった。 |
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北東の陸上の夜空に、 |
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長いヘッド岬がもり[上/あが]ってかくしている、 |
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「[タイヤ/帆結び]は、もうわたしが |
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うすぐらい[帆柱/マスト]の上の方を |
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[巻揚機/ウィンチ]はつかえないからな。」 |
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「それにどならない[方/ほう]がいい。 |
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引き綱を船尾へもっていった[方/ほう]が、 |
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まあ、船もうまく[向/む]きをかえてくれるだろう。 |
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フリント船長が[舵/かじ]のところへ[行/い]くまで、 |
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ジョンは、左舷の[帆あし綱/シート]をつかんで、 |
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「終[/わ]り]。」 |
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船の真横に見え[、/]…… |
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灯台の灯が、[まっ/真]正面に見えてきた。 |
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ぬれた端を巻きおさめてから[、/]いった。 |
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ここにのこってた[方/ほう]がいいわね。 |
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ステースルに北西の風をいっぱいに |
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灯台を目標に[舵/かじ]をとってる。」 |
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ジョンは、[苦労し/そっと歩い]て船尾まで[行/い]った。 |
John scrambled aft. |
その間、[舵/かじ]をとってくれ。 |
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漁船がはいってくるかも[知/し]れないし、 |
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どなるかも[知/し]れない。 |
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船首右舷にくるように[舵/かじ]をとってくれ。」 |
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船長の手であたためられた[舵/かじ]をにぎった。[/(改行)]
すぐに、ランプ二つが |
and took the tiller, warm from the skipper’s hand.
A moment later the two lanterns were on deck, |
フリント船長が注意[深/ぶか]くことをはこんでいる |
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赤や[青/みどり]の光がちらりとでも |
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green |
[横静索/シュラウズ]の所定の位置に |
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あの探照灯を[向/む]けていないよ。」 |
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[だ/出]してないとはだれにもいえないよ。」 |
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ジョンは[舵/かじ]をわたして、 |
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テロダクティル号の[前墻支索/フォアステー]にぶらさげてある |
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部下たちは、まだ[、/]ねむっているのだ。 |
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[彼/かれ]ら、どんな顔をするだろうなあ!」 |
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いくらも[行/い]かないうちに夜もあける。」 |
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「メ[ー/]ンスルをあげたらどうです?」 |
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三十分後、[/風をさえぎる]海岸[の保護の手/]をはなれはじめたシロクマ号は[/、]船首の波切りの下で[、/]小さなつぶやきを |
Half an hour later, as she began tolose the shelter of the shore, a gentle murmur began under her forefoot. |
[斜桁/ガフ]のきしみ──みんな、メ[ー/]ンスルがあがる時の音だ。 |
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すぐに、寝[床/だな]から出ると、つま先[立/だ]ちしながら船首の[部屋/へや]へ[行/い]き、 |
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「ディック、」[と、/]ドロシアは[/、]あわててディックの[ねどこ/寝だな]に首をつっこんで[、/]いった。 |
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寝[床/だな]からころがるように出て、舷窓のドロシアのところへ[行/い]った。 |
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[昇降口/ハッチ]の階段をかけのぼった。 |
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ジョンが[舵/かじ]をとっており、 |
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メ[ー/]ンスルがあがっていくところだった。 |
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メ[ー/]ンスルが固定すると、つぎに[、/]ジブがあがった。 |
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「ぼくがいて手[伝/つだ]ったら、もっとずっとよくやれたのにな。」[、と/]ロジャはジブシートをひっぱりながら |
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ティティの白い顔が[昇降口/階段]にあらわれた。ティティは一言もいわずに、 |
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「はい[/、]これ、あなたのセーター。 |
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「しかし、なんで[、/]きみたちまぬけどもは、 |
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あの湾まで、[詰開/つめびら]き航海(1)を |
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その時には、[エンジン/機関]にたすけてもらうよ。」 |
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「港を出る時だって、[エンジン/機関]を使った[方/ほう]がよかったんだよ。」 |
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出航でございって知ら[し/せ]た[方/ほう]がよかったんだな。」 |
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「あっ、ごめん[/ごめん]。」と、ロジャがいった。「それ[、/を]忘れてた[/よ]。」 |
‘I forgot that,’ said Roger. ‘Sorry.’ |
「わしらが岬のはなをまわるまで[/、]やつが出てこない |
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湾の奥深くかくれてしまうまでは、[やっつけ/だしぬい]たとは[、/]いえないんだ。」 |
We can’t say we’ve done him until we’re tucked away out of sight.’ |
ぼくらを[見/み]つけたら、 |
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ラス岬を見に[行/い]こう。 |
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あいつをつれてなんか[行/い]かないから。」 |
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東の空が明かるみはじめ、シロクマ号は、その光に[向/む]かって |
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ヒツジや[雌/牝]牛がうごいている |
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「今、[/あっちが]港から出てきたら、 |
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とっても[、/]きげんがわるいだろう[ね/なあ]。」[と、/]船室の中を |
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はらがへったのか?」[と、/]フリント船長がにやりとして[、/]いった。 |
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「おかゆよ。」[と、/]スーザンが |
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みんな[食/た]べに[行/い]ってくれ。」 |
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ロジャは[/とくに気をくばって]いちばん最後[になるようにとくに気をつけて、/までのこっていて]船長以外のみんなが下におりてしまうと、ぶらりと[羅針儀/コンパス]を見にいった。 |
Roger took particular care to be the last to go, lingering to look at the compass when everybody else but the skipper had gone below. |
「[行/い]ってこいよ、ロジャ。 |
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それから、[エンジン/機関]の準備をたのむ。」 |
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おかゆのおわんを操舵手に[はこんで/とどけに]きた。 |
Susan brought up a bowl of porridge for the steersman. |
ねてくれるとは思えないよ。」[と、/]フリント船長[が/は]、心配そうな |
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新しい気分が生まれていた。それは、りっぱな港や停泊[所/地]をつぎつぎに |
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ぜんぜんなかった[もの/気分]だった。 |
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ただどこかへ行く場合と、[さけ/かわさ]なくてはならない敵がいる場合では、たいへんなちがいがあるのだ[った/]。 |
There is a tremendous difference between just going somewhere and having an enemy to dodge. |
「[人はなんというかもしれないけれど/だれがなんといおうと]、」と、ナンシイがおかゆを[食/た]べおわっていった。 |
‘I don’t care what anybody says,’ said Nancy, finishing her porridge. |
たまご収集家に[、/]とっても感謝してるわ。[だいじょうぶ/大丈夫]よ、ディック。あ[ん/な]た]の考えてることはわかってるわ。 |
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わたしたち、[今頃/いまごろ]帰るとちゅうだったわよ。 |
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「[うまく身をかわしちゃう/こっちはうまくかわせる]わよ。」 |
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‘We’ll dodge him all right,’ |
どうしてあの人には[、/]そんなに重要なのかしら。わたしには、わからない[/わ]。」 |
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「だれが、あの鳥[、/を]発見したの? あなたよ。テロダクティル号の鳥類学者じゃないの[よ/]。 |
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「ころさ[れ/せ]やしないよ。」 |
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「[ただね、/]どんなことがあっても、ぼくらの[行/い]くところを彼に知られずに、写真をとらなくちゃならない[んだよ/。それだけさ]…… |
Only, whatever happens, |
ぼく、甲板へ[行/い]くよ。」 |
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まるのみにしたのよ。」[と、/]ディックが階段をあがって |
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「また、[後/あと]をつけられるのは |
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「さ、はやくごはん[食/た]べちゃいなさいよ。」 |
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「ジムおじが[エンジン/機関]を[使/つか]うっていったの、 |
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フリント船長の方でつかうといえば、すぐに[うご/動]かせるな。 |
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ふたたび甲板に出て[見/み]ると。」 |
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宙をとぶように追いかけてくる[ね/]。」 |
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食事をおすま[し/せ]になったら?」 |
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[エンジン/機関]の調子を[見/]て、動かそうじゃないか。 |
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「がんば[れ/ってよ]、シロクマ号さん。」 |
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タタッ……[。エンジン/機関]が動きだした。 |
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船の現在の速度を[見/み]るのではなく、 |
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どれくらいはやまるかを[見/み]るためだった。 |
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まるで、だれかが[/、]後[/ろ]から[、/]ふいに船を |
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帆をふくらま[しエンジン/せ、機関]を全開した |
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「さあ、[降/お]りていって、朝ごはんを |
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[エンジン/機関]を[かけ/うごかし]た場合、どんな進路で[詰開/つめびら]きしたらいいか |
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おい、ナンシイ、メ[ー/]ンシートを力いっぱいひっぱってくれ。 |
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ジョン、船を風上に[向/む]けろ。」 |
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手のあいているものは、みなメ[ー/]ンシートをひっぱり、 |
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「これでよし、ジョン、[詰開/つめびら]きだ。 |
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フリント船長は、ヘッド岬の北側[になっている/の]ひろい湾[の向こう、/と、そのむこうの]きのう出てきた海岸の方を[じっと見/ながめ]た。 |
He looked forward across the wide bay north of the Head towards the coast they had left the day before. |
[エンジン/機関]がなければ、こうはいかないんだ。もうこのまま進むだけでいい[んだ/]。 |
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ジョンが[舵/かじ]をにぎるシロクマ号は、 |
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湾を[よこ/横]ぎってつき進んだ。 |
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なぎや[、/]とるにたらぬ風と[、/]悪戦苦闘した |
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六時間も潮にさからって |
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力をあつめて船に刃[向/む]かってくる時には、 |
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たえまなく強い北西の風が吹き、 |
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[エンジン/機関]を[かける/うごかす]ことができるのだった。 |
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逆に進めば十時間はかかるところを、シロクマ号は今、二時間ほどで、 |
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白い航跡を残しながら、[どんどん/ぐんぐん]進みつづけた。 |
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北の方に煙が二[筋/すじ]見えるだけで、 |
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「ゲール人の[/お]城は、その[向/む]こうの尾根のうら側ね。」 |
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「この進路では、あの湾に[向/む]かいません。」 |
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速度が[落/お]ちるわ。」 |
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わしらがどこへ[行/い]くか、 |
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まわったとしたら、白帆が見える[よ/]。 |
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帆をおろしてしまえば、けっしてみつからない[ね/]。 |
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[舵/かじ]はペギイがとってくれ。 |
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すぐに湾の入口に[舵/むけてかじ]をとってくれ。」 |
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船首の帆がおり、メ[ー/]ンスル]がおりた。 |
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乗組員たちは[、/]機敏に[うご/動]いて、帆があちこち動かないように[ガスケット/帆結び]をむすんだ。 |
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わしが[舵/かじ]をとってた[方/ほう]がいいからな。」 |
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「あいつを[やっつけたぞ/だしぬいたぞ]!」 |
‘We’ve done him!’ |
さあ、[今度/こんど]はきみの鳥だ。 |
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ひとりも見ていないわ。」[と、/]ナンシイが、きのう背の高いゲール人[の/が]立っていた岩を見[ながら/て]、 |
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ほがらかに手をふっても[答/こた]えず、 |
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大きな双眼鏡を目からはなしながら[、/]いった。 |
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何キロも[向/む]こうなのよ。」 |
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「[やっつけちまったんだから/もうだしぬいちまったんだ]。ロジャ、[エンジン/機関]をおそくしてくれ。 |
‘We’ve done him. |
前部甲板で[、/]いそがしくいかりの準備を |
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[エンジン/機関]がせきをしてとまった。 |
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ここを出航してから二十四時間後に、 |
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潮が変わり、[今度/こんど]は入江の中へ[動いて/流れこんで]きた。 |
The tide had turned and was coming in and the Sea Bear lay with her head towards the sea. |
シロクマ号は、外海に船首を[向/む]けてとまっていた。 |
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[そんなこと/沈めでも]したら、マックはありがたく思わん |
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船体掃除湾と南[/側]のせまい入江を[わけている/区切る岩ばかりの]出州と、[湾口/北側]の絶壁の間を指さした。 |
between the cliff and the rocky spit that divided Scrubbers’ Cove from the narrower inlet to the south |
[/はるか]前方の外海に、 |
Far out at sea, |
たいして時間をむだにしなかった。 |
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この間、ぼくたちに出[会/あ]ったから、 |
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「[どんづまりに追いこま/にげ場のないところに追いつめら]れたのね。」 |
‘Cornered with no escape,’ |
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「やっこさんが[/、]きちがいみたいに |
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ついには死体を[、/]アホウドリが |
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暗い気分は一瞬にしてはれ[てしまっ/]た。 |
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「ぼく、ピクト・ハウスへのぼって[見/み]る。」 |
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「あんなやつ、つっぱしらしとけ[/よ]。」 |
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まあ、[行/い]きたかったら、見張りにいっても |
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「みんなで[行/い]きましょうよ。」 |
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「ぼくは[行/い]かない。」と、ロジャがいった。「ぼくはピクト人の家へ[行/い]く。 |
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(1) [詰/つ]め[開/びら]き航海――帆船が帆を調節して、できるだけ風上に[向/む]かって航海すること。 |
訳注 |